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媚日派胡錦濤

〜「福田康夫は親中派」報道のデタラメ〜

Originally written: May 26, 2008(mail版)■媚日派胡錦濤〜週刊アカシックレコード080526■
Second update: May 26, 2008(Web版)

■媚日派胡錦濤〜週刊アカシックレコード080526■
2008年5月、中国の胡錦濤国家主席は訪日し、福田康夫首相から「北京五輪開会式に出席する」という言質を取るために日中首脳会談に臨んだが、福田は拒否し、意図的に胡錦濤のメンツを潰した。
■媚日派胡錦濤〜週刊アカシックレコード080526■

■媚日派胡錦濤〜「福田康夫は親中派」報道のデタラメ■
【小誌2007年2月22日「北朝鮮の北〜シリーズ『中朝開戦』(1)」は → こちら
【小誌2007年3月1日「脱北者のウソ〜シリーズ『中朝開戦』(2)」は → こちら
【小誌2007年3月8日「戦時統制権の謎〜シリーズ『中朝開戦』(3)」は → こちら
【小誌2007年3月18日「すでに死亡〜日本人拉致被害者情報の隠蔽」は → こちら
【小誌2007年4月14日「国連事務総長の謎〜シリーズ『中朝開戦』(4)」は → こちら
【小誌2007年5月14日「罠に落ちた中国〜シリーズ『中朝開戦』(5)」は → こちら
【小誌2007年5月21日「中国の『油断』〜シリーズ『中朝開戦』(6)」は → こちら
【小誌2007年6月7日「米民主党『慰安婦決議案』の謎〜安倍晋三 vs. 米民主党〜シリーズ『中朝開戦』(7)」は → こちら
【小誌2007年6月14日「朝鮮総連本部の謎〜安倍晋三 vs. 福田康夫 vs. 中国〜シリーズ『中朝開戦』(8)」は → こちら
【小誌2007年7月3日「『ニセ遺骨』鑑定はニセ?〜シリーズ『日本人拉致被害者情報の隠蔽』(2)」は → こちら
【小誌2007年9月13日「安倍首相退陣前倒しの深層〜開戦前倒し?〜シリーズ『中朝開戦』(9)」は → こちら
【小誌2007年10月6日「拉致問題依存症〜安倍晋三前首相退陣の再検証」は → こちら
【小誌2007年10月22日「軽蔑しても同盟〜シリーズ『中朝開戦』(11)」は → こちら
【小誌2007年11月16日「先に『小連立』工作が失敗〜自民党と民主党の『大連立政権構想』急浮上のウラ」は → こちら
【小誌2007年12月21日「大賞受賞御礼〜メルマ!ガ オブ ザ イヤー 2007」は臨時増刊なのでWeb版はありませんが → こちら
【小誌2008年2月1日「ヒラリー大統領〜2008年米大統領選」は → こちら
【小誌2008年2月18日「毒餃子事件の犯人〜チャイナフリー作戦〜シリーズ『中朝開戦』(12)」は → こちら
【小誌2008年3月6日「中朝山岳国境〜シリーズ『中朝開戦』(13)」は → こちら
【小誌2008年3月17日「女は女を理解できない?〜朝ドラ視聴率低迷の意外な理由」は → こちら
【小誌2008年3月31日「謎の愛読書群〜シリーズ『ロス疑惑』(1)」は臨時増刊なのでWeb版はありませんが → こちら
【小誌2008年4月1日「拝啓 三浦和義様〜シリーズ『ロス疑惑』(2)」は臨時増刊なのでWeb版はありません。】
【小誌2008年4月25日「捏造政局〜『支持率低下で福田政権崩壊』報道のウソ」は → こちら
【前回「読者の皆様の平均年齢〜より充実した記事のため『読者アンケート』にご協力を」は臨時増刊なのでWeb版はありませんが → こちら

