プロ野球の球団を

増やす方法

 

〜シリーズ

「村上ファンド

の阪神株」

(3)

 

(Nov. 21, 2005)

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■プロ野球の球団を増やす方法〜シリーズ「村上ファンドの阪神株」(3)■

 

プロ野球の球場広告を整理統合すれば、Jリーグと同様に広告収入を増やし球団の数を増やすこともできる。

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■プロ野球の球団を増やす方法〜シリーズ「村上ファンドの阪神株」(3)■

 

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【前回「『ポスト小泉』と首相の『側近中の側近』を読む」は → こちら

 

05年11月16日に国立競技場で行われたキリンチャレンジカップ「日本代表 vs. アンゴラ代表」の試合は、日本サッカー協会(JFA)主催なので、当然JFA指定の日本代表公式スポンサー、キリンビールの広告が目立つようになっていた。TV中継(TBS)で見る限り、グランド上に見える看板の大半はキリングループのもので、ほかには日産自動車、アディダス、日本航空、ファミリーマートのロゴが散見されただけだ。

 

この看板広告は試合前やハーフタイムに流れるTVCMと連動しており、キリンは試合のTV中継にもCMを打つ。視聴者は、試合中にもハーフタイムにもキリンの広告を見るので宣伝効果は抜群だ。ハードディスクドライブ(HDD)内蔵のデジタルビデオレコーダ(DVR)などで録画してCMをスキップしながら見る視聴者が大勢いても、重要なシーンはすべてグランド上のキリンの広告の近くで行われるのだから、キリンはスキップによる損失をほとんど被らない。

 

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キリンは試合のTV中継にCMを出している以上、勝利チームに贈られる賞金、商品のほかに、解説者の出演料などの番組製作費も負担している。「キリンのお陰でできた番組」だからキリンの広告が独占的に目立つのは当然だ。それがビジネスの常識だろう。

 

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日本サッカー界は某大手広告代理店(A社とする)と提携しているので、Jリーグでもこのように特定の一流企業に広告を独占させる「公式スポンサー制」をとっている。Jリーグの場合、リーグ全体として食品はカルビー、事務機はキヤノン、金融はニコス……と計9社のみを公式スポンサーとし、Jリーグ加盟全チームの主催試合で各業種ごとに排他的独占的に宣伝をさせる(ほかに限定的な協賛企業もある。Jリーグ公式Webを参照)。

だからカルビー(ポテトチップス)の看板の横に同業他社、たとえばグリコ(ポッキー)のロゴが見えて宣伝効果が半減する(ポテトチップを食べようと思った客の気が変わる)といったビジネス上「無礼な」事態が起こることはない。

 

ところが、信じ難いほど無礼な広告ビジネスをしているプロスポーツが日本にある。ほかならぬプロ野球だ。

 

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●甲子園●

甲子園球場の広告はひどい。

バックスクリーンの上の、三菱電機のロゴ入りオーロラビジョンの左下にはパナソニックのロゴがあるので、この2大家電メーカーの広告は互いに相殺される。かつてはバックスクリーン右上にはソニーのロゴまであったが、05年現在、それはトヨタのロゴに替わっている。

 

が、左翼フェンスには、ダイハツの乗用車タントのロゴがあるので、これもトヨタと相殺だ。左翼ポール際はもっと悲惨で、大同生命と朝日生命のロゴが並んでいるうえ、左翼フェンスには明治安田生命のロゴまであるから、左翼の金本知憲外野手の守備位置周辺だけで異なる生命保険会社の広告が3つも見えることになる。

 

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いったい、どんな広告代理店が、こんな、クライアント(広告主)を人とも思わないような無礼なビジネスをしているのかと思って調べてみると、甲子園の広告を扱っているのは、白石広告という従業員わずか13人の企業だった(白石広告Web)。

 

