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安倍敗北自民延命

〜シリーズ「2007年夏参院選」(3)〜

Originally written: July 20, 2007(mail版)■安倍敗北自民延命〜週刊アカシックレコード070720■
Second update: July 20, 2007(Web版)

■安倍敗北自民延命〜週刊アカシックレコード070720■
2007年夏の参院選で、自民・公明の連立与党は非改選議席とあわせて過半数を割り、いったん参議院運営の主導権を失うと予測されるが、安倍晋三首相を退陣させれば比較的容易に主導権を奪回する道が開ける。
■安倍敗北自民延命〜週刊アカシックレコード070720■

■安倍敗北自民延命〜シリーズ「2007年夏参院選」(3)■
【小誌2007年2月22日「北朝鮮の北〜シリーズ『中朝開戦』(1)」は → こちら
【小誌2007年3月1日「脱北者のウソ〜シリーズ『中朝開戦』(2)」は → こちら
【小誌2007年3月8日「戦時統制権の謎〜シリーズ『中朝開戦』(3)」は → こちら
【小誌2007年3月18日「すでに死亡〜日本人拉致被害者情報の隠蔽」は → こちら
【小誌2007年4月14日「国連事務総長の謎〜シリーズ『中朝開戦』(4)」は → こちら
【小誌2007年4月26日「タブーに挑戦」は臨時増刊なのでWeb版はありませんが → こちら
【小誌2007年5月14日「罠に落ちた中国〜シリーズ『中朝開戦』(5)」は → こちら
【小誌2007年5月21日「中国の『油断』〜シリーズ『中朝開戦』(6)」は → こちら
【小誌2007年6月7日「米民主党『慰安婦決議案』の謎〜安倍晋三 vs. 米民主党〜シリーズ『中朝開戦』(7)」は → こちら
【小誌2007年6月14日「朝鮮総連本部の謎〜安倍晋三 vs. 福田康夫 vs. 中国〜シリーズ『中朝開戦』(8)」は → こちら
【前々々回「勝っても地獄?〜2007年参院選の与党」は → こちら
【前々回「消えていない年金〜シリーズ『2007年参院選』(2)」は → こちら
【前回「『ニセ遺骨』鑑定はニセ?〜シリーズ『日本人拉致被害者情報の隠蔽』(2)」は → こちら

2007年7月現在、夏の参議院通常選挙の結果は与党自民党の惨敗であるという予測記事が週刊誌上や新聞紙上に飛び交っているが(『週刊新潮』2007年7月5日号「『5勝24敗!』1人区惨敗 『自民党調査』の衝撃」)、筆者はそれらをまったく信用していない。全国的国政選挙の結果は、10億円前後の費用をかけて綿密に世論調査を行えば98%以上の確率で事前に正確にわかるが、出版社系週刊誌には自らそこまでの調査をする資金力はないので、その予測の信憑性には疑問符が付く。他方、5大全国紙には10億円の世論調査を行う資金力はあるが、世論調査結果をそのまま正確に報道してしまうと、それが有権者の投票行動に影響を与えて投票率を下げる恐れがあり、新聞社も新聞社系週刊誌も、新聞社と提携して合同世論調査を行うTV局も、それを避けるために(たとえば2005年衆議院総選挙の予測記事のように)故意に不正確な調査結果を報道する場合があるので、これも信用できないのだ(小誌2007年6月21日「勝っても地獄?〜2007年参院選の与党」 )。

小誌既報のとおり、投票日の1〜数週間前には、自民党や5大全国紙はそれぞれ独自の世論調査によって国政選挙の結果をほぼ正確に知っている。筆者は、2007年4月に自民党が2007年夏の参院選向けに行った独自の世論調査結果を、自民党内の事情に詳しい「Z」という人物に見せてもらったが、その後、2007年6〜7月に自民党が行った最新の世論調査結果は見ていない(小誌前掲記事、同2005年9月19日「データベース選挙〜シリーズ『9.11総選挙』(4)」)。

が、結果はわかった。自民党と公明党をあわせた連立与党の参議院の議席が、非改選議席とあわせて過半数の122議席を割ることは2007年7月8日の時点でほぼ確定しているのだ。

