3月14〜29日の死闘

〜イラク反米テロのピークは予測可能〜

Originally Written: Jan. 28, 2004(mail版)■ 3月14〜29日の死闘〜イラク反米テロのピークは予測可能 ■
Second Update: Jan. 28, 2004(Web版)

■3月14〜29日の死闘〜イラク反米テロのピークは予測可能■
キッシンジャー元米国務長官は、04年3〜4月にイラクでの反米武装勢力のテロはピークに達すると「予告」。彼は、米アカデミー賞授賞式の独占中継権を持つ米ABC放送の親会社、ディズニーの顧問なので、米ABCは彼を100%信じて04年の授賞式を、伝統を破って3月下旬から2月下旬に繰り上げた。03年の授賞式生中継はイラク戦争とぶつかって台無しになったので、同じ失敗は二度したくなかったのだ。
■3月14〜29日の死闘〜イラク反米テロのピークは予測可能■

■3月14〜29日の死闘〜イラク反米テロのピークは予測可能■
【前回の「小泉退陣後に帰国?〜米国は拉致家族の帰国に反対か」は → こちら

88年晩夏、日本でさる高貴な方が吐血し、危篤状態に陥った。
彼は高齢だったので、いずれ亡くなると当時のだれもが予想していたが、あまりに高貴な方なので、国民各層はなんらかの服喪期間を自主的に設けるべきことが、それ以前に合意されていた。

その合意とは、死亡の瞬間から48時間を国を挙げて喪に服する期間とする、というものだった。その48時間には、国会は審議をせず、マスコミは通常番組を放送せずすべて追悼放送とし、工場、オフィス、公立学校は通常の活動をせず、スポーツイベントも中止または延期する、というものだった。

筆者はべつにこれが正しいことだとは思わない。が、とにかく当時の日本の各界の指導者たちはそう決めていた。
ただ、決めたあと、指導者たちがみんなが困ったのは、いったいその48時間がいつ来るか、だった。

もし、その48時間が、国会の会期末、高校や大学の入試や卒業式や入学式、ソウル五輪やプロ野球の日本シリーズ、『紅白歌合戦』などの年末年始特別番組とぶつかったらどうなるか?……億単位の莫大な損害が出ることは間違いないし、消費税法案や予算案などの重要案件が(たとえ与野党で歩み寄っていても)審議未了に陥る危険がある。そもそもその48時間が平日だった場合、工場やオフィスが被る損害は甚大だし、12月以前だった場合は、日本中が「自粛ムード」に包まれるため、外食産業や小売業のクリスマス・歳末商戦(忘年会の集客)、官製年賀はがきの売れ行きにも経済的な悪影響をおよぼしかねず、その高貴な方への反感が全国民的に広がる恐れもあった。

なら、その48時間の服喪自体をやめればいいではないか、と思われるかもしれないが、それではその方の権威が守れない、という心配があり、結局当時の各界の指導者たちは「48時間」の合意は厳格に守ることにした。

そこで、当時の指導者たちが頼ったのは、医療技術だった。
危篤状態に陥ったその方に延々と延命治療を施し、上記の経済的社会的損害の大きい期間を強行突破するのである。 そして、正月三が日のあとで、学校が冬休み中で入試などの重要な行事もなく、国会が休会中で、平日でもない日……つまり89年1月の第1土曜(7日)の未明に延命治療を打ち切れば、ほとんどだれもその方に恨みを抱くことなく、心置きなく国民各層がその方の死に対して48時間の喪に服することができる、というシナリオだった。

●大河ドラマ放送開始日のナゾ●
そんなのただの推測だろ、と思ってはいけない。証拠があるのだ。
少なくとも当時のNHKのトップには、その方が89年1月の最初の週末に亡くなる、ということが事前にわかっていたはずなのだ。

証拠は、89年のNHK大河ドラマ『春日局』の放送開始日だ。
大河ドラマは毎年1月に始まり、毎週日曜夜8時から45分間放送で、1年間約50回続く。が、1月第1日曜が正月三が日の場合は、それは避けて第2日曜から始めるのが慣例だ(04年の大河ドラマ『新撰組!』は1月の第2日曜、11日に開始)。とくに元日が日曜の場合、その日に大河ドラマの第1回を放送することは避けるのが「鉄則」だ。

