戦後最大の試練「インドネシア石油危機」の

「あらすじ」と「配役」


シナリオと登場人物

Originally Written: Aug. 20, 1997
Last Update: Aug. 20, 1997

●朝鮮半島有事はこわくない
1997年8月現在、日本のマスコミ(寡占性メディア)はしきりに、朝鮮半島の危機を予測する言説を流しているが、実は、そんなものは、インドネシア危機に比べれば大したものではない。

北朝鮮の崩壊または暴発による危機は、何年も前から日米韓の防衛当局によって予測され、ケースバイケースで対策が立てられているので、仮に日本政府が憲法改正もせず、憲法解釈の変更もせず、さらに極端な話日米ガイドラインの見直しまでも怠ったとしても、現行の法制度と法解釈と防衛装備でなんとか対処できるのである(詳しくはのマサチューセッツ工科大学の不気味な警告を参照)。

加えて、中国が北朝鮮の現状維持を強く望んでおり、この点で日米韓と完全に思惑が一致しているのが、頼もしい限りである。北朝鮮の(戦争による)崩壊は、当然南北統一(韓国による北朝鮮の吸収)につながるから、中国にとっては最悪在韓米軍つまり「米軍」が中朝国境にまで進出してくることが覚悟しなければならない。これは中国の防衛コストの無益な増大と、対米関係の無用な緊張につながる。

これは、改革開放政策による経済発展を望む(そのためのアメリカなど西側諸国の投資を望む)中国としては絶対に避けたいところだ。一説には、中国はしばしば北朝鮮の強硬派に圧力をかけ、戦争への暴走を諌めてくれているらしい。ありがたい話だ。

だいいち、北朝鮮は日本本土で(スパイを使ってテロを行うのを別にすれば)戦争を遂行することはほとんどできないから、九州北部に住んでいない限り、ほとんどの日本国民の生活は、とくに経済面ではなんの影響も受けないと見てさしつかえない。

●石油がまったく来なくなる日!?
しかし、万が一インドネシアで内戦が起き、日米を敵対視する反政府勢力がインドネシアの領土の一部を占拠して、彼らがマラッカ海峡を機雷封鎖したらどうなるか? 間違いなく、石油危機つまり、石油の不足とその価格の高騰による経済パニックが起き、最悪二桁のインフレであなたの預金、年金、生命保険金が目減りしたり、中小企業の倒産や大企業のリストラによって、あなたの名目所得、実質所得が激減したりする恐れがある(しかも、この石油危機に来年から始まる外為法の改正が重なれば、日本経済は未曾有の大混乱に陥ることが予想される)

●ハト派が一夜にしてタカ派に変わる
しかも、この危機はあなたのハートも変えてしまう恐れがある。たとえ、あなたが、いままでどんなに平和憲法を愛し、自衛隊の海外派兵に反対する平和主義者であったとしても、このインドネシア石油危機に遭遇すれば、ほとんど一夜にして180度意見を変えてしまうはずなのだ。

これは一種のマインドコントロールかもしれないが、インドネシア石油危機は、朝鮮半島有事や湾岸戦争よりはるかにスケールが大きく、しかも、いったん起きてしまえば数年ないし10年は続くので、どんなに決意の固い「平和主義者」でも、80%以上の確率で「平和憲法」を毛嫌いするようになり、自衛隊の海外派兵に賛成するようになるのだ(戦争中国を挙げて「鬼畜米英」と叫んでいた日本国民が、敗戦から一夜あけたらコロッと変わってGive me chocolate!と叫んで米占領軍の尻を追いかけるようになったことを想起されたい。また、永年自衛隊と安保条約に反対してきた社会党が、94年夏の自民党との連立政権発足に伴い、まったく支持者にも党員に説明せずに、自衛隊・安保容認に「転向」したことも、お心にお留め置き頂きたい)

「一夜で転向」の最大の理由は、自衛隊の機雷掃海能力にある。海上自衛隊の機雷掃海部隊の能力は世界一で、万一マラッカ海峡などの重要な石油輸送航路が機雷封鎖された場合、それを除去する能力を持った軍隊は、海上自衛隊しかない(アメリカ海軍は、この点に関してだけは自衛隊より能力が低すぎて、足手まといにしかならない)

●「起きる」か「起きない」か?
そんな危機は起きない! 石油ルートに機雷が撒かれるとは限らない、と筆者に反論したい方もおられよう。しかし、インドネシア石油危機は自然現象ではない。日食や月食なら「起きる」か「起きない」かの二つに一つに決まっている。しかし、危機や内戦のような政治現象には、もう一つ「起こす」という選択肢があることを忘れてはならない。

●CIAに「投資」する人々
十数年前、当時朝日新聞の記者だった筑紫哲也氏は、次のようなことを言われた。

「『中東から日本までタンカーが石油を運んでいるのだから、このタンカーを日本の海上自衛隊が守るのは当然ではないか』という(タカ派の)人たちがいるが、非現実的な話だ。中東のホルムズ海峡にしろ東南アジアのマラッカ海峡にしろ、中東から日本までの『オイルロード』には、日本以外の国への物資を運ぶ船も多く通っている(たとえば、ペルシャ湾のホルムズ海峡はサウジアラビアからヨーロッパに輸出される原油の通り道でもある)。あたかも日本をねらい撃ちするかのように、日本向けのタンカーだけを止めるような戦闘をしかける国などありえないから、海上自衛隊の派遣は必要はなく、したがって憲法9条の改正も必要ない」

