差別と批判の違い

〜日韓の「上下関係」を考える〜

Originally written: Jan. 13, 2006(mail版)■差別と批判〜週刊アカシックレコード060113■
Second update: Jan. 13, 2006(Web版)

■差別と批判〜週刊アカシックレコード060113■
韓国人に差別感情を持つ戦前生まれの日本人は、韓国の悪事を正当に批判できず、かえって日韓関係を悪化させる。
■差別と批判の違い〜日韓の「上下関係」を考える■

■差別と批判の違い〜日韓の「上下関係」を考える■
【前々々々々々々々回「『ポスト小泉』と首相の『側近中の側近』を読む」は → こちら
【前々々々々々々回「プロ野球の球団を増やす方法〜シリーズ『村上ファンドの阪神株』(3)」は → こちら
【前々々々々々回「日韓野球格差〜半永久的に変わらぬ構図」は → こちら
【前々々々々回「ブログの虚像〜格言『毎日書くのはただのバカ』は正しいか」は臨時増刊なのでWeb版はありませんが → こちらをご参照下さい。】
【前々々々回「組分け抽選の『操作』を読む〜06年W杯サッカー本大会(抽選工作)」は → こちらをご参照下さい。】
【前々々回「抽選方式の矛盾〜シリーズ『06年W杯サッカー本大会(抽選工作)』(2)」は → こちら
【前々回「FIFAが冷遇する国〜シリーズ『06年W杯サッカー本大会(抽選工作)』(3)」は → こちら
【前回「受賞御礼〜『メルマガ オブ ザ イヤー 2005』」は臨時増刊なのでWeb版はありません。】

第二次大戦で日本に勝った米軍は日本を占領すると、滞在に必要な、便利な土地や建物を接収した。東京都内では有楽町界隈は終戦後5年間「日本人立ち入り禁止」になったそうだ(06年1月2日放送のNHK『英語でしゃべらナイト』)。

当時の日本人には米国と戦って敗れた経験があり、しかもその敗戦体験は貧困と結び付いている。終戦直後の日本は戦争で国土が荒廃していたうえに食糧事情が悪く、日本人は、栄養状態がよく体格のよい進駐軍の将兵を見上げながら過ごしていた。

このみじめな劣等感を処理するため、当時の、つまり戦前生まれの日本人には「はけ口」が必要だった。格好の対象となったのは、進駐軍のなかで同僚の白人から差別されていた黒人兵、それに朝鮮半島出身の日本国民(のちの韓国・朝鮮人)だ。

戦前生まれの親類と話してみると、黒人のことは差別語で呼ぶし、韓国・朝鮮人についても「(商売上)ウソついたりごまかしたりするやつが多い」式の偏見に満ちた言葉がぽんぽん出て来る。

こういう会話に巻き込まれると、筆者は困惑する。筆者は戦後生まれで、それも物心付いたときすでに高度成長期だったから、貧困を知らない。生まれ育った街の近所に韓国人街などはなく、少年時代には韓国・朝鮮人をほとんど見たこともなかったから(商売上)韓国・朝鮮人から被害を受けた経験もなく「朝鮮人はウソをつく」式の偏見を抱く機会もなかった。

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【但し、子供の頃草野球をしていたとき、「ファウルで走るは田舎っぺ」「それを言うのは朝鮮人」という子供同士のやり取りを聞いたことがある。が、いまだにこの会話の意味はわからない。なぜなら「朝鮮人は特別な(配慮を要する)民族である」という認識が筆者にはないからである。】

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黒人に対する偏見も筆者にはない。進駐軍の黒人兵を見なかった世代にとって、黒人といえば、有名なスポーツ選手か芸能人であり、70年代に世界中で放送された、米国の黒人作家が自分の祖先の故郷をアフリカで発見するまでを描いた米TVドラマ『ルーツ』は十二分に面白かった。

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【故・梶山静六元法相の「悪貨(黒人)が良貨(白人)を駆逐する」発言(『参議院会議録情報 第120回国会 法務委員会 第1号』)に見る如く、戦前生まれの日本人の黒人への偏見は相当に強い。それは、彼らの白人への劣等感の強さの裏返しである。】

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つまり、筆者は黒人差別、韓国・朝鮮人差別をしたことがないし、そういうことを思ったこともないのだ。「たまたま差別をする機会がなかったから、しなかった」のではない。元々「米国(の白人)に負けた」という劣等感を抱いていないので、米国(の白人)に対する劣等感を処理するための「黒人」「朝鮮人」という存在を必要としていないのだ。これは、筆者と同世代か、それより若い世代の、大多数の日本人読者の皆様(一括して「戦後世代」とする)も同様だろう。