元日が日曜の年の大河ドラマは過去に『三姉妹』(67年)『黄金の日日』(78年)『山河燃ゆ』(84年)『春日局』(89年)『八代将軍吉宗』(95年)の計5本ある。このうち『三姉妹』は古すぎて参考にならない。NHKは78年から年始の番組編成方針を大きく変え、正月三が日の夜には(たとえ日曜でも)大河ドラマではなく「正月特番」を放送することにしたからだ。このため77年の『花神』(1月2日〜12月25日)を最後に、三が日にスタートした大河ドラマは(『春日局』以外は)一例もない(NHK大河ドラマ一覧)。

が、なぜか『春日局』は89年1月1日にスタートしている。これは例外中の例外なので、何か特別の事情があったと見るべきだ。

慣例に従えば『春日局』は1月8日にスタートすべきだ。もし、NHK局内に、例の高貴な方の服喪期間がいつ来るかわかっていた人が1人もいなければ、そうなったはずだ。そして88年中に「大河ドラマ『春日局』は1月8日スタートです」という宣伝を何回も流したはずなのだ。

ところが、NHKの、おそらくトップが、89年1月8日が服喪期間にかかることを事前に知っていたので、ずらしたのだ。「1月8日スタートです」と何度も宣伝しておいて、実際にその日にスタートしないと、たとえ翌週の15日に放送を開始しても、視聴者は「いつから始まるんだっけ?」と迷い、第1回を見逃す恐れがある。第1回を見逃すと、その後も本来見てくれるはずの視聴者を大勢失い、視聴率が低迷する危険がある(NHKは受信料獲得の切り札として大河ドラマと朝の連続テレビ小説、『紅白』の視聴率を重視している)。

また、放送回数の問題もある。当時は大河ドラマは1年50回放送し、第50回、つまり最終回の翌週の日曜には大河ドラマ総集編などの特番を放送するのが慣例だった。が、もし服喪期間のせいで1月15日スタートとなると、その年53回ある日曜のうち、元日と1月8日を使わず、さらに12月31日の、最後の日曜も『紅白歌合戦』で使えないので、結局第49回が最終回になってしまう。

『春日局』の前年の大河ドラマ『武田信玄』、前々年の『独眼竜政宗』、さらにその前年の『いのち』も第50回が最終回だった。
『春日局』の脚本家は『いのち』も担当した巨匠橋田壽賀子なので、彼女がおいそれと放送回数の削減に応じるとは思えない(だいたいこの脚本家は話の長い人で、通常ほかの脚本家なら1時間で済ます「初回スペシャル」「最終回スペシャル」に1時間半もかける)。もし『春日局』を1月15日に開始すると、NHKは89年末の番組編成で相当に苦労することになろう。

この、視聴率の問題や、脚本家との問題をすべて解決する方法が1つだけある。それは、慣例を破って(服喪期間前の)元日にスタートすることだ。年内に何度も「1月1日スタートです」と宣伝しておいて、そのとおり1日に放送するのだから、本来見るはずの視聴者はみんな見てくれる。最終回を第50回にすることもできるから、これで万事解決だ。

つまり、どう考えても、NHKの番組編成権限を持つ最高幹部は、89年1月8日を含む48時間が服喪期間になる、と事前にわかっていたに相違ないのだ。

●米アカデミー賞「繰り上げ」のナゾ●
さて、上記のことを踏まえると、04年の米アカデミー賞授賞式(米ABC放送が全世界数十か国に独占生中継)が、毎年3月の第4日曜挙行という慣例を破って、2月29日(日本時間3月1日)に繰り上がったのは、ただごととは思えない。

いちおう表向きは、ノミネート発表(03年までは毎年2月中旬)から3月下旬の授賞式(の前の投票締め切り)までに1か月半も間をあけると、投票権を持つ映画業界人(数千人)への宣伝合戦が過熱してよくないから、とされている( http://www.eiga.com/buzz/020709/09.shtml )。

が、この問題が始まったのは、何も去年(03年)ではない。99年である。
99年のアカデミー賞作品賞の本命は、スピルバーグが監督し、彼の会社ドリームワークスが制作した『プライベート・ライアン』だった。が、『恋に落ちたシェイクスピア』を制作した会社ミラマックスが、映画業界人のよく読む雑誌などに莫大な資金を投じて同作品の宣伝を打ち、逆転勝ちで作品賞を取ってしまった。アカデミー協会はスピルバーグの作品が受賞すると想定して、作品賞のプレゼンターには彼の作品で主役を務めたことのあるハリソン・フォードを招いていたから、この作品賞がいかに「番狂わせ」であったかは一目瞭然だった。