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日本のマスコミによると、福田康夫首相は「親中国派」なんだそうである。
だから、中国嫌いの保守派メディアの福田評は総じて手厳しく、2008年5月6日に始まった胡錦濤(こ・きんとう)中国国家主席の訪日と、それを迎える福田政権の「成果」についての報道には端的にそれが現われている。胡錦濤来日直後に発売された『週刊文春』(2008年5月15日号 p.p 30-33)のトップ記事の見出しはその典型だ:

「新聞・TVが報じない『訪日』全内幕」
「胡錦濤の笑顔にスリ寄る福田政権『大パニック』」
「フランスワインにダメ出し 首相のコビへつらい」

実はこの「5月15日号」は5月8日に発売されているが、印刷、製本、配送の時間を考えると、原稿の締め切りは5日あたりだったはずだ。胡錦濤は6日に来日し、7日に福田との日中首脳会談に臨んで日中共同声明に調印したあと、天皇皇后両陛下と会談し、8日に早稲田大学で講演し、9日に横浜の山手中華学校などを訪問し、10日には奈良の唐招提寺、大阪府門真市の松下電器産業本社を訪問して大阪空港(関西空港ではなく、兵庫県伊丹市の空港)から離日しているから、どう考えても上記の記事に「『訪日』全内幕」が載っているはずはない。

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●見込み記事●
上記の記事のすぐあとには「櫻井よしこ×富坂聰 徹底討論 首脳会談は『大失敗』 もはや中国にモノは言えない」と題する対談記事が続くのだが、この対談の参加者2名は明らかに、まだ行われてもいない日中首脳会談の「成果」について徹底討論したことになる(『週刊文春』2008年5月15日号 p.p 33-35 「首脳会談は『大失敗』」)。
んなアホな。
(^^;)
しかし、この「見込み記事」は胡錦濤訪日の「中日」である5月8日に店頭に並び、その日の朝、電車の中吊り広告には上記の「全内幕」「スリ寄る福田政権」「コビへつらい」の見出しが登場し、マスコミ業界人を含む大勢の電車通勤者の目に触れることになったから、多くの日本国民は「胡錦濤訪日の日本にとっての成果はなかった」と思い込んだに違いない。

なるほど、こんな宣伝ばかり目にしていれば、だれでも「福田は親中国派」と思うはずだ。
筆者はとくに自民党や福田康夫現政権を支持しているわけではないし、「日本が真の民主主義国家になるためには、たとえ『政権交代のための政権交代』でもかまわないから、政権交代が必要」すなわち「いつかは民主党が政権を取ることが必要」と考えている。が、マスコミのウソは糾さなければならない。

いったいマスコミは何を根拠に、福田を「親中国派」と呼ぶのか。
福田が靖国神社に参拝しないからか。それなら、安倍晋三前首相だって首相在任中は参拝していないのだから、同じことだ。
あるいは、東シナ海のガス田開発をめぐって中国が日本の権益を侵犯している問題で、福田が中国に対して公然と厳しい態度をとらないからか。これも、安倍と同じではないか。
日本の民間企業、帝国石油に試掘権を与えて国益を守る姿勢を見せた小泉純一郎内閣(中川昭一経済産業相)と違って、安倍内閣は何もしなかった。
それなのに、保守系マスコミは安倍を「反中派」の愛国者、福田を「親中派」の売国奴のように報道する。いったいその理由はなんなのだ。

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●ゼロ回答●
この胡錦濤訪日の最中、福田の「正体」が暴露された瞬間があった。
訪日前の3月、中国南西部のチベット自治区で暴動が起き、中国政府が軍、警察などを動員して武力で鎮圧したため、西側諸国から非難を浴びていた。
フランスのニコラ・サルコジ大統領がこの問題を理由に2008年8月の北京五輪開会式を欠席する可能性を示唆したのを筆頭に、ドイツ、チェコ、ポーランド、エストニア、スロバキアの5か国が首脳の開会式欠席を表明したのだ(共同通信2008年4月5日付「サルコジ大統領 五輪開会式出席へ3条件」、産経新聞Web版2008年3月29日「EU チベット弾圧中止を要求」)。