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●「韓国嫌い」とは何か●
テレビなどでご活躍の、さる高名なジャーナリスト某氏は小誌をよくお読みのようである。とくに、小誌が02年6月13日配信の記事(「●いまこそ『奥の手』を〜審判に『期待』」)で、翌日の、02年W杯サッカー本大会「韓国対ポルトガル」戦の「誤審」を予測し的中させて以来、筆者のことを「韓国が嫌いで韓国の悪口を書き、悪しきナショナリズムを煽っている」と思い込んでおられるようだ。

しかし、よくお考え頂きたい。
米国のイラク戦争を「侵略」とみなして批判する人々は世界中にいるが、その人たちはべつに米国が嫌いで批判しているのではない。単に1つの事実を「悪事」(国家犯罪)とみなして批判しているにすぎない。

筆者の韓国批判もこれと同じである。
韓国が02年W杯サッカー本大会で不正に勝ち続けてベスト4になったのは「悪事」であり「国家犯罪」なのだから、それを批判してどこが悪いのだ。悪事を悪事と呼ぶのは人種差別でも偏見でもない。

ところが、「戦世代」が牛耳る日本のマスコミは、この重大な国家犯罪について沈黙を守り「事後共犯」になってしまった。
その理由は明白だ。戦前世代の日本人の多くが、見かけ上の、公式の場での発言とは裏腹に、根強い「朝鮮人差別感情」を持っているからにほかなるまい。ハラの中にうしろめたい気持ち、つまり「原罪」を抱えているから、それへの贖罪意識に引きずられ、韓国の悪事を悪事と言えなくなっているのだ。

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●戦前世代への提言●
以下は筆者から、戦前世代の日本人、とくにそのなかでもっとも社会的影響力の大きい某氏への提言である:

あのー、有名なジャーナリストのあなた! そう、あなたです。
申し訳ありませんが、日本でいちばん悪質な「朝鮮人差別主義者」はあなたです。私じゃありません。
あなたはよく「(いまの若い連中と違って)自分は戦争の悲惨さを知っている(から、正しい外交政策を提言できる)」とおっしゃいますが、はたしてそうでしょうか。

あなたのように、ハラの底に人種差別意識をお持ちの方が、隣国との外交を理性的に考えることができるでしょうか。
贖罪意識に駆られて、日本が悪くない問題までぺこぺこあやまるように日本をミスリードする恐れはないのでしょうか。

何より、「いつか韓国(や中国)の国力が日本に追い付いたときに日韓(日中)関係がよくなる」などという、一度もその実現可能性が証明されたことのない絵空事を信じて報道し、かえって対外関係を悪化させてはいないでしょうか。

どうも、韓国(と中国)の人々には誤解があるようです。彼らは「日本は60年代の高度成長期に東京五輪を成功させ、先進国の仲間入りをした(から同じようにやれば、日本に追い付ける)」と思い込んでいるようですが、それは事実に反します。

日本は1905年に日露戦争に勝った時点で欧米から一目を置かれる「一等国」(先進国)になったのであり、戦前の国連(国際連盟)では当然のように常任理事国でした。高度成長期以前の1949年に湯川秀樹が、東京五輪翌年の65年に朝永振一郎がノーベル物理学賞を受賞し(技術開発だけでなく)基礎科学の研究・教育体制が高い水準にあることを示しました(物理学の才能は、彼らが日本で中等教育を受けていた時代にこそ大きく伸びるものだからです)。

さらにさかのぼって、江戸時代においても日本はすでに、産業革命以前の国としては異例の、世界最高レベルの、数十パーセントの識字率を誇り、本を読める者が大勢いたからこそ『東海道中膝栗毛』のような大衆文学のベストセラーが生まれ、十返舎一九らが19世紀の時点で早くも専業作家として「印税生活」をすることができたのです。他方、その頃の朝鮮半島に大衆文学があったでしょうか。高度な識字教育があったでしょうか。日本では200年前にすでに存在した専業作家が、韓国にはいまだにほとんどいない(日本より圧倒的に少ない)のはなぜでしょうか。

日本は数百年にわたる緻密な教育や文化の歴史の積み重ねの上にこんにちの国力を築いたのであり、べつに五輪をやったから急に先進国になったわけではないのです(68年に五輪を開催したメキシコがその後まったく先進国にならなかったことで明らかなように、五輪をやってもダメなものはダメ)。

