「アメリカに棄てられた政治家たち」と表裏一体!?

中国に拾われた政治家たち

〜「チャイナゲート事件」に発展する前に考えよ〜

Originally written: April 21, 2001
Second update: April 22, 2001(「一覧表」に小池百合子ら追加。小沢官房長官、李登輝のリトマス試験紙)
Third update: April 23, 2001(小池百合子外相
Fourth Update: April 29, 2001 (「バックマージン」的中「殺到」御礼
Sixth Update: May 5, 2001 (金正男が会おうとした政治家の名
Seventh Update: June 2, 2001 (田中真紀子外相の後任


◆中国問題にかかわる政治家、諸勢力の「スタンス」一覧表
●米中軍事対決
●李登輝訪日問題
●浮かび上がった「チャイナゲート」人脈
●キックバック疑惑
●小泉内閣に小沢一郎外相
○小池百合子外相
●的中「殺到」御礼
●「山崎幹事長」は連立組み替えの布石
●民主党が負けても、自民党は割れる
●金正男が会おうとした政治家の名
○観光目的のはずない
●田中真紀子外相の後任
○「中国の手先」にすらなれない
○ドタキャンは反米以前の問題
○後任の外相も女性
○「味方ながらバカ」

◆中国問題にかかわる政治家、諸勢力の「スタンス」一覧表
日本国内 自由・人権<中国利権 自由・人権>中国利権
自民党  野中広務、河野洋平、橋本龍太郎、古賀誠、鈴木宗男 小泉純一郎、森喜朗、亀井静香、
麻生太郎
加藤紘一、山崎拓)
衛藤征士郎、平沢勝栄、塩川正十郎
公明党  神崎武法 ほとんど、なし
保守党  野田毅 小池百合子
保守系無所属    石原慎太郎
民主党  羽田孜  鳩山由紀夫、菅直人 
自由党  なし  小沢一郎 
社民党  土井たか子  なし 
共産党  おそらく、ゼロ  志位和夫 
外務省  槙田邦彦・アジア大洋州局長、
親中派(チャイナスクール) 
川島裕・事務次官 
マスコミ界 朝日新聞の一部
親北朝鮮系の左翼文化人 
産経新聞朝日新聞の一部 

         
アメリカ 政界 民主党の一部(クリントン前大統領) 共和党のほぼ全体、
民主党の一部
アメリカ マスコミ界 ワシント ンポスト (米中軍用機接触事故で、米側責任を示唆) ウォールストリートジャーナル
(同事故で米側謝罪無用を明言)
中国マスコミ界(世論)全報道機関
(すべて行政のPR機関)
なし
(中国には世論は存在しない)
中国政界改革派、保守派、解放軍 (広東省で「台湾独立なら我々も自由に」とひそかな期待)
台 湾 国民党主流派 民進党、国民党独立派
国 別 親中国派 親台湾・親日派

[註]青字は原発推進派、赤字は反原発(石油メジャー)派。

「アメリカに棄てられた政治家たち」に進む

●米中軍事対決
2000年4月1日、沖縄の嘉手納基地から飛び立った米海軍偵察機EP-3(プロペラ機)が、中国海南島付近の公海上空で、中国海軍所属のジェット戦闘機2機のスクランブルを受け、中国2機のうち1機と接触。中国機は墜落してパイロットは行方不明となり、米軍機は海南島の滑走路(空軍基地)に緊急着陸した。

中国はEP-3の乗員4名を数日抑留したのち、アメリカ政府の謝罪(に限りなく近い遺憾の意の表明)を受けて、「人質」を解放し、24名はアメリカに帰った。

「人質」を取り返したアメリカは後顧の憂いなく本音の議論を展開。曰く「事故原因がアメリカ側にあるとする中国側の主張は受け入れられない」「EP-3は低速のプロペラ機で、しかも自動操縦モードで、急な針路変更は不可能。対する中国側は2機で、はるかに高速のジェット戦闘機」。

そのうえ、衝突事故の「物証」であるEP-3の機体は中国側が海南島に「抑留」したままで、米側は事実関係を確認できない。そうした条件下で、アメリカ政府に執拗に謝罪を迫った中国政府の態度は、アメリカのみならず、東南アジア諸国や日本の政府関係者や識者に、大きな不信感と恐怖感を植え付けた。曰く「世界最大の軍事大国アメリカに対してさえ、あの傲慢さだ。まして、東南アジアの小国に対しては何をするかわらない」とか「人の足を踏んづけておいて『おまえがオレの足の下に足を入れたのが悪い』と言うに等しい」。