チベットは元々中国領ではなく、1959年に中国が武力で併合してチベット仏教の最高指導者のダライ・ラマ14世をインドへの亡命に追い込み、1960年代には、悪名高き破壊活動、「文化大革命」の紅衛兵を大量に送り込んでチベット仏教寺院を多数破壊させ、僧侶を含むチベット人多数を虐殺させた。この侵略の歴史は欧米では周知のことなので、チベット人が中国政府に抗議して弾圧されたと聞くと、人権意識の高い欧米人は容赦できないのだ。

だから、2008年米大統領選に立候補しているヒラリー・クリントン上院議員もバラク(バラック)・オバマ上院議員も「ブッシュ米大統領は(北京)五輪開会式を欠席すべきだ」と表明したのだ(読売新聞Web版2008年4月10日「オバマ氏、大統領に五輪開会式欠席の検討を要求 大統領選」)。

中国にとって北京五輪の成功は悲願である。その国家的行事の開会式に本来出席するはずだった世界各国の首脳が次々に「ボイコット」を表明し、五輪を汚されたのではたまらない。たとえ五輪自体が無事に開催されても、世界各国が祝福しない形での開催は成功とは言えず、五輪後に手にはいると中国が期待していた国家的威信の向上も望めない。

そこで、中国は当然、欧米諸国に比べて人権意識が希薄である(と中国が考える)日本に狙いを付け、この「反中国人権問題包囲網」を打破しようとする。2008年5月上旬に予定されていた胡錦濤の訪日は、3月のチベット暴動発生後、初めての西側諸国への外遊であり、初めての西側諸国首脳との会談の機会となった。この訪日、首脳会談に当初どんな目的があったにせよ、フランスを始めEU諸国の多くがチベット問題を理由に「首脳の五輪開会式欠席」というスタンスをとり続けている以上、胡錦濤の訪日の最大の目的は、日本の首脳、福田康夫を直接説得して「(日中友好のため)北京五輪開会式に出席します」と言わせることにあったはずだ。

5月7日午前中、胡錦濤は首相官邸で福田と日中首脳会談を行った。もちろんその席で胡錦濤は「ぜひ開会式に出席を」と求めたはずであり、福田も外交儀礼上「前向きに検討します」ぐらいのことは言っただろう。胡錦濤は、日中友好を演出するため、第二次大戦までの日本の中国侵略の歴史を厳しく問う「歴史認識問題」は持ち出さず、いわゆる「日本軍国主義批判」はほとんどせず、この7日に署名した日中共同声明には以下の文言を入れることに同意した:

「中国側は、日本が戦後60年あまり平和国家としての歩みを堅持し、平和的手段により世界の平和と安定に貢献してきたことを積極的に評価。日本の国連における地位と役割を重視、国際社会で一層大きな建設的役割を果たすこと望む」

これは事実上、中国が日本の国連安保理事会常任理事国入りに反対しないことを表明したのと同じだ(産経新聞Web版2008年5月7日「胡錦濤氏訪日:日中共同声明の要旨」)。

この2008年の日中共同声明は、1972年の(日中国交回復時の)日中共同声明、1978年の日中平和友好条約、1998年の日中共同宣言に続く「第4の政治文書」と位置付けられており、通常の合意文書より拘束力が強いので(産経新聞Web版2008年5月7日「日中共同声明を発表 ガス田開発問題など解決への道筋明示できず 日中首脳会談」)、上記の国連に関する下りは、けっして単なるリップサービスではない。すなわち、今後中国政府は、2005年に見せたような、日本の国連安保理常任理事国入りを阻止するための露骨な行動をとることはできなくなったのだ(日経BP SAFETY JAPAN [古森 義久氏] 2005年12月5日「惨憺たる結果に終わった小泉政権の国連外交」)。