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●過半数割れ確定か●
なぜわかるのかというと、2007年夏の参院選公示の4日前、民主党の小沢一郎代表が「(現在の)野党で過半数を取れなければ、政界を引退する」と言明したからだ(時事通信2007年7月8日付「過半数取れなければ、政界引退も 衆院選不出馬に言及 - 小沢民主代表」)。

先例がある。2005年の「郵政解散・総選挙」の際、当時の小泉純一郎首相が衆議院総選挙公示の前日、「(連立与党の)自民、公明両党の獲得議席が過半数の241を1議席でも下回れば退陣する」と宣言している(スポニチWeb版2005年8月30日「“郵政解散”衆院選」)。

もちろん当時の小泉は、公示の前日どころか、解散のはるか以前から「いま解散すれば、民主党に圧勝できる」ことを党独自の世論調査結果から確信していたからこそ、解散に踏み切ったのだ(小誌2006年9月8日「計画的解散〜シリーズ『9.11総選挙』(3)」)。

自民党に次ぐ大政党である民主党は、議員数などに比例して国庫から受け取る(2007年度の)政党助成金が約105億円(自民党は約171億円、公明党は約29億円。総務省Web 2007年4月2日「政党交付金の交付決定」)もあることからもわかるように、かなり潤沢な政治資金を持っている。したがって、民主党も選挙前には10億円規模の党独自の世論調査を行うし、その重要性や正確性は、元自民党幹事長の小沢は当然熟知している。

その小沢が「野党が過半数を取れなければ、政界を引退する」と言ったのだから、(新潟県中越沖地震が起きる7月16日以前には)過半数どころかもっと取る自信があったと見て間違いない。

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●選挙後のシナリオ●
そこで、選挙後のシナリオが見えて来る。『読売ウイークリー』は(公明党が改選議席の13を維持するという前提で)自民党の獲得議席数別に3通りのシナリオを描いている(同誌2007年7月8日号 p.p 85-88「議席別『政界近未来図』」):

#1:自民51以上(自公で過半数確保、「安倍内閣」長期政権視野に! 小沢辞任、政界引退も)
#2:自民50〜45(与党敗北するも、国民新党との連立で過半数 微妙な公明、小泉新党旗揚げ!?)
#3:自民44以下(与党敗北、大幅過半数割れ 噴き出す安倍退陣論、年末にも解散・総選挙)

このうち「#1」は無視していいだろう。
「#2」は、過半数を割った与党が、新党日本を離党した荒井広幸参議院議員や、民主党と無所属議員の参議院における統一会派「民主党・新緑風会」に会派離脱届を出した松下新平参議院議員)、あるいは小沢に批判的とされる渡辺秀央・民主党参議院議員(元郵政相)、さらには、参議院で4議席(改選議席は2)を持つ国民新党を取り込んで、安倍晋三首相と連立与党が過半数を維持し政権の延命をはかるというものだ(同誌前掲記事、読売新聞Web版2007年7月6日「選挙後視野に、新党日本・民主党で動き複雑」、産経新聞Web版2007年5月14日「民主・渡辺氏が造反 国民投票法の参院本会議採決」)。
同誌は公明党だけでなく国民新党も改選議席を維持するという前提でこのシナリオを描いており、自民党内には45議席取れば勝ったも同然とみなす意見もあるという(同誌前掲記事。但し同記事は松下の自民党入りに言及していない)。

ただ、国民新党は2005年の国会で小泉純一郎政権の郵政民営化法案に反対した「郵政造反組」が(造反したまま)自民党を離党して結成した政党なので、連立与党に参加するには「郵政民営化見直し法案」を出して「小泉政治を根底からひっくり返す」ことを条件にせざるをえない(同誌2007年5月27日号「参院選 全予測 + 亀井静香『大連立』構想」)。他方、国民新党に連立政権参加を打診する側の自民党(安倍晋三総裁)は2006年12月、2005年の衆議院総選挙を「郵政造反組」として戦った野田聖子元郵政相らの議員を復党させるに際して、「郵政民営化を含む政権公約の遵守」を誓う誓約書を提出させて「踏絵」を踏ませているので、小泉政権以来の郵政民営化路線を堅持するのがスジだ(スポニチアネックスWeb版2006年11月28日「金と選挙 - ご都合主義で復党強行」)。