もちろん、相当数の(中国から円借款のキックバックをもらっていない)知識人たちがこぞって、中国の「謝罪要求」がいかに滅茶苦茶なものであるか、実感し、もはや「過去の歴史認識」の問題で中国に謝罪する必要は一切ないと感じたとしても、不思議ではない。

こんなヤクザまがいの中国の「言いがかり」に、肩を持つ報道をした、西側唯一のマスメディアが、ワシントンポストであった。同紙は、EP-3が戦闘機パイロットの「腕試し」のために急に機体を下げてぶつけた可能性がある、というのだ。

この報道(だけ)を根拠にしたわけではないが、中国は墜落して行方不明になったパイロットを「英雄扱い」し、「人質」を取って脅して獲得した「謝罪」(に限りなく近い遺憾の意)を根拠にアメリカの不当性を、マスコミ(という名の政府の宣伝機関)を使って国内に流し、反米世論を煽り立てた。

●李登輝訪日問題
この騒動の最中、台湾の李登輝・前総統が、心臓病の病気治療のため、訪日を希望して、台湾の交流協会事務所にビザを申請した。これは、何か月も前に予告されていたので、それ以来(いや、その前の、1997年頃から、李登輝が京大卒なので京大創立100周年の年に訪日するのでは、と思われた頃から)中国政府は、日本の外務省、首相官邸などに圧力をかけて(さらに、日本の親中国派の文化人や政党や外交官やマスコミには号令をかけて)「理由の如何を問わず」李登輝の訪日を阻止しようと努めた。

京大創立100周年(1997年)の頃、李登輝はまだ現役の政治家(台湾の中華民国の総統)だったので、「2つの中国は認めない」という日中共同声明を条約として遵守する義務のある日本政府が、これを拒否するのにはそれなりの理由があった。が、その後、彼が公職を離れ、国民党の党員でもなくなって、形式上純粋の私人になると、自由主義国家で、かつ法治国家である日本の場合は、彼が入国を希望したら、手続き上の問題がない限り「機械的」(官僚的)に認めなければならない。

が、中国は法治国家ではないので、政治的必要があれば、いつでも恣意的に正常な法の執行は止められ、圧力次第で理不尽な結果がもたらされる。中国政府は、国内でやっているこうした日常的な横暴を日本でも実行しようとして、日本の外務省内に「培養」してきた親中国派、通称「チャイナスクール」を使って、強引に李登輝の訪日阻止をはかった。その理由は、李登輝は政府や国民党の役職を離れたあとも、政界に隠然たる影響力を持っている「事実上の公人」なので、彼が訪日したら日中の友好関係にヒビがはいる、とか。

●浮かび上がった「チャイナゲート」人脈
この中国のヤクザまがいの言いがかりを、そのままオウム返しで……あるいは、オブラートにくるんでやんわりと……日本国内で主張し、李登輝訪日に反対する言動を見せたのが、冒頭の「一覧表」の左側の人々である。この表を「アメリカに棄てられた政治家たち」の表と見比べると、現在日本で起きている政変の背景がよくわかるであろう。

森喜朗を首相および自民党総裁の座から下ろす「森降ろし」をアメリカ(保守本流、ブッシュ共和党政権)が(CIAや日本の民主党やマスコミを使って)仕掛けたのは、森が憎かったからでなく、森の背後にいる、2つの表の左側の連中(とくに野中広務・前自民党幹事長や、公明党の一部)を追い出したかったからにほかならない。「こいつら」は、高度成長期と冷戦時代とバブル経済を終えた日本で何をなすべきかまったくわかっておらず、とっくに「用済み」の政治家のくせに、中国や北朝鮮やアメリカの非主流派にすがって延命をはかり、不良債権処理をやればさっさと潰れてしまうはずのゼネコンや金融機関を血税の投入で温存して、自分たちの票田にしているのだ。

もはや八方ふさがりの彼ら、とくに「野中自民党」は「溺れる者は藁をもつかむ」の状態である。ロシアが北方領土の4島返還はイヤダと言えば「2島でいい」と譲り、北朝鮮には「拉致疑惑」棚上げでコメの無償援助を与えるも軍縮等の目に見える成果は一切なく、中国から李登輝訪日問題に関して日本の出入国に関する法治システムを捻じ曲げろと言われれば、それにも従おうとする。もし、近い将来、アメリカ政府が日米同盟再構築のために、有事法制や憲法解釈の変更を求めた場合、野中自民党が政権を握っていると、創価学会婦人部の平和ヒステリーや中国政府のキックバック攻勢に負けて、何をするかわからない。すでに野中は「平和憲法擁護」などと「公明党好み」「中国寄り」の発言をしており、このままでは、アメリカの極東での安全保障政策はメチャメチャにされる恐れがある……。