歴代の中国首脳は、中国のマスコミが政府の統制下にあることを利用して、中国が日本から円借款などの多額の経済援助を得ていたことを中国国民に対してはひた隠しにしていた。「偉大なる中国は自力更生で発展して来たのであって、日本ごときの助けなど得ていない」と中国国民に言いたかったからだ(政府の円借款どころか、民間の合弁投資についてさえ、中国人は可能な限り隠そうとして来た。拙著、小説『龍の仮面(ペルソナ)』を参照)。が、この点でも胡錦濤は日本側にスリ寄った。5月8日に早稲田大学で行った講演会で胡錦濤は「日本の対中円借款はインフラなど中国の近代化建設に積極的な役割を果たした」と語って、その講演をそのまま中国全土にTVで生中継させたのだ。

これは共産中国建国以来初めての、中国国民への「告白」であり、国民レベルでの日本への「感謝の表明」だが(2008年5月11日放送のTBS『サンデーモーニング』における岸井成格・毎日新聞特別編集委員のコメント、産経新聞Web版2008年5月8日「胡錦濤氏訪日:早稲田大学での講演要旨」)、もちろんそのセリフ、シナリオは訪日前に固まっていて、事前に日本側に伝達してあったから、この講演会も、福田に五輪開会式出席を決断させる材料になると胡錦濤は読んでいたはずだ。

さらに、訪日が(都合よく)中国から日本に贈られた上野動物園のパンダ、リンリンが死亡した直後だったことをとらえて、胡錦濤は、リンリンの「後継者」になるパンダをあらたに貸与することも決めてその旨を前日(5月6日)に表明していたので、これも福田を五輪に引っ張り出すのに役立つ、と判断していただろう(日テレニュース24 Web版2008年5月7日「胡錦濤国家主席、雌雄のパンダ提供を表明」)。

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ところが、5月7日正午すぎ、会談終了後の日中共同記者会見で、日本側の記者から「北京オリンピックの開会式には、どのように対応されるか」と質問された福田はこう答えたのだ:

「出席するかどうかというお尋ねですが、考えてみたらまだ先なんですね。ですから、これはですね、前向きに検討するということ。事情が許せば前向きに検討してまいりましょうということであります」(産経新聞Web版2008年5月7日「胡錦濤氏訪日:日中共同記者会見詳報(6) 福田首相『事情が許せば前向きに検討する』北京五輪開会式出席」)

事実上のゼロ回答だ。事情が許さなければ「前向きに検討」すらしないのだから。
この答えを聞いたときの胡錦濤の顔は、日本ではNHKなどで生中継されていたが、だれが見ても、明らかにショックを受けたとわかる表情だった(前掲『サンデーモーニング』における岸井成格のコメント)。国連、円借款、パンダまで持ち出した胡錦濤の「媚日外交」に対して、福田は「まだ先の話だから」と回答を避け、日中両国の政官界が注目する晴れ舞台で胡錦濤に恥をかかせたのである。

胡錦濤はここまで福田にバカにされたにもかかわらず、翌8日の早大での講演会では当初のシナリオどおり、日本の円借款などの経済援助に感謝を表明し、それを中国全土に生中継させた(ここまで来ると、筆者は「痛快」を通り越して「哀れ」を覚える)。
(>_<;)
もし福田が「親中国派」ないし「媚中派」なら、7日の記者会見では当然「五輪に行きます」と言うはずである。が、そう言わなかったのはなぜか。
理由はもちろん、福田は親中国派ではないからだ。

中国側は今回の日中首脳会談では、東シナ海のガス田開発問題など、日中の国益が露骨にぶつかる問題では(表面上は)なんの譲歩もしなかった(産経新聞Web版2008年5月7日「日中共同声明を発表 ガス田開発問題など解決への道筋明示できず 日中首脳会談」)。そうであるならば、こちらもここで「出席します」などと尻軽に答える必要はない。福田は明らかに、北京五輪の成功を悲願として念じる中国の弱みに付け込んで、「五輪出席」を外交ゲームのカードに使ったのだ。