とはいえ、自民党は与党であり続けるためならなんでもする無節操な政党だ。1994年には、与党に返り咲きたい一心で、結党以来ずっと安保・防衛政策で「水と油」のように対立して来た社会党と連立して村山富市社会党党首を首班とする政権を作ったことすらあるので、国民新党に歩み寄って「郵政民営化路線の一部見直し」に応じる可能性は十分にある。

しかし、そうなると、小泉前首相や彼の「郵政解散・総選挙」を指揮した武部勤前自民党幹事長、および、彼のもとで「郵政民営化実現」を訴えて初当選した「小泉チルドレン」の一回生議員たちは、当然これに異を唱えざるをえない。小泉は自分が政治生命をかけて成立させた郵政民営化法案を守るためには、武部やチルドレン数十人を引き連れて自民党を離党し「小泉新党」を結党するほかないだろう(同誌2007年7月1日号 p.28 「選挙後は『自民 + 国民新党』vs『小泉新党』という可能性」)。

ただ、小泉新党は連立与党には留まって、自民党を間にはさんで国民新党とにらみ合い、国民新党より圧倒的に多い数の力を背景に自民党を牽制し、郵政民営化路線の堅持を迫るだろう(同誌2007年7月8日号 p.p 85-88「議席別『政界近未来図』」)。

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【同誌は小泉新党が民主党でなく自民党と組まざるをえない理由に言及していないが、それは「選挙区事情」だと推測される。小泉チルドレンは2005年の衆議院総選挙を自民党公認候補として戦っているので、岐阜1区の佐藤ゆかり議員など一部の例外を除けば、選挙区(定数1名の小選挙区)が与党の自民党や公明党の候補者と重なることはない。ところが、民主党の候補者とは敵として戦っているので当然、大半の選挙区(地盤)が重なってしまう。
たとえば、東京都武蔵野市を含む東京18区選出の衆議院議員は菅直人・民主党代表代行だが、2005年の総選挙では土屋正忠・元武蔵野市長が自民党から立候補して菅に敗れ、比例代表で復活当選している。小泉新党が民主党と組んで政権を目指すなら、菅か土屋のどちらかが選挙区を替わる必要があるが、党首経験もある超大物の菅が「国替え」に応じるはずはなく、さりとて元武蔵野市長の土屋は武蔵野市を含まない選挙区では当選の可能性がないので、こちらも譲るわけにはいかない。
このような選挙区調整の難題が全国的に発生するので、小泉新党が民主党と組むのは難しいのだ。】

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実は、『読売ウイークリー』は「#2」だけでなく、「#3」の場合でも、安倍政権はしばらく続くと見ている。理由は、各派閥の力が小泉政権以前に比べて弱くなっているため、総裁を引きずり下ろす力のある新リーダーが党内にいないから、だという。「(新リーダーの)有資格者は(2006年の自民党総裁選で次点になった前財務相の)谷垣(禎一)さんだが、いかんせん小派閥の将でしかない」(自民党大臣経験者)ので、参議院で過半数割れしたまま自公連立政権が続く、というのだ(同誌前掲記事)。

その場合、参議院議長のポストは院内第一党となった民主党が取るのが慣例なので、参議院運営の主導権は民主党を中心とする野党が握る(但し、自民党と公明党が院内統一会派を組んで議長職を取ることも考えられるが、社民党も共産党もその場合には民主党の議長候補に投票する可能性があるので、やはり与党は苦しい。時事通信2007年7月11日付「参院議長、民主候補に投票も 社民・福島党首 - 7党首討論 」)。
衆議院で連立与党の賛成多数で可決された法案は、たとえ参議院で否決されても、そのあと衆議院で2/3以上の多数で再可決すれば成立するし、2007年現在連立与党は衆議院で定数480の2/3を上回る336議席(うち自民党は305議席。党籍を離脱した河野洋平議長を含まない)を持っているので一見すると問題ないように見えるが、参議院側が法案を否決せずに「審議未了→廃案」で生殺しにすれば、衆議院で再可決できない。つまり、重要法案が1つも通らないという異常事態になり、「半年もたたないうちに安倍首相は退陣に追い込まれ、麻生(太郎)外相にバトンタッチして、年末か年明けに解散総選挙になだれ込む可能性がある」(同誌前掲記事)。