怒ったスピルバーグは翌00年には、ドリ−ムワークス制作の『アメリカン・ビューティ』に受賞させるために巨額の宣伝費を投じて逆襲し、作品賞を奪い取った。そしてこれ以降(作品賞をとると米国内だけで1億5000万ドル余分に興行収入がはいると言われることもあり)制作会社はどこも、授賞式前の宣伝合戦でカネに糸目をつけなくなった(この激しい宣伝合戦を、00年授賞式の司会者ビリー・クリスタルはギャグにして生放送中にしゃべったほどだ)。

この事態を03年まで放置していたアカデミー協会が、04年から急に「沈静化」に乗り出すというのは変だ。1か月繰り上げても依然として、ドリームワークスのような資金の潤沢な会社は宣伝攻勢が可能、という点から見ても奇妙だ。

宣伝合戦の激化を防ぐためなら、ノミネート発表を2月中旬に固定したままで授賞式だけ2週間繰り上げてもいいし、逆に、授賞式を固定してノミネート発表を繰り下げてもいいはずだ。が、アカデミー協会はそうはせず、04年は授賞式を4週間繰り上げただけでなく、ノミネート発表も2週間繰り上げている。

授賞式を4週間繰り上げると2月29日になる。ということは、アカデミー協会はよほど04年3月に授賞式をやるのがいやなのだ。

授賞式生中継の日本国内での独占放送権を持つWOWOWは「3月より2月のほうが視聴率が取れる」という説を紹介しているが(http://www.wowow.co.jp/76/76th/nagare.html)根拠は不明だ。

原因は、イラク戦争の経験にあると見るのが自然ではないか。
03年の授賞式は、米イラク戦争の開戦直後だったために、授賞式の生中継は何度も「臨時ニュース」で中断されたうえ、生中継をよいことに世界に向かって政治的な(反戦)コメントを、司会者やアカデミー協会の制止を無視して勝手に口走る者も出て、まったくさんざんな授賞式になってしまった。

アカデミー賞授賞式は、カンヌ映画祭のような「単なる授賞式」ではない。ハリウッドが全世界の映画ファンに向かって自分たちの作品を宣伝する貴重な機会であり、式そのものがハリウッドの(欧州映画とは違う)楽しさをアピールする、巨大なエンターテイメントであり、これは彼らの世界戦略と結び付いている。

とくに04年の授賞式は重要だ。なぜなら、日本人俳優・渡辺謙が『ラスト・サムライ』で助演男優賞を受賞する可能性が高いからだ。彼が受賞者、つまりオスカー俳優になれば、ハリウッドは今後日本の芸能界から大勢のスターをハリウッドに呼んで主演級で出演させることも容易になる。そうなれば、世界第2の映画市場である日本を、カナダのように国内市場と同様に使って、リスクヘッジをすることができる。つまり、制作者が投資家に向かって「これは日本のスターが出ている作品なので、米国内市場でコケても、日本で大ヒットが見込めるので安心して投資してほしい」と言えるようになるのだ。

渡辺謙の米映画界における立場は、日本球界から米大リーグに新人として進出した野茂英雄投手の立場にかなり似ている。どちらも米国にとって巨大な日本市場の扉を開くキーマンだ。筆者がアカデミー協会の幹部なら、大勢の同業者に呼びかけてでも、なんとしても渡辺謙に受賞させようとするだろう。

その渡辺謙が受賞するのなら、彼の写真が翌日の日本の新聞の1面に載るようにしなければならない。間違っても、彼を押しのけて、イラクで殉職した自衛官の遺影が新聞の1面に載ってはいけないのだ。そんなことになったら、日本へのPR効果は半減だ。世界でいちばんマーケティングや広告戦略に長けているハリウッドの幹部たちが、それをわからないはずはない。

【04年授賞式の日程が決まった03年4月の時点ではもちろん、まだ『ラスト・サムライ』は完成していなかった。が、助演男優賞は(主演男優賞と違って)84年制作の『キリング・フィールド』で映画初出演のカンボジア人医師が受賞するなど(話題作りのために?)非白人に幅広く開放されてきた伝統があるので、03年中にハリウッドの首脳が渡辺謙のオスカー受賞を視野に入れて対日戦略を練り始めたのは間違いない。】