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●実は親台湾派●
上記の『文春』の対談記事のあとには、福田がひそかに台湾独立派に接近して(反中国的な行動をとって)いたとする記事が載っている。題して:

「スクープ 福田康夫『台湾外相』極秘入国を認めていた! 『インチキ外交』を暴く」。

日本政府は1972年に中国(中華人民共和国)と国交を回復し、台湾(中華民国)と断交して以降、台湾を自国領と主張する中国に遠慮して、現役の台湾総統(大統領、国家元首)、副総統、行政院長(首相)、外交部長(外相)、国防部長(国防相)を来日させないという原則を設けたが、福田が官房長官であった2003年秋、台湾独立を掲げる民主進歩党(民進党)の陳水扁総統政権の現役の外交部長、簡又新を、日本外務省に内緒で極秘入国させて(衛藤征士郎元防衛庁長官に案内役を務めさせて)いた、というのだ(『週刊文春』2008年5月15日号 p.p 36-37 「『インチキ外交』を暴く」)。

どうやら『週刊文春』は「福田は親中国派のように振る舞っているくせに、その陰で台湾独立派とつながりをもっているからインチキだ」と言いたいらしい。しかし、なぜそれが「インチキ」なのか。

『文春』は、福田が外務省に内緒で、本来入国できないはずの台湾外交部長を極秘に入国させた「秘密主義」を問題視する(『週刊文春』前掲記事)。しかし、外交には秘密はつきものである。中国と台湾が対立していて、日本と台湾の間に国交がない以上、日本政府高官が台湾で人脈を築こうと思えば、中国にバレないようにやらざるをえない。もしバレたら、中国に進出している日本企業が不利益を受ける恐れさえあるわけで、そういう国益を考慮してウソをついたり沈黙を通したりするのは、外交の常道だ。いったい、この福田の秘密主義のどこがいけないのか。

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『文春』は「親中国派」が嫌いなはずだ。中国に媚びへつらうのは悪いことと思っているはずだ。だったら、福田が中国をだまして中国と対立する台湾独立派とパイプを築いたことについては、むしろ称賛すべきではないのか。

福田は1998年に夫人同伴で訪台し、台湾独立派の急先鋒、李登輝総統(当時)夫妻と会食している。福田が2007年に首相になった際には、台湾のマスコミは福田を「台湾を三度訪問したことがある人物」と報道して祝福し、福田自身、台湾の事実上の大使館である「台北駐日経済文化代表処」のパーティにも参加したことがある(『週刊文春』前掲記事)。つまり、福田は元々「親台湾派」(反中派)なのだ。

すなわち、将来、中国が弱体化して、台湾の国連加盟が避け難い情勢になったとき、福田がそれに賛成しても、べつに福田は台湾国民から「変節した」と言われることはないのである。

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【他方、安倍が首相在任中に靖国神社に参拝しなかったのは、明らかに変節だ。安倍は誠実な愛国者ではない。】

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たしかに福田は「親中国的」な言動をとったことが何度かある。たとえば、2001年8月15日の終戦記念日に予定されていた小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝を2日前倒しさせた「終戦記念日をはずせばなんとかなる」という助言がその典型だろう(読売新聞2001年8月14日付朝刊3面「靖国前倒し参拝 盟友説得、折れた小泉首相 『慙愧の念に堪えない』」)。しかし、それは「国益のためにウソをつく」ことが常識である外交の世界では、当然許される範囲の芝居ではあるまいか。