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●福田カード●
しかし、『読売ウイークリー』の予測は一部、事実誤認に基づいている。
2006年総裁選の形式上の次点は谷垣だが、事実上の次点は福田康夫元官房長官である。福田は2006年7月に総裁選不出馬を表明したが、不出馬表明直前のNHKの世論調査では「次期首相候補」として十数%の支持率を得ており、30%前後の安倍にはおよばないまでも、谷垣、麻生ら、当時2%にも満たなかった「泡沫候補」を大きく引き離していた。谷垣は総裁選の本番では次点になったが、福田不出馬表明後の2006年7月の世論調査でも支持率が福田を下回るというていたらくだった(2006年5月のNHKの世論調査では、首相候補としての支持率は安倍約30%、福田約16%、他は2%以下。同7月の「福田不出馬」後は、安倍39.9%、福田4.3%、麻生3.8%、谷垣3.0%。2006年8月26日放送のNHK-BS1『土曜解説』)。

同誌は「福田は安倍の人気の高さに恐れをなして不出馬を決めた」という風評を鵜呑みにしているようだが、それは取材不足だ。小誌既報のとおり、福田の不出馬は「1回パスしただけ」というのが真相だ(小誌2007年6月14日「安倍晋三 vs. 福田康夫 vs. 中国〜シリーズ『中朝開戦』(8)」)。筆者が福田の側近から直接聞いた情報をさらに付け加えると、側近は「福田への世論調査の支持率がもっとも高くなった時機を見計らって不出馬を表明させた」のだ。だからこそ、谷垣の支持率は「福田不出馬」後も福田以下の低率に留まり、谷垣は事実上「死に駒」になったのだ。

参院選敗北後の自民党にとって、国民新党からの連立政権参加の打診は「渡りに船」だが、小泉新党の誕生は悪夢だ。1つ間違うと、小泉新党は連立政権を離脱して民主党と組むかもしれないからだ。たしかに小泉新党と民主党の選挙区調整は容易ではないが、1994年に成立した自民党と社会党の村山連立政権は、選挙区調整をあとまわしにして(村山首相と地盤の重なる自民党議員が「次の衆議院の小選挙区選挙で首相に勝つ」と豪語するような状況を放置したまま)発足しているので、国民新党と小泉新党がそれぞれ郵政民営化への「反対」「賛成」で譲らない事態に陥れば、小泉新党は民主党と組んで解散・総選挙に臨むかもしれない。

「そんなことに怯えて生きるぐらいなら、安倍を引きずり下ろして、国民新党も小泉も納得しそうな人物を総理総裁に立てたほうがましだ」と自民党国会議員ならだれでも考えるはずだ。
幸いに福田がいる。福田が前回の総裁選をパスしたのは、小誌既報のとおり旧森派(現町村派。清和政策研究会)を割らないためだ。福田は安倍と同じ旧森派に属しており、総裁選で安倍と争えば、せっかく2005年総選挙で最大派閥になった旧森派が分裂してしまうので、福田はそれを懸念したのだ(小誌前掲記事)。その「派閥思い」の福田が、総裁選の「敗北歴」もないまま旧森派の「カード」として残っているのだから、同派の議員が「安倍を下ろして福田に替えれば、最大派閥も自民党も安泰」と考えるのは至極当然だ。
福田は郵政民営化法案成立時には小泉政権の閣僚ではなく、自民党の要職にも就いておらず、小泉政権から距離を置いていたし、安倍政権成立後も現在までずっとそのままだから、「郵政民営化路線を一部軌道修正する」と言えば説得力がある。他方、小泉は2000年、森喜朗内閣で中川秀直官房長官(現自民党幹事長)が女性スキャンダルで辞任した際、後任に福田を推して就任させ、その後、自分自身が首相になったあとも引き続き官房長官の職に留め置いた。つまり、福田は「国民新党と小泉の両方の信頼を得られそうな、ほとんど唯一の総理総裁候補」なのだ。

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●中朝戦争シフト●
ところで、安倍内閣発足以来、閣僚の交代が目立っている。佐田玄一郎・前行革担当相が事務所費の不透明な支出を追及されて2006年12月に辞任したのに続き、松岡利勝前農水相も同じような疑惑を追求されて2007年5月に自殺し、2007年7月には久間章生(きゅうま・ふみお)防衛相が「(広島と長崎への)原爆投下はしょうがない」という失言をして辞任している(中国新聞Web版2007年6月30日「『原爆投下しょうがない』 久間氏発言、参院選影響も」)。このほかに、まだ辞任には至っていないが、自殺した松岡の後任の、赤城徳彦農水相も佐田とよく似た事務所費の疑惑を追及され、野党から辞任要求を突き付けられている。