阪神タイガースは一流の球団なのに、その本拠地球場の広告を仕切っているのは零細企業だったのだ。零細だから、世界の超一流企業トヨタに向かって「先にダイハツさんの広告が決まったのでご遠慮願います」とはとても言えない。結局、トヨタもダイハツも、朝日生命も明治安田生命も、なんでもかんでも引き受けて、広告主にほとんど効果のない広告を出させて、だまして損をさせているのだ。無礼で無責任な話だが、従業員13人の企業なら致し方あるまい。

 

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ところで、05年11月現在、タイガースの親会社である阪神電鉄の筆頭株主は元通産官僚、村上世彰(よしあき)率いるM&Aコンサルティング(通称「村上ファンド」、村上F)だ(小誌05年10月11日「阪神 vs. 村上広告代理店 〜 シリーズ『村上ファンドの阪神株』」)。阪神電鉄は、阪神電鉄の交通広告も自身が所有する阪神甲子園球場の球場広告も、一手に白石広告に任せているが、これはまともな株主の目には理不尽に映るはずだ。もし村上Fがこの点を突いて株主総会で説明を求めれば、阪神電鉄は白石広告との関係を見直さざるをえないだろう。

 

では、球界の「盟主」読売巨人軍の本拠地、東京ドームの場合はどうだろう。

 

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●東京ドーム●

大したことはない。

ドームのバックネット裏の席から内野スタンドの2階を見上げると、自動車部品メーカーの小糸製作所や曙ブレーキ、厨房機器メーカーの北沢産業など、エンドユーザーが一般消費者でない企業のロゴが多数目にはいる。外野フェンスなどと違って観客やTV視聴者の目に触れにくいところだから広告料金は安いだろうが、野球ファンのなかに自動車産業や外食サービスの関係者がとくに多い、という事情はないので効果はほとんどない。

 

いったい、この球場を担当する広告代理店(B社とする)はどうやって小糸や曙をだまくらかして……失礼、熱心に営業して、ケチケチ小銭を稼ぐような無意味な広告を受注したのか知らないが、その仕事ぶりは甲子園球場に「キリンラガービール」と「アサヒスーパードライ」の広告を同時に取って来る白石広告と大差ない。

 

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また、ドームの三塁側内野席に腰掛けてフェンスを見ると、フコク生命と明治安田生命のロゴが両方見える。

 

05年5〜6月に開催されたセパ両リーグの交流戦では、交流戦だけの勝率で優勝チームを決める制度が採用され、千葉ロッテマリーンズが優勝賞金5000万円を手にしたが、その賞金を出したのは交流戦限定の公式スポンサー、日本生命だ。

 

が、甲子園でも東京ドームでもライバル生保会社の広告が出しっぱなしだから、宣伝効果は半減だ。

 

05年11月10〜13日に東京ドームで開催されたアジアシリーズ2005の優勝賞金5000万円を出したのはテレビゲーム会社コナミ、シリーズ最優秀選手への賞品を提供したのはフォルクスワーゲンだが、ドームの外野席の上の壁には、セガ、日産自動車といったライバル企業の広告が固定されている。

 

【東京ドームの広告

「SEGA」「大和証券」の

写真と説明はこちら

 

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野球場にお客を集め、視聴者の注目を集めるのは球団である。その球団にギャラ(賞金)を提供しているのは、上記の場合、日本生命でありコナミなのだ。それなのに、なぜ両社のカネで集められた観客や視聴者を相手に明治安田生命やセガが宣伝効果をあげてしまうのだろう………単に球場を所有しているだけの「不動産屋」の発言力が不当に強く、球団の広告ビジネスを代行すべき広告代理店の力が弱いからだ。

 

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●12球団統一広告●

もし、白石広告やB社でなく、A社が球場広告を仕切ったら、どうなるだろう。

 

A社は日本代表やJリーグの公式スポンサーを募る際「アサヒビールを断ってキリンビールを選ぶ」といった具合に超一流企業を断ることも平然とやって来た。小糸や曙に無意味な広告を出させて小銭を稼ぐ、などというケチな発想も元々ない。

 