筆者がもしいま、アメリカのブッシュ共和党政権任命のCIA長官、つまり生粋の米保守本流の防諜担当者なら、日本に大量の人員と資金を送り込んでスキャンダルを摘発し、あるいはでっち上げ、上の表の左側にいる連中を、ウォーターゲート事件ならぬ「チャイナゲート事件」を起こして「始末」したいと考えるだろう。

もともと、日本が「過去の侵略戦争」問題で罵られながら、中国に累計何兆円もの円借款を与えて援助してきたことに関しては、まったく日本の国益にならない以上、円借款供与決定にかかわる日本の政治家、外交官、ジャーナリストらがキックバックをもらっているに相違ない、という噂はずっとあった(2001年4月27日深夜放送のテレビ朝日『朝まで生テレビ』のに出演した自由党、自民党、保守党の代議士は「バックマージン」という言葉を使ってこの疑惑の存在を強く示唆した)

●キックバック疑惑
たとえば、外貨、資本の足りない貧しい国、中国では日本から100億円の円借款の融資を受けると、それを空港建設などのインフラ整備に使う。が、中国の空港はみな軍民共用なので、空港はすべて空軍基地であり、円借款は軍事援助なのだが、自民党はもちろん、本来「平和主義者」のはずの社民党の政治家や左翼文化人までもが、なんの反対も表明しない。そこで、当然、彼らは中国におもねって利益を得ているに相違ない、という噂が立つ。100億円のうち5%がキックバックとして日本に還流してくれば、5億円である。自民党、公明党、社民党の幹部や外務省のアジア大洋州局長、平和主義者のジャーナリストら10人で山分けしても、1人5000万円である。

もちろん、こんな贈収賄事件を立証する証拠はない。もしかすると、いや、たぶん事実もない。が、証拠や事実がなくても、こういう噂の対象になっている政治家らを「始末」するのはさして難しくない。なぜなら、東京地検がだめでも、国税庁が使えるからである。

日本の課税基準は実はかなりあいまいな部分があるので恣意的な解釈が可能だ。かつての大蔵省はこの基準のあいまいさをフルに活用。大蔵省の強大な権限を制限する行革法案を準備している国会議員をみつけようものなら「脱税の疑いでただちに税務調査を」と課税基準を急に厳格に解釈して適用し、政治家を恫喝していた。

1993年、当時の自民党の実力者、金丸信衆議院議員が、こんにちの野中のように北朝鮮に対してこびへつらい、北朝鮮の人権弾圧や核兵器開発を不問にして(キックバック目当てが見え見えの)援助や賠償(植民地支配のつぐない)を渡そうと画策したとき、ついにアメリカは「堪忍袋の緒が切れた」のである。

それまで、何度も金権スキャンダルのたびに関与が取りざたされながら巧妙に検察、警察の捜査を逃れてきた金丸だったが、このときは初めて国税庁によって「脱税容疑」を問われたのだ(これは、生涯に何度も殺人や麻薬犯罪への関与を疑われながら捜査を逃れてきたアル・カポネが、最後に「脱税」で刑務所送りになったのに酷似している)。

つまり、「キックバック疑惑」という記事が週刊誌を賑わし、野中の周辺や社民党本部に国税庁査察官(いわゆる「マルサ」の男と女)が出入りするだけで、もう十分なのだ。それだけで「チャイナゲート事件」になるのだ(つまり、証拠や事実があれば東京地検、なければCIAと国税庁の出番なのである。どっちにしろ、結果は同じだ。「森降ろし」の一環として仕掛けられた、森首相の側近、中川秀直官房長官の「愛人覚醒剤疑惑」では、写真週刊誌が民放TVに流した怪しげな盗聴テープ以外、なんらまともな証拠もなかったのに、官房長官が辞任に追い込まれたことを想起されたい)。

この記事を書いているいま(2001年4月21日)「ポスト森」の自民党総裁はまだ決まらないが、どんな形になるにせよ、上の表の左側の連中が(自民党内ではともかく)国政の場で力を持てないようにする、ということはすでに、CIAのみならず、ホワイハウスをも含めたアメリカ政界保守本流の中枢において、決定されている、と筆者は思う。