事務所費問題で自殺した人物の後任に、同種の問題を抱える赤城を安倍首相官邸が起用したことについて『週刊新潮』は「赤城農相『身体検査』に失敗した『マヌケな少年官邸団』」と酷評した(2007年7月19日号 p.26 「赤城農相『身体検査』に失敗した『マヌケな少年官邸団』」)。「身体検査」とは、閣僚候補が入閣後に内閣をゆるがすスキャンダルを暴露されることがないように、首相秘書官などが組閣前に閣僚候補の身辺を調べることを指す。

小泉内閣の首相秘書官だった飯島勲は「私独自の情報網などを使って(閣僚候補の身体検査は)徹底的にやる」などと自ら語っているが(2006年10月8日放送のフジテレビ『“独占取材”私だけが知っている小泉純一郎』)、それはウソで、実は内閣情報調査室(内調)からの極秘情報に頼っていたのだ(『週刊新潮』前掲記事)。

が、小誌既報のとおり、日本の情報機関のうち、検察庁と内調は「中朝戦争賛成派」であり、安倍のような「中朝戦争反対派」には冷淡だ(安倍が頼りにできる情報機関は警察ぐらいしかない。小誌2007年6月14日「●安倍 vs. 内調」)。内調は小泉政権時代には「身体検査」に必要な情報を飯島に与えていたが、安倍政権成立後、首相秘書官の井上義行には必要な情報を与えていない(『週刊新潮』前掲記事)。

【「身体検査」には、閣僚候補の政治家本人のみならず親族のスキャンダル探しや交通違反記録の照会など、プライバシーの侵害にもなりかねない諜報活動さえ必要だが、一政治家の秘書ごときにそんな情報収集が可能なはずはない。
内調が飯島に必要な情報を与えたのは、小泉が2002年に、中朝戦争賛成派の外務官僚や福田官房長官(当時)の助言に従って、中朝戦争実現につながる「日朝国交回復」に動いたからにほかならない。内調は「中朝戦争実現内閣」を守りたい一心で首相秘書官に「身体検査情報」を提供したのであり、べつに飯島の人格が偉大だったから彼のもとに情報が集まったわけではない(なぜ日朝国交回復が中朝戦争につながるのか、については拙著、SF『天使の軍隊』のソン・ウォンホやワグナー大佐のセリフを参照)。】

【『天使の軍隊』発売以降の小誌の記事はすべて、読者の皆様に『天使』をお読み頂いているという前提で執筆されている(が、『天使』は中朝戦争をメインテーマとせず、あくまで背景として描いた小説であり、小説と小誌は基本的には関係がない)。】

内調はその情報提供の仕方によって、一国の首相(の人事管理能力)を有能に見せかけることも無能に見せかけることもできる。最高裁判所が「憲法の番人」なら、内調は日本の地政学的安全保障をつかさどる「地政学の番人」であり、その意向にさからう者は……たとえば、日本に地政学上絶大な国益をもたらす中朝戦争の実現に反対する政治家は……どんなに人気のある首相であろうと、「無能」に見せかける演出をして人気を落とし、葬り去る。それが内調の使命なのだ。

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●微調整●
マスコミや野党や国民の怒りとはあまり関係なく、ほとんど内調のみの努力によって、安倍内閣の支持率が低下した結果、冒頭に紹介したように、2007年夏の参院選後に与党が過半数割れすることはほぼ確実になった。そのことは、小沢だけでなく、当然内調も、中朝戦争について内調と志を同じくする検察庁や「福田陣営」や米民主党も、参院選における各党の獲得議席数まで含めて「98%以上の確率で」知っている(小誌2007年6月7日「安倍晋三 vs. 米民主党〜シリーズ『中朝開戦』(7)」)。

では、いったい、彼ら「中朝戦争賛成派」は、自民党の獲得議席が何議席であることが望ましいと思っているのか。
『読売ウイークリー』のシナリオ「#2」の数字(自民党が45〜50議席獲得)なら、国民新党を抱き込むだけで安倍を退陣に追い込むことができるので、万一「福田政権」が実現しなくても、安倍以外の「中朝戦争賛成派」(あるいは中立派)を首相に立てることで、かなり容易に「中朝戦争シフト」を実現することができる。