数百年にわたる日韓間の「蓄積」の差はそう簡単に埋まるものではありません。すくなくとも、対戦相手のデータを緻密に分析して戦う日本(や米国)の野球を「顕微鏡野球」(05年11月20日再放送のJSPORTS 3『KONAMI CUPアジアシリーズ2005』におけるジャーナリスト木村公一の発言)と呼んで否定しているような、雑な国民性の国民が、日本人の緻密さを身に着けることは半永久的にありえないのです(日本で高校野球をやっている高校は4000以上ですが、韓国には約50しかなく、しかもその差はこの20年間まったく縮まっていません。小誌05年11月28日「日韓野球格差」。ちなみに昨年05年の日本シリーズとアジアシリーズを緻密な「顕微鏡野球」で制した千葉ロッテマリーンズの監督は米大リーグで優勝経験を持つボビー・バレンタイン)。

もちろん日韓関係を改善する方法はあります。
但し、それは、02年W杯サッカー本大会の「誤審」のような韓国の悪事を見逃してやることではありません。見逃したからといって、韓国人は感謝などしません。かえって図に乗って威張り散らすだけです。それは、あの試合(のあとの韓国国民の熱狂)を見ていた「戦後世代」の日本人をあきれさせる結果しかもたらしませんでした。

方法は簡単です。
韓国をたたけばいいのです。差別や偏見ではなく、正当で合理的な批判を、韓国の悪事と弱点に集中して浴びせ、心理的にたたきのめし、永遠に日本には追い付けないと自覚させてしまえばいいのです。

そして、韓国人が悲鳴をあげて「これ以上批判しないでくれ」と泣き付いて来たときに初めてほめてやればいいのです。そうすれば彼らは深く感謝し、初めて日韓関係は良好になり、安定します。

実は、これは米国が日本に対して使った手なのです。この作戦が奏効し「上下関係」が確定したから、戦後世代の日本人は「米国に勝とう」などという身のほど知らずな妄想はまったく抱かなくなり、多くの日本国民は米国からの評価や配慮に感謝し、日米関係は磐石になったのです。

すくなくとも戦後60年間、日本が何度韓国に謝罪しても日韓関係が安定したことがほとんどないのは事実であり、それは韓国側の謝罪要求がそもそも「侵略された被害への恨み」に起因するものではなく、分不相応に(形式上)日本と対等な独立国となった(のに、いつまで経っても日本の国力に追い付けない)ことから生じる不安と劣等感をその都度処理するための手段にすぎないから、にほかなりますまい。

韓国側の根強い対日劣等感を解決する方法は1つしかありません。それは、日本が韓国よりであることをはっきり示し、韓国を「日本に追い付くべきだし追い付けるはずだ」という妄想から解放してやることです。ヘタに謝罪などして日本が何度も「手」に出るものだから、戦後60年間、韓国側は何度も「上下関係」の不安に陥り、かえって劣等感を増幅されて来たのです。その責任はすべて、あなた様のような「戦前世代」の日本人にあります。

もしも、高名なジャーナリストであるあなた様のような「戦前世代」の方々が「韓国を批判するなんて、こわくてとてもできない」とおっしゃるのなら、それこそ差別感情がある証拠であり、いますぐ報道の第一線からお引き取り下さい。差別主義者を社会の第一線に置くのは、日本にとって有害無益です。さっさと引退して、戦後世代の、差別と無縁な人材と交代されることを強く希望します。

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●マルコムX●
以上が、筆者から「戦前世代」への提言の主眼だが、とくに「日本が悪くない問題までぺこぺこ…」について付け加えておきたい。

日本は朝鮮半島を植民地支配した際、現地で公用語として日本語の教育を実施し、また半島住民に日本風の名前を名乗らせる「創氏改名」政策を施行した。これを韓国では日本の侵略と呼び、「日本によって民族の言語も名前も奪われた」と非難し、戦後、繰り返し日本に「謝罪」を要求して来たし、また日本政府も(不本意ながら?)これに応じて来た。

が、これは謝罪するようなことなのだろうか。
たとえば、19世紀までにアフリカから奴隷として米国に、文字通り「強制連行」されて来た黒人たちの子孫は、現在祖先の故郷の言語をまったく話せず、ほとんど英語しか話せないし、自分たちの祖先の本来の姓(氏)を知らない。マーティン・ルーサー・キング牧師の姓キングも、彼の祖先を奴隷として所有していた白人の姓だ。