だからこそ、総裁選の最中に、小泉純一郎は公明党の連立を見直し「パーシャル(部分)連合」あるいは「救国内閣」「超派閥、無派閥で若手起用」と言ったのだ。自民党の総裁になれば、幹事長以下党執行部の主要ポストは、上の表の右側のメンバーで占めるだろうし、公明党との連立は見直されるだろう。派閥均衡人事はなくなり、最大派閥の橋本派は(執行部に叛旗を翻した若手議員を除いて)党、政府の主要ポストを1つも取れない「日干し」状態に追い込まれるかもしれない。

保守良識派の代表的論客である、中西輝政・京大教授や評論家の岡崎久彦・元外務省情報局長らは、小泉の外交面について「保守党の政治家としてふさわしくない」とか「外交政策がまだはっきりしない」とか批判する。たしかに、李登輝訪日問題では、他の総裁候補、亀井静香や麻生太郎のほうがはっきりと即座に「受け入れ」を表明したのに、小泉はやや出遅れた(が、慎重論に終始した橋本龍太郎よりはましだった)。小泉は外交政策には優れたブレーンを持つ必要があり、そうでないと、この点には森喜朗にすら劣る恐れもある。中西、岡崎の懸念はもっともだ。

●小泉内閣に小沢一郎外相
が、心配にはおよばない。小泉政権の外務大臣には鳩山由紀夫小沢一郎(か、民主党、自由党の者)が就任するのだから。これは、小泉が自民党総裁として首相になる場合でも、小泉新党の党首として首相になる場合でも、変わるまい。

(これも、一種の予言……でなくて科学的予測として申し上げるが、小泉首相、小沢官房長官、鳩山由紀夫外相で、国会運営のかなめ、すなわち「自民党なら」幹事長的な役割を菅直人、加藤紘一、山崎拓らが担当し、野中=橋本派と公明党、社民党は半永久的に野党にとどめ置く、というのがちいばんありそうな線かな、と筆者は思う。
これは、マスコミ界の永田町ウォッチャーや「番記者」らの常識には反するだろうが、彼ら「プロ」は自民党の派閥政治に詳しくなりすぎていて、永田町のことが永田町の中(あるいは日本の中)だけで決まると思い込んでいる。が、インドネシアのスハルト体制の崩壊予測で筆者が示したように、その国の政治がその国の国内で完結していると思うのは間違いである。
 台湾の李登輝前総統はアメリカの保守本流と連携して、自民党総裁選にぶつけて自身の訪日問題を惹起し、言わば「だれが親中派か」が一目でわかるリトマス試験紙を出したのだ。やはり彼は京大卒の「日本人」だけあって、日本政界には相当に詳しく、なかなかしたたかな政治家である。これで、橋本、河野、羽田孜、社民党、公明党らがみごとに「あぶり出された」ではないか。かくして、日米同盟の再構築や戦域ミサイル防衛の配備の足かせになりかねない連中がはっきりした。
 ちなみに、4月24日は、自民党の新総裁が決まると同時に、アメリカ政府が台湾へのイージス艦などの高性能武器売却の可否、品目を決める日でもある。

鳩山、小沢は、当初から一貫して李登輝訪日を支持しており、彼らが政権にあれば、外務省のチャイナスクールはほとんど何もできないか「処分」されていたに相違ない(当初、李登輝訪日問題に明白な賛成の意思表示をしなかった小泉が、のちに賛成に踏み込んだのは、盟友の加藤紘一や保守党の小池百合子を通じて、鳩山、小沢の説得を受け入れたからにほかなるまい)。

脱税容疑でぶち込まれたくない人はいまのうちに、政界やマスコミ界の第一線を退いたほうがいい。すでに、この「チャイナゲート」の前哨戦として、外務省ノンキャリアの「官邸機密費スキャンダル」が惹起されたのだから、あとは時間の問題ではないか。

○小池百合子・外務大臣vs.槙田邦彦・外務省アジア局長
いま、鳩山か小沢が外務大臣と書いたが、もう1人、興味深い外相候補がいるので紹介しておきたい。
まず、小泉純一郎は、今回の総裁選挙に臨むにあたって森派(清和会)を離脱したが、2000年4月、小渕恵三前首相の危篤の「突発事態」を受けて、森喜朗が総理総裁になった際「あなたは、国民から見て不透明な、密室で選ばれた印象があるので、思い切った組閣で国民の支持と理解を得る必要がある。ついては、閣僚の3分の1、5名前後を女性にせよ」と組閣試案を持ってきたそうである。