他方、シナリオ「#3」の数字(自民党44議席以下)では、安倍が退陣して福田や麻生と交代し、国民新党が改選前の議席数を維持して連立与党に加わっても、参議院では与党の過半数割れは(民主党系参議院議員が3人以上寝返らない限り、2010年夏の次期通常選挙まで)今後3年間は解消しないと考えられるため、衆議院の解散・総選挙や自民党と民主党の「大連立」を経て「政界大再編」をする必要が生じかねない。

中朝戦争は、日米に対する「中国の脅威」を半永久的に解消する千載一遇の好機であり、その開戦にふさわしい時機はどんなに広く見積もっても「2009年から2012年4月16日まで」しかない(小誌2007年3月8日「戦時統制権の謎〜シリーズ『中朝開戦』(3)」)。何十年に1回あるかないかの重大な時節を前にして、いつ落ち着くかわからない政界再編劇などやられては、内調も米民主党もたまったものではない。とくに、福田は「自民党の」最大派閥である旧森派を分裂させることなく自分の支持基盤にするために2006年の総裁選をパスしたのに、大再編の過程で、旧森派どころか自民党そのものが分裂してしまっては元も子もない。

とすると、中朝戦争賛成派は、自民党が参院選で負けすぎないように、より厳密に言えば、非改選を含めた「自民党と公明党と国民新党と新党日本離党者(荒井広幸)と民主党会派離脱者(渡辺秀央と松下新平?)」の合計議席数が過半数を下回らないように、したがって民主党が勝ちすぎないように微調整する必要がある(もちろん、あの内調のことだから、「#3」になったらなったで、自らの諜報能力を駆使して「邪魔者を消して」中朝戦争実現に向けて「再チャレンジ」するだろうが)。

その微調整と思われる動きが、参院選の各党の獲得議席数がほぼ確定した頃にあった。2007年6月末、安倍内閣の閣僚、久間防衛相の「原爆しょうがない」発言だ。
情報源と詳しい分析は諸般の事情で省略するが、久間は中朝戦争賛成派である。

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【というか、よほどの阿呆でない限り、地政学を理解できる日本の政治家や(とくに久間の部下の防衛省の)高級官僚なら「開戦しても、国防上、日本になんの実害もない中朝戦争」に反対するはずがない(地政学的には、安倍は「よほどの阿呆」と分類できる)。「なんの実害もない」のがウソだと思われる方は拙著、SF『天使の軍隊』(の一部)や小誌関連記事「シリーズ『中朝開戦』」(の全部)をご一読のうえ反論されるように。インターネット上で小誌の中朝戦争関連記事を無断引用して反論したり批判したりしている連中の大半は、これらを読んだことのない横着者か「よほどの阿呆」のどちらかである。】

【『天使の軍隊』発売以降の小誌の記事はすべて、読者の皆様に『天使』をお読み頂いているという前提で執筆されている(が、『天使』は中朝戦争をメインテーマとせず、あくまで背景として描いた小説であり、小説と小誌は基本的には関係がない)。】

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久間は衆議院長崎2区選出の衆議院議員で、2007年夏の参院選では、自分の息のかかった県議会議員や市議会議員や政治団体などを動員して、参議院長崎選挙区(衆議院の小選挙区と同じ定数1名の「1人区」)の自民党候補、小嶺忠敏を応援する義務がある。小嶺は全国高校選手権で国見高校サッカー部を何度も優勝に導いた名将だが、選挙区では民主党候補と互角の戦いを強いられており(『週刊朝日』2007年6月22日号 p.p 18-27 「最新分析 参議院全選挙区当落予測」)、久間やその「子分」の応援は当然必要だ。

そんな中で飛び出した久間の「しょうがない発言」は、被爆地長崎の県民感情を逆撫でしたので、久間は(一時的に)県民に嫌われている。したがって、久間は小嶺の応援演説をすることはなく、その「子分」も小嶺の応援には動かない。したがって、小嶺が落選し、民主党がここで1議席を確保する可能性が高まった。

【同じような怒りは当然、もう1つの被爆地、広島でも沸き起こるが、広島選挙区の選挙にはまったく影響がない。なぜなら同選挙区は2人区であり、有力候補は自民党の溝手顕正防災相と民主党の佐藤公治・前衆議院議員の2人しかいないので、両党で議席を分け合うことがいまから決まっているからだ。】