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【2001年8月の小泉首相は、予定どおり15日に参拝を強行したほうが日中関係にとってはかえってよかっただろう、と筆者は考えている。日本が「脅しに屈しない国」であることを一度示しておけば、今後中国からのこの種の圧力は弱まるはずだからだ(「やっても無駄」な外圧をかけ続けるほど中国人はバカではない)。が、福田が自身を「親中国派」と見せかける手段としてこの問題を使いたかったのだとすれば、ある程度は理解できる(しかし、靖国神社のあり方に問題があるというのなら日本人同士で議論すべきであって、基本的に中国人の口出しを許すべきでないので、筆者はこのときの福田の態度に賛成はできない。小誌2006年7月27日「靖国神社の財政破綻〜『靖国問題』は20年以内にすべて解決」も参照されたい)。】

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「インチキ」なのは、福田の外交ではない。日本のマスコミが、確たる根拠もなく、福田の表面的な言動をとらえて「親中国派」のレッテルを貼ったことこそ「インチキ報道」なのだ。

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【そもそも、福田の側近中の側近が衛藤であり、その衛藤が筋金入りの親台湾派であることは、政治記者ならだれでも知っていることだ(衛藤は台湾政府から、台湾系華僑の王貞治ソフトバンクホークス監督が授与されたのよりも格上の勲章、「中華民国大綬景星勲章」を授与されている。『週刊文春』前掲記事)。その福田が「親中国派」的な言動をとったのなら、それは衛藤と主従2人で役割分担をして、中台双方と外交上のパイプを作ろうとした、と考えるのが自然ではないか。】

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●もし大望があるなら●
小誌既報のとおり、福田は「中朝戦争賛成派」である(小誌2007年6月14日「安倍晋三 vs. 福田康夫 vs. 中国〜シリーズ『中朝開戦』(8)」)。ひとたび北朝鮮が中国を攻撃すれば、元々統一性が薄く、税制すら地方政府ごとにばらばらで、チベット自治区や新疆ウイグル自治区など各地に分離独立運動の火種を抱える中国は、たちまち分裂含みで弱体化し、以後半永久的に日本の軍事的脅威にならないことが確実になるからだ(日中投資促進機構Web 2004年『投資機構ニュース』No.100 「中国における今後の会計制度と税制、さらにM&Aについて」)。

しかし、この「中国の弱点」については、日本の政治家は口が裂けても、その日が来るまで公言してはならない。たとえば、日本の国会議員が国会でこのことをひとことでも言えば(中朝戦争が起きると朝鮮半島が不安定化して韓国から外国資本が逃げ出すと予想されるので)、韓国の株式市場ではたちまち大暴落が起き、韓国経済は一夜にして壊滅してしまう。だから、世界中の政治家や外交官は、中朝戦争の可能性に気付いていながら、絶対にそれを公言することはない(小誌2007年4月14日「国連事務総長の謎〜シリーズ『中朝開戦』(4)」)。この問題を民主的に議論することは許されないのだ。

つまり、もし福田が「大望」を抱いているのなら、当然「秘密主義者」になるはずなのだ。「開戦Xデー」直前まで「親中派」のフリをすることも必要だろう。

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●マスコミ嫌い●
福田は政界屈指のマスコミ嫌いとして知られている。
NHKの『総理に聞く』に出演したのを除くと、福田は、首相になる前からこんにちまで、新聞、TV、週刊誌など大手マスコミの単独インタビューを受けたことがない。

その理由としては、まず「愛想が悪くて口下手だから」といった評判が思い浮かぶ。
しかし、彼は森喜朗、小泉純一郎という2人の首相のもとで、2000年10月〜2004年5月まで官房長官を務め、その間毎日定例記者会見に臨んでいたのである(官房長官としての在職日数は史上最長の1289日)。「口下手」で3年半もあのポストが務まるはずがない。