もしA社がプロ野球界の広告取り扱いに参入し、それを独占したら、おそらくセパ12球団の統一公式スポンサーを、Jリーグと同様に、1業種1社に絞り込んで募るだろう。

 

そして、それが実現した場合の宣伝効果は巨大なものとなる。

 

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たとえば、タイガースの金本がフェンスによじ登ってホームラン性の大飛球を捕る超ファインプレーを演じたとする。そのプレーは、その夜のTV各局のスポーツニュースで、また、翌朝のニュースでも何度も放送されるので、金本が跳び付いたフェンスにたまたま広告を出していた企業は、巨大な宣伝効果を得ることになる。

 

スポーツファンは歴史的な名場面は、TVニュースで何度も見るものだ。これは、05年6月8日に行われた、日本代表が06年W杯サッカー本大会出場を決めた試合(アジア地区予選、対北朝鮮戦)での、大黒将志選手の2点目のゴールシーンを、全国民が1人あたり数回ずつ見ていることを想起すれば、理解できよう。

 

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つまり、このゴールシーンは、試合の生中継を見ていた人々(関東地区の視聴率43.4%。ビデオリサーチ調べ。以下同)だけでなく、試合そのものを見ていなかった人にも見られているのだ(朝日新聞Web版05年6月9日「サッカー北朝鮮戦、視聴率は43.4% W杯アジア最終予選」)。

 

A社は、日本代表のゴールの持つ巨大な宣伝効果を知っており、日本代表の試合に看板広告を出せる公式スポンサーを絞り込むことにより、公式スポンサー数社に「極めて高い確率で、全国民が何回も見る名場面に御社の広告が映るようにできます」と売り込んで、高い広告料を取っているのだ。

 

スポンサーとしてもこういう提案は有り難い。DVRの普及により今後CMをスキップしながらTVを見る視聴者はどんどん増えるが、名場面の背後に映っている広告は絶対にスキップされず、その宣伝効果は試合結果をTVニュースで見るだけの「熱心でないファン」にまでおよぶからだ。

 

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一方、プロ野球界では、そのような宣伝効果は事前に計算できない。

 

現状では、金本がフェンス際で球史に残る大ファインプレーを演じても、その宣伝効果は、たまたまそれが行われた球場の、たまたまそのフェンスに広告を出していた企業に、まるで宝くじに当たるような低い確率で与えられるだけだ。タイガースの外野手がファインプレーを演じる確率がいちばん高い球場は甲子園だが、交流戦の導入された05年以降は、12球団の、どの本拠地でそういう名場面が生まれてもおかしくないので、甲子園球場やタイガースだけが「ウチの選手がファインプレーをやりそうだから」という理由で、高い広告料金を請求するのは不可能だ。

 

個々の球場、球団にとってはあまりに確率が低く事前に計算できないので、球場も球団も広告代理店も、だれもその効果を広告主に売り込むことができない。

 

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しかし、12球団すべての本拠地球場の広告を、1つの広告代理店、たとえばA社が統括し、統一公式スポンサー制を導入するとしたら、どうだろう。毎年プロ野球の公式戦が行われる(本拠地)球場のうちどこかで必ず外野手はファインプレーをする。もちろん、外野手の頭上を越えてスタンドに飛び込む、優勝の行方を決めるような劇的なホームランも、どこかの球場では絶対に出る。とすると、たとえば、12球団の本拠地(公式戦開催球場)すべての外野フェンスの広告がたった1社に統一されていたら、どうだろう。

 

その1社が日本生命なら、ホームラン性の大飛球をめぐる名場面は、それがホームランになる場合でも外野フライになる場合でも、必ず日本生命のロゴの近くで演じられることになる。その名場面はTVニュースで何度も流されるので、日本生命のロゴは、試合の生中継を見なかった視聴者にも、その名場面を演じた球団のファンでない人々にも印象付けられることになる。

 