もちろん「しょうがない発言」は比例代表における自民党の得票にも影響するが、それで自民党の獲得議席数が増減することはないだろう。なぜなら、野党有力候補との関係如何ではわずか数万票の変動で1議席が減る選挙区選挙(1人区)とは異なり、比例代表選挙で1議席減らすには110万票も減らす必要があるからだ(『週刊朝日』前掲記事)。

だから、2001年夏の参院選の比例代表に自民党から立候補して約46万票を得て当選したプロレスラー、大仁田厚参議院議員が引退したことによって(毎日新聞Web版2007年6月24日「参院選:大仁田氏“失望引退” 政党の集票手法に一石」)自民党の比例代表の得票が46万減っても、それだけでは「1議席減」にはならない(しかし、約0.4議席減らすことにはつながるので、大仁田の政界引退も、ほかのスキャンダルとあわせて自民党の議席を1つ減らすための「微調整」工作の一環だった可能性は捨て切れない)。

中朝戦争賛成派の久間がわずか1議席減らすために「自爆テロ」をしたところを見ると、彼が長崎県民の審判を受ける衆議院の解散・総選挙はかなり遠いのだろう。つまりシナリオの「#3」も可能性が低く、もっともありそうなのは「#2」で、参議院の連立与党の議席が(荒井広幸と渡辺秀央と松下新平と)国民新党を足しさえすればギリギリ過半数を超える範囲内まで減らすための微調整の一環だったと考えると辻褄が合う。つまり、長崎選挙区で自民党が勝つと、荒井と渡辺と松下を除いて自民党が46〜50、与党の獲得議席合計は59〜61ぐらいと予測されたので、国民新党(非改選を含めて4議席前後)の「出番」を確実に作るため、念のために長崎の1議席を自民党から奪ったと考えられるのだ。

このほか、高知選挙区(1人区)で民主党候補と接戦を演じている田村公平・自民党参議院議員が「自民党の地震対策を信用するな」「自民党に入れるな」という意味に受け取れる演説をしたことも「微調整」の一環と考えられる。この演説は、新潟県中越沖地震の発生を受けて安倍が選挙遊説を打ち切ってすみやかに被災地入りした直後に行われただけに、災害に取り組む姿勢を見せてイメージアップをはかりたい安倍の足を引っ張り、自らも落選もして1議席減らそうとしたように見える(朝日新聞Web版2007年7月16日「『美しい国』馬鹿にされた気がする 自民候補が首相批判」)。

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前出の「Z」(『天使の軍隊』など拙著を愛読している永田町・霞が関の事情通)も、「中朝戦争賛成派は、与党に過半数を割らせたら、あとは民主党の議席を削ってでも国民新党を増やしたほうが『近道』だ」と述べている。いまにして思えばこの言葉は
「渡辺秀央や松下新平を国民新党に入党させる」
「参議院大分選挙区における民主党と社民党、自民党と公明党の選挙協力をそれぞれぶち壊して、そこに国民新党の後藤博子参議院議員を立てて当選させる」(『週刊朝日』前掲記事)
という意味に解釈できる。】

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筆者は日本が真の議会制民主主義国家になるためには、2大政党による政権交代があるべきだと思っている。たとえそれが国民、国政のための政権交代ではなく「政権交代のための政権交代」であったとしても、与党と官僚機構(と業界)の癒着(トライアングル)を断ち切るという意義はあるので、いつかは民主党は政権を奪って自民党を野党に追い落とすべきだと思っている。

が、遺憾ながら当分の間(中朝戦争が始まるまで?)自民党政権は続きそうだ。
小沢は2007年夏の参院選でいったん与党を過半数割れに追い込むにもかかわらず、内調に邪魔されて政権を取らせてもらえない、という「勝ったのか負けたのかわからない奇妙な状態」に置かれそうだ。

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●慰安婦決議案は廃案か●
ところで、小誌既報のとおり、米民主党は中朝戦争反対派の安倍に圧力をかける目的で、旧日本軍相手に商売をした元職業売春婦を形式上「慰安」するための日本政府非難決議案(いわゆる「従軍慰安婦決議案」)を下院外交委員会に提出し(小誌2007年6月7日「安倍晋三 vs. 米民主党〜シリーズ『中朝開戦』(7)」) 、2007年6月、それを委員会で可決した(産経新聞Web版2007年6月27日「慰安婦決議案を可決 米下院外交委 首相の公式謝罪促す」)。