●ディズニーとキッシンジャー●
授賞式の生中継を担当する米ABCの親会社はディズニーで、ディズニーの顧問には国際政治の権威、キッシンジャー元米国務長官が何年も前から就任している。米ABCやアカデミー協会の幹部はキッシンジャーに「まさか04年3月には、03年3月のような、悲惨な戦闘はありませんよね」と事前に聞いたはずだ。そうしたら、キッシンジャーが「あるよ」と答えたので、協会は授賞式の繰り上げを決めたに相違ない。

前回 述べたように、キッシンジャーは、04年3〜4月は一時的にイラクでは反米武装勢力の活動が活発化するが、その後急速に沈静化すると予測(予告)している。彼は、03年のイラク戦争の開戦日と大規模戦闘終結の日を予言して的中させた実績があるうえ、単なる学者ではなく、米国防長官の諮問機関である国防政策委員会の現役メンバー(つまりインサイダー)なので、その発言は単なる予測でなく「予告」と受け取ったほうがよかろう(04年1月4日放送のテレビ東京『日高リポート』。なぜ予測でなく「予告」なのかは、前回 の記事全文を参照)。

●3月14〜29日の死闘●
もし、異例の繰り上げがなかった場合、04年のアカデミー賞授賞式が行われたはずの日は、米国時間3月28日(日本時間29日)だ。

ということは、この日の前後が、イラクにおける反米テロ勢力掃討戦のピークであり、日本人自衛官が殉職する可能性が高いのもその頃ということになる。なぜなら、現在の日本政府、つまり小泉政権の予定では、04年3月半ばには、イラクの戦後復興を支援する陸上自衛隊の(先遣隊でなく)本隊約600人が、イラク南部のサマワに上陸することになっていて、ちょうどこの「本隊」が現地で展開を終えたあとに、アカデミー協会が授賞式の開催をいやがった日が来るからだ。

この28日前後、という「死闘」の日付を、筆者の、本年(04年)最大の予言(でなくて科学的予測)としたい。

尚、アカデミー協会が「3月第4日曜」の伝統を小幅に破って「第3日曜」(3月21日)や「第2日曜」(14日)に繰り上げるという選択をしなかったところから見て、3月14日以降はすべて危険ゾーンと見てよかろう。したがって、14〜29日にNHKが臨時ニュースを流すような事態がイラクで起きた場合は「予言的中」とお考え頂きたい。

ちなみにイラク南部には、隣国のサウジアラビアから多数のテロリストが潜入しているという情報があるので、反テロ掃討戦は国境を越えてサウジをゆるがす可能性もある。
また、同じく隣国のイランでも、04年2月20日投票の総選挙をめぐって、保守派が改革派候補の立候補を妨害するなど政治混乱(内戦)の予兆が見られるから(産経新聞04年1月13日付朝刊6面、14日付朝刊7面)混乱に乗じてイランをイラクへの出撃基地に使う(アルカイダなどの)テロリストも増える恐れがあり、掃討戦がイランに飛び火する恐れもある。
さらに、シリアにも、フセイン政権時代に造られたイラクの、毒ガスなどの大量破壊兵器(WMD)が隠匿されているという説があるので(英サンデー・テレグラフ紙04年1月25日付)米軍の攻撃はそこにもおよぶ恐れがある。

が、米軍は現地では4月中旬になると砂嵐で大規模戦闘が困難になるうえ、キッシンジャーが「4月を過ぎると、反米テロは急速に沈静化する」と「予告」していることから、中東全体が吹っ飛ぶような極端に破滅的な事態にはならない、と考えられる。

但し、小泉政権が吹っ飛ぶ可能性は十分にある。

●米大統領選も繰り上げ?●
米政権に近い保守系論客ロバート・ノバクは「異例なことに(いつもは何か月もかかる)大統領選の米民主党候補指名争いが04年は2月中にほぼ終わり、候補者が1人に絞られる」と、03年中に早々と断言している(03年8月17日放送のテレビ東京『日高リポート』)。アカデミー協会もノバクも(米民主党も?)04年3月は、オスカーどころじゃない、選挙どころじゃない「異例の月」になるという予測で一致しているようだ。

【筆者の予言(予測)が的中し3月14〜29日に悲惨な戦闘が起きる場合、それを受けた記事を配信するのは4月1日前後になる可能性がある。このため、今年04年は恒例の「エイプリルフール特集号」を配信すべきか否か悩んでいる。筆者は、自衛隊の悲劇を予測はするが、期待はしていないからだ。】

【この問題については次回以降も随時(しばしばメール版の「トップ下」のコラムでも)扱う予定です。
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 (敬称略)

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