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この巨大な宣伝効果は事前に計算できる。外野フェンスを1社で独占するのが無理なら、1業種1社で計4社、たとえば自動車は日産、家電はソニー、生保は日本生命、ビールはキリンといった形にし、料金を1社独占の場合の1/4にすればいい。これら公式スポンサーから得た莫大な広告料金は12球団で公平に分配してもいいし、勝率や観客動員数に応じて比例配分してもいい。いずれにせよ、その恩恵は全球団に行き渡るのだ。

 

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●16球団も可能●

この「全球団統一広告」の場合、球団数は多ければ多いほどよい。一般に球団数が増える場合、新球団は、05年に誕生した東北楽天イーグルスのように、従来球団のなかった都市を本拠地とするはずだからだ。

 

05年現在プロ野球の球団本拠地を持つ都市は札幌、仙台、所沢、東京、千葉、横浜、名古屋、西宮、広島、福岡に、オリックスバファローズの2つ本拠地のある大阪、神戸を加えて12しかない。が、新潟、金沢など13〜14番目の都市に球団ができ、仙台のイーグルスファンのような熱心な「地元ファン」が生まれると、外野を独占する「1業種1社」の公式スポンサーの宣伝効果はその分上がることになる。

 

Jリーグが90年代、毎年のようにチームを増やせた理由はここにある。

 

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04年まで日本プロ野球界は巨人の全国的な人気に依存して来た。全国的に注目される対巨人公式戦の放送権料は1試合1億円の高値でTV局に売れるから、という理由で、パ・リーグ各球団は巨人と公式戦で対戦できる交流戦の導入を望み、05年から実現させた。

 

04年、球団合併により球団総数を削減し1リーグ制に移行することを、複数の球団のオーナーが模索したのも、対巨人戦の放送権などの「分け前」をより多く得るためだ。巨人は1つしかないのだから、それと対戦する他球団の数が少なければ少ないほど、各球団の対巨人公式戦の年間試合数は増え、放送権料が多く手にはいる、と計算したのだ。

 

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が、05年、巨人の公式戦の関東地区における年間平均視聴率は、史上最低の10.2%にまで落ち込んだ(小誌前掲記事)。とくにひどかったのは05年9月13日の試合で、関東地区では5%を切り、オールスター戦以降は関東ではすべて1桁だった。ゴールデンタイムの番組としては完全に「失格」であり、連続ドラマならとっくに「打ち切り」になる数字だ(小誌前掲記事)。

 

06年以降、このように視聴率の低い巨人戦が1試合1億円で売れることは、まずありえない。今後、放送権収入は激減するので、もはや巨人以外の11球団には球団総数を減らすメリットはほとんどなくなった。だから、もう04年のような、球団削減の動きは再燃しないと見てよい。

 

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むしろ、いまは球団数を増やす好機だ。広告主を人とも思わない無礼な広告代理店を各球場から追放し、たとえ「世界のトヨタ」が相手でも堂々と断れるだけの、企業規模と実績のある、スポーツビジネスに慣れた広告代理店1社が、全球団の本拠地の広告を管理すれば、プロ野球は、極端な話、再来年(07年)からでも球団を増やせる。広告ビジネスの仕方をちょっと変えるだけで、新潟や四国に新球団が生まれるのだ。

 

そうやって球団数を16に増やし、セパ両リーグが東地区と西地区、各4球団ずつで(リーグ間、地区間の交流戦を含めた成績で)地区優勝を争い、その優勝チーム同士でリーグ優勝決定戦(プレーオフ)を戦うようにすれば、日本のプロ野球でも米大リーグのように10月のポストシーズンゲームが盛り上がり、収入も増えるはずだ(05年10月16日のパリーグ・プレーオフの視聴率は関東地区で巨人戦の年間平均より高い13.8%を記録し、プレーオフのほうが巨人戦より価値があることを示した。産経新聞05年10月18日付朝刊29面「鷹×ロッテ 巨人戦超え」)。

 

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さすれば、05年現在パ・リーグが実施している「シーズン勝率5割以下の、3位のチームがパを代表して日本シリーズに出るかもしれない」という「変則プレーオフ」はやらずに済む。

 

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 (敬称略)

 

 

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