委員会を通過したこの決議案は7月中にも下院本会議で採決される見通しだが、実は本会議は委員会を通過したすべての決議案を採決するわけではない。もちろん予算案のような重要法案を採決しないことは許されないが、歳出を伴わない単なる決議案などは採決せずに廃案にしても国政運営上支障がないので、廃案もありうる。
たとえば、「慰安婦決議案」と同じように頻繁に下院(外交委員会)に提出される中国の人権状況を(五輪開催国にふさわしくないと)非難する決議案は、1993年には米民主党が多数を占めていた本会議で可決され、その年の国際オリンピック委員会(IOC)総会の2000年夏季五輪開催地を選ぶ投票で中国の北京を落選に追い込んだが(産経新聞1993年7月27日付夕刊1面「オリンピック北京開催を米下院が『反対』決議」)、2001年に下院外交委員会を圧倒的多数の賛成(賛成27反対8、つまり27/35)で通過した同様の決議案は、米共和党が多数を占めていた下院本会議で、共和党のリチャード・アーミー下院院内総務らの反対に遭って(否決されたのではなく)採決されることなく廃案になり、それを見たIOCは安心して、2001年のIOC総会で北京を2008年夏季五輪の開催地に選んでいる(産経新聞2001年7月12日付朝刊4面「『北京五輪』反対決議案 米下院、採決見送り決定」)。

たとえ本会議で採決されれば可決確実な決議案でも、採決するか否かは事実上、議会多数党の首脳(院内総務や下院議長)の采配で決まるのだ。
したがって、2007年6月に下院外交委員会を圧倒的多数の賛成(39/41)で通過した「慰安婦決議案」を採決に付すかどうかも、米議会民主党首脳、すなわちステニー・ホイヤー(ホイアー)院内総務やナンシー・ペロシ下院議長の胸三寸ということになる。

米下院は8月6日(月曜日)から夏季休暇にはいるが、土日に審議をしないと考えると、会期末は事実上8月3日(金)となる。 日本の参院選は7月29日(日)に投開票され、翌30日(月)の未明か早朝には大勢が判明するので、判明した瞬間から最大5日間、安倍は退陣するかどうかを考えることができる。

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もっとも、A新聞やK新党が先走って事実無根の「安倍退陣説」を流し、「それをきっかけに自民党内の『安倍下ろし』の動きが顕在化してほんとに退陣」というトリックもありうるが。】

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「もし日本時間3日夜(米東部時間3日朝)までに安倍が退陣を表明しなければ、慰安婦決議案を下院本会議で採決に付す」…………参院選のあと米民主党はさまざまなルートでこのようなメッセージを安倍に伝えて、安倍を脅迫するはずだ。

8月3日までに安倍が退陣し、慰安婦決議案が会期内に採決されなかったら、その瞬間「慰安婦決議案はいわゆる『従軍慰安婦問題』とはなんの関係もなく、中朝戦争と関係がある」という筆者の説の正しさが証明されたことになる。

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【今後15年間の国際情勢については、2007年4月発売の拙著、SF『天使の軍隊』)をご覧頂きたい(『天使…』は小説であって、基本的に小誌とは関係ないが、この問題は小説でもお読み頂ける)。】

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【出版社名を間違えて注文された方がおいでのようですが、小誌の筆者、佐々木敏の最新作『天使の軍隊』の出版社は従来のと違いますのでご注意下さい。出版社を知りたい方は → こちらで「ここ」をクリック。】

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【尚、この小説の版元(出版社)はいままでの拙著の版元と違って、初版印刷部数は少ないので、早く確実に購入なさりたい方には「桶狭間の奇襲戦」)コーナーのご利用をおすすめ申し上げます。】

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【小誌をご購読の大手マスコミの方々のみに申し上げます。この記事の内容に限り「『天使の軍隊』の小説家・佐々木敏によると…」などの説明を付けさえすれば、御紙上、貴番組中で自由に引用して頂いて結構です。ただし、ブログ、その他ホームページやメールマガジンによる無断転載は一切認めません(が、リンクは自由です)。】

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 (敬称略)

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