とすると、ほかの理由が考えられる。たとえば、

「外交のイロハもわからない、あたまの程度の低い記者どもに、自分の大望を語っても無駄だ」

と福田が思っている可能性である。
日本のマスコミ各社は、もし福田の単独インタビューを取りたければ、第一線から「インチキ記者」や「程度の低い記者」を排除し、せめて外交のイロハぐらいわかる記者と交代させておく必要があるだろう。もちろん福田が「中国の弱点」について直接語ることはありえないが、インタビュアーの能力がまともなら、抽象的に地政学上の問題を論じることぐらいはできるだろう。

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【『週刊新潮』は最近、中国諜報機関の対日浸透工作の対象となった政治家のリスト、つまり「親中派として中国に取り込まれそうな政治家のリスト」を日本の公安当局から入手したと報じた(2008年5月22日号 p.p 48-49「流出した中国人『スパイリスト』と標的にされた『政治家リスト』」)。しかし、その「政治家リスト」に福田康夫の名前はない。】

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●「媚日派」の誕生●
胡錦濤訪日後、さすがの『文春』もようやく「福田が媚中派なのではなく、胡錦濤が媚日派なのだ」と気付いたようだ。その理由として胡錦濤の早大招聘にかかわった専門家の意見を紹介しているが、それは「これまで中国が(世界に対して)強気の姿勢だったのは、(中国経済の)高度成長という支えがあったから」だが「それがなくなりつつあり、世界から孤立し始め」ており「ここで日中関係まで悪くなると、中国の危機」だから、という中国側の苦しい事情だ(『週刊文春』2008年5月22日号 p.36 「『訪日』知られざるドラマ 胡錦濤に環境破壊をおたしなめになった『天皇のお言葉』」)。

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但し、この下りは記事の見出しにはまったく反映されておらず、胡錦濤の「媚日ぶり」はほとんど強調されていない。いままで「福田は媚中派」というトーンで記事を売って来た手前、引っ込みがつかないのだろう。

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実は、胡錦濤は5月7日の日中首脳会談で、日中間で領有権争いの火種になっている「東シナ海ガス田問題」では、福田の提案する日中共同開発案を受け入れている。しかし、中国ではこの問題は一種の領土問題であり、中国政界に隠然たる発言力を持つ軍部(人民解放軍)の管轄であり、中国国内での十分な根回しなしにうっかり「共同開発で合意」と発表すると、北京で「胡錦濤おろし」が起きかねない。このため、胡錦濤は福田案を呑んだにもかかわらず福田に「詳細はまだ公表しないでほしい」と要請し、両国政府ともに「大きな前進があった」としか発表しなかった(『週刊文春』前掲記事p.34)。

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媚日派はつらいよ。
(>_<;)

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【この記事は純粋な「予測」であり、「期待」は一切含まれていない。】

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【中朝国境地帯の情勢については、お伝えすべき新しい情報がはいり次第お伝えする予定(だが、いまのところ、中朝両国の「臨戦体制」は継続中)。】

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【2007年4月の『天使の軍隊』発売以降の小誌の政治関係の記事はすべて、読者の皆様に『天使』をお読み頂いているという前提で執筆されている(が、『天使』は中朝戦争をメインテーマとせず、あくまで背景として描いた小説であり、小説と小誌は基本的には関係がない)。】

【出版社名を間違えて注文された方がおいでのようですが、小誌の筆者、佐々木敏の最新作『天使の軍隊』の出版社は従来のと違いますのでご注意下さい。出版社を知りたい方は → こちらで「ここ」をクリック。】

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【尚、この小説の版元(出版社)はいままでの拙著の版元と違って、初版印刷部数は少ないので、早く確実に購入なさりたい方には「桶狭間の奇襲戦」)コーナーのご利用をおすすめ申し上げます。】

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【小誌をご購読の大手マスコミの方々のみに申し上げます。この記事の内容に限り「『天使の軍隊』の小説家・佐々木敏によると…」などの説明を付けさえすれば、御紙上、貴番組中で自由に引用して頂いて結構です。ただし、ブログ、その他ホームページやメールマガジンによる無断転載は一切認めません(が、リンクは自由です)。】

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 (敬称略)

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