だから、50〜60年代の黒人解放運動の指導者マルコムXはイスラム教に改宗した際「(祖先の)ほんとうの名前がわかるまでXで通す」と決め、マルコムXと名乗ったのだ。「名前を奪う」というのは、こういうことを言うのだ。

韓国にマルコムXがいるだろうか。
現在の韓国国民は全員、韓国語を話しているし、祖先の姓を名乗っている。ノ・ムヒョンはいるが「X・ムヒョン」はいない。ということは、言語も名前も奪われていないのだ。いったい日本は言語や名前の問題について謝罪する必要があるのだろうか。

そもそも宗主国が植民地で宗主国の言語を教えるのは義務であって、べつに「嫌がらせ」ではない。
かつて英国の植民地だった、アパルトヘイト(人種隔離体制)時代の南アフリカ共和国では1976年、白人の政府が(オランダ系白人が多数住む地域で)黒人への言語教育を英語中心から、オランダ語(とドイツ語とフランス語)をベースにした特殊言語(アフリカーンス語)を主体にしたもの切り替えると発表した途端に、黒人たちが「なぜ英語を押し付けてくれないのか」と暴動を起こし(ソウェト暴動)1週間で100人以上の死者まで出したことがあるくらいで、支配者(白人)が支配者の言語(英語)を被支配者(黒人)に正しく教えなかったら、それこそが人種差別であり、嫌がらせなのだ。

まして日本が韓国を植民地化した1910年の時点では「一等国」が植民地を持つことは国際法上、完全に合法であり、宗主国には宗主国の言語を植民地住民に教える義務があったのだ。その義務を怠れば(植民地出身者が地元や宗主国で就職する際不利になるので)それこそ1976年の南アフリカのような大暴動が起きかねないから、宗主国にはそんな怠慢は許されていなかった。

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【南アフリカの黒人社会には「侵略者」(白人)に支配されるまで学校教育制度はなく、言語は家庭内で教えられるものだった。「学校」は侵略者が初めて創ったものであるから、そこで侵略者の公用語を教えるのは当然であり、それは家庭内の言語教育をまったく妨害せず、かつ、黒人たちに民族的屈辱を与えるものでもなかった。
日本は朝鮮半島を侵略(植民地化)したあと、べつに「既存の学校制度を乗っ取った」のではなく、教育制度をゼロから創ったのであって、それは既存の言語教育(ほとんど家庭内のみ)をまったく妨害していない点で、南アフリカの英語教育と変わりがない。
もし韓国人が「われわれは南アフリカの黒人と違って、日本語の学校教育に屈辱を感じたのだ」と言い張るのなら、それは韓国人による黒人差別発言であり、到底容認されない。】

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そもそも、旧英国植民地出身者の子孫が英国に大勢住んでいることで明らかなように、元々宗主国より国力が弱い(だからこそ植民地になる)植民地側の住民は、宗主国側で「来るな」と言っても勝手に宗主国に来るのだ(本来、宗主国側には「強制連行」などをする必要はない。小誌03年3月27日「在米イスラム人口の急増」)。そしてしばしば、植民地住民は宗主国で覚えてもらいやすいように、宗主国風の名前を(自発的に)名乗るのだ(たとえば、「李小龍」が「ブルース・リー」と名乗るような類の「創氏改名」は単に通称を1つ持つだけのことであり、屈辱でもなんでもない)。

もしマルコムXがいま生きていて、韓国人から「かつて日本に名前も言語も奪われた(が、いまは取り戻した)」と聞いたら、きっと次のように一喝するだろう:

「甘ったれたことを言うな!」

そんなのは、名前を奪われたうちには、はいらない。
名前や言語を奪う、というのは、韓国人が考えるような生やさしいものではないのだ。
全人類が尊敬する黒人たちの偉大な歴史を知っていれば、単なる劣等感処理の手段にすぎない韓国人の謝罪要求などこわくもなんともない、と戦前世代の日本人にもわかるはずだ。

もっとも、この世代は黒人に敬意を抱くのが難しいので、その点が問題だが。

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【次回は、韓国の新たな国家犯罪「ES細胞論文捏造事件」の予定。】

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【この問題については次回以降も随時(しばしばメルマガ版の「トップ下」のコラムでも)扱う予定です(トップ下のコラムはWeb版には掲載しません)。
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 (敬称略)

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