筑紫氏は(筆者とは若干意見を異にするが)平和主義の志の高いりっぱなジャーナリストだと筆者は思う。しかし、筑紫氏はこのとき、ある意味で致命的なミスを犯した。筑紫氏は、平和憲法を守り、自衛隊の海外派兵を阻止しようとする日本の平和勢力の「手の内」をすべて明かしてしまったのだ。

上記の筑紫氏の発言を、自衛隊を海外に出したいと思っている勢力、たとえば、米国防省やCIAの幹部が聞けばどう思うか?

「よしッ! 日本の石油タンカーをねらい撃ちにしてストップさせるような危機を、スパイ工作によって人工的に引き起こしてしまえ。そうすれば、日本の左翼の平和主義者どもは、われわれにひざまずき、自分の思想の誤りを認めて(第二次大戦の敗戦のときの日本国民と同じように)一夜にして転向するに違いない」

あとは「費用対効果」の問題だけである。すなわち、(ヨーロッパ向けの石油はノータッチで)日本向けの石油タンカーをストップさせるには、(中東のホルムズ海峡でなく、)

「計算」の結果、石油の高騰で米ロックフェラー系石油企業にもたらされる天文学的なは利益、西太平洋における日米主導の海上防衛体制の確立、中国海軍の封じ込めなど、副次的な利益が大きいことがわかったので、アメリカの「その筋」はすぐさま「スポンサー」を募ってひそかに、しかし大規模に10年計画で布石を打ち、伏線を張った。

そして、中国共産党大会、橋本首相の訪中、自民党総裁選と3つの重大事件の重なるの1997年9月に、日米防衛協力の指針「ガイドライン」の見直し協議の日程を故意にぶつけ、この前後に(あるいは、インドネシアのスハルト独裁政権が大統領再選をめざす98年3月に)、舞台の「本番」を迎えるように、さまざまなスパイ工作によって設定したのである。

●配役
小沢一郎・新進党党首(まもなく、遅くとも97年8月から1年以内に日本国首相になり、5年以内に憲法改正を日本国民に問う)
梶山静六・官房長官(自民党の橋本首相を支える立場だが、小沢を首相にかつぐため、97年8月10日フジテレビの番組で官房長官を辞めると発言)
亀井静香・建設大臣(小沢を首相にかつぐため、97年7月急遽、従来からの持論である創価学会批判を中止。自民党を分裂させ、自民党の一部と新進党との「保保連合」を実現する先導役を担う)
中曽根康弘(小沢首相実現にため、梶山、亀井らを説得)
菅直人(小沢のあとの首相になることが決まっている。一見反小沢的な主張を掲げながら、結果的にはほとんど同じ政策を遂行。彼には、現時点ですでに、インドネシア石油危機の際の大勢の同志の「転向」で傷付いた、日本の左翼・護憲平和勢力の心の傷をいやす役割が与えられている
メガワティ女史(反政府民主勢力。親米。スハルト現体制とイスラム反米反政府勢力がともに倒れたあと、数年後にインドネシア大統領となる予定である
インドネシア・東チモールの反政府カソリック勢力(親米。反政府暴動を起こし、インドネシア危機の発火点となる。このために、アメリカのスパイ機関は、東チモール独立運動のリーダーがノーベル平和賞を受賞できるように工作したのだ)
インドネシア・ジャワ/スマトラ島などの反政府イスラム勢力(反米。ただしCIAが裏で操っており、日本の海上自衛隊に「出番」を与えるために、マラッカ海峡に機雷を撒くことが、いまから決まっている
コーエン米国防長官(共和党員。民主党のクリントン大統領とは無関係に、共和党や保守政財界、とくにロックフェラー財閥と連絡を取り合って、米軍を指導)
ジョン・D・ロックフェラー4世(事実上、大統領に代わって米軍を指導する。小沢の著書の英語版に序文を寄稿
海上自衛隊(マラッカ海峡に「海外派兵」され、世界一の機雷掃海部隊を駆使して、機雷を除去する)
朝日新聞(第二次大戦敗戦時と同じように、一夜にして180度主張を変える日が、数年以内に来る)
産経新聞(朝日新聞に代わって一躍日本一の高級紙になる。仮にそうならなくても、朝日新聞のほうが「堕落」するので、いずれにせよ日本のメディア界に「激変」が起きることは確実である)
JスカイB(湾岸戦争の開戦独占スクープで「一流」の座に就いたCNNのように、同じマードック氏傘下のアジア向け衛星放送「スターテレビ」と連携してアジア情報を的確に伝え、インドネシア石油危機を機に一流メディアの仲間入りを果たす)
重村一・JスカイB副社長(フジテレビ時代につちかった臨時ニュースを番組の途中に差し込む「カットイン編成」のノウハウを武器に、インドネシア危機のニュースで、CNNレベルの高度な報道を行い、尊敬される)

(朝日新聞では、傘下のテレビ朝日の株主構成の激変により、97年4月以降次第に「海外派兵容認派」が力を増しつつあるように見える。この株主の問題については個人情報・極秘情報のコーナーの奥の「新聞の変更を統計で読む」を参照)

…………
役者はそろった。あとは、幕を上げるだけだ。ここで、筆者からCIAに代わって、オープニングのセリフを申し上げる。

「日本の『平和主義者』ども、無駄な抵抗はやめろ! さっさと、われわれの足元にひざまずけ、94年の社会党のように」

ただし、たすきがけ買収によって、すでにアメリカの支配下にはいっている左翼だけは転向せず、非現実的な平和主義を主張し続けるであろう。なぜなら、日本の財界の自主武装論者(兵器国産化を推進し、アメリカから防衛政策上かなり大きな自由度を得ようとする勢力。財界の主流)を牽制するためには、(アメリカでなく)日本財界を敵視する左翼的な平和主義勢力の存在が、アメリカには必要だからである。

●対策
このCIA/国防省/共和党/ロックフェラーの壮大な陰謀を阻止する方法は、もはや日本の政界・政府や市民運動はもちろん、中国政府にもインドネシア政府にもない。

筆者は野球ファンだが、野球の試合を見ていて自分のひいきチームの敵の選手がファインプレーを行ったときには、「敵ながらあっぱれ」と素直に拍手を贈ることにしている。

上記の陰謀も「あっぱれ」なもので、これを阻止する手段はまったくない。たとえば、日本から見てマラッカ海峡の手前で生産される石油があれば、上記の危機の影響を受けないので助かるわけで、しかも、まさにベトナム沖海底油田はその条件に合致するので、田中角栄政権以来、日本政府と自民党はその開発プロジェクトを推進してきた。しかし、(おそらCIAの工作による)96年の「泉井石油疑惑」によって、日本企業とベトナム政府による合弁事業には待ったがかかり、この対抗策は封じられてしまった。

また、原子力発電の普及は(中東からマラッカ海峡を通って輸入される)石油への依存度を下げることにつながるので、これも田中角栄以来日本政府と自民党によって推進されてきた。しかし、これも(ロックフェラー財閥の「民間スパイ工作」による)原発反対運動や動燃の事故(97年3月)によって推進できなくなり、対抗策とはなりえなくなった。

●たまには敵にも拍手を贈ろう
筆者は黙って、インドネシア石油危機を背景にした彼らの言い分を受け入れようと思う。ここまで、うまくやられたら、あきらめるしかないではないか。彼らが平和憲法の改正を望むなら、四の五の言わずに黙ってそれに従えばよいのだ。どうせ、机上の空論の安っぽい平和主義などには最初から勝ち目などないのだ。もともと無意味な机上の空論(平和憲法)が無意味であると証明されたとて、どうということはあるまい。

今年5月にインドネシア石油危機を予言する筆者の電子メール(このメールは「個人情報・極秘情報」のコーナーの奥にある)を受け取ったある読者から「じゃあ日本政府はどうすればいい、といった結論が含まれていない」という批判が寄せられた。

筆者はなんの実現性もない机上の空論を言う気はない。上記のような超巨大な陰謀を阻止できる政府などあるわけがない。もちろん、市民運動などは虫けら同然で、文字どおり「蟷螂の斧」である(というより、原発反対運動など日本の市民運動の大半は、すでに彼らに買収されている)。もう、政府だの市民運動だの、いかがわしいものはあてにせず、自分の暮らしは自分で守るという気概がなくては、この危機は乗り切れない。

とにかく筆者は予言した。信じるかどうかはともかく、読者諸氏は、このような政治的危機がありうるというオプションを知ったのだ。だとすれば、他人より早くインフレや不況に備えることができるだろう。あとは自分で、自分自身の資産や収入のあり方に応じて考えるしかないのだ。少なくともこの時期、預金や年金をあてにして生活するには危険である。確実に収入を得る手段(職)が必要なのだ(国民やメディアの世論が一夜に豹変したときも<、筆者の予言が「ワクチン」になるので、あまり心理的ショックを受けずに済むであろう)

いつ会社が(石油危機による不況で)倒産してもいいように、キャリアを固めておくのも一案だろう。日々ルーチンワークだけで(「終身雇用根性」で)過ごしているサラリーマンのところには、いつ破滅がやってきても不思議ではない。ときどき、あたまの中で(当面転職する意志がなくても)転職シミュレーションをやってみて、自分のPRできるキャリアは何か、考えておくのもいいだろう。

もはや、戦後50年間まったく倒産しなかった大手金融機関が(石油危機がなくても、金融ビッグバンで)つぶれるのは当たり前であり、絶対つぶれないはずの、お役所、NTT、東京電力なども必ずしも安泰ではないと想っていたほうがいいだろう。

たとえ(CIAの手違いなどで)9月にマラッカ海峡封鎖がなくても、インドネシアでは必ず来年3月までには大事件が起きる。われわれは逃げられない。覚悟されたい。

(敬称略)
 


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