総裁選の前段階の地方での予備選で、自分の優位が明らかになるにつれ、小泉は、自分が総理総裁になった場合の組閣について、「女性は複数」と述べるようになった。では。その女性閣僚とはだれなのか?……よく言われているのは、総裁選で応援してくれた田中真紀子・元科学技術庁長官の抜擢や、川口順子・環境大臣の留任であるが、筆者は「がらっと変わった」ことを印象付ける方法として、かなり若手の、小池百合子・外務大臣(保守党)や高市早苗・文部大臣(森派)もあるかな、と思っている。

実は、この小池は「上の表」で明らかなように、李登輝訪日問題が惹起されて以来、自由と人権を重視する保守本流の王道に則って、李登輝訪日実現を求める、自民、自由、民主、保守の各党国会議員からなる超党派の団体の代表世話人を、自民党無派閥の平沢勝栄とともに努めている。

その彼女が現在いちばん声高に主張していることは、「李訪日問題での混乱と、日本外交の弱腰の元凶は、外務省の一局長にすぎない槙田邦彦(アジア大洋州局長)が、中国政府の意を受けて、日本の首相の意向を無視して振る舞ったから」なので、「槙田をクビにしろ」ということである。 <P> もしも、小池が外相になれば、外務省内の親中国派「チャイナスクール」の影響力は決定的に低下する。「複数の女性閣僚起用」に意欲を示す小泉なら、やってみる価値は十分にあるのではないか。しかも、小池を中心とする「李登輝訪日超党派議員連」は、自民、自由、民主、保守の各党にまたがっていて、公明党も、自民党の親中国派も含んでいないので、「近い将来」連立の組み替えをやる際にも使える人脈となるのだから。

●的中「殺到」御礼
本誌既報(2001年3月17日の「米国ご指名 小泉首相」)のとおり、4月26日、小泉純一郎が首相に就任した。

お蔭様で、4月22日から28日までの、この1週間あまり、通常(1週間4000〜5000件)の50%アップ(同7500以上)のアクセスが殺到し、また筆写の「予測的中」を評価する多数のファンメールを頂いた。そのすべてに返事をお書きするのが物理的に不可能なので、この場を借りて、御礼申し上げたい。

「ご声援ありがとうございました」。m(_ _)m

さて、本誌と異なり、既存の大手マスコミの(自称)プロの記者たちは、この予測に失敗した。たとえば、共同通信社のベテラン記者らは ボロ負け つまり、「意外」だったことを自ら認めている。 
情けない奴ら だ。こんなことは本誌の読者にとっては予想外でもなんでもないであろう。1か月以上、5週間も前から 予告済み だったのだから。

これは、各マスメディアの記者たちの「愛国心」が災いしたのだろう。たとえば、ウクライナの政局について、現在の朝日新聞(2001年4月29日付朝刊6面)は、ウクライナでは、親欧米派の内閣が、親ロシア派の大統領との政争に敗れて総辞職したと報じた。つまり、ウクライナ国内の政局がウクライナ国民だけの意志では決まらず、国外の投資、援助、外交、そして当然のことながら親欧米派(CIA)や親ロシア(旧KGB)のスパイ工作の影響を強く受けることを示唆した。ならば、なぜ、日本の政局が外国の影響なしに決まると決め付け、自民党総裁選の最中、各派閥事務所や国内(永田町界隈)の料亭の取材に明け暮れたのか。ウクライナの政治家は外国の影響は受けるが、日本の政治家は(ゼネンコンの献金は受けても)外国の影響は受けるはずがない……というのは、あまりに過剰な、ニッポン民族優越主義ではないか。

4月24日に本選を迎えた、森喜朗首相/自民党総裁の退陣を受けての今回の自民党総裁選では、自民党の外の勢力、すなわちマスコミ、公明党は言うにおよばず、台湾、中国、アメリカの政府までもが、露骨に「介入」した。折りしも惹起された台湾の李登輝前総統の訪日問題や、ブッシュ共和党政権の発足で対日経済政策を180度転換したアメリカ政府の(景気回復でなく)構造改革(不良債権処理)の要求への回答を、自民党総裁選に立候補した各候補が明言せざるをえなかったからである。

つまり、これはもう国政局ではなく、国政局なのだ。にもかかわらず、(自称)プロの記者たちは、こうした国の重大な動きを無視した、幼稚な取材活動に終始した。総裁選中、小泉が「脱派閥」の公約を掲げたにもかかわらず、本選間際に総裁候補の1人亀井静香の属する江藤・亀井派と小泉が属していた森派の幹部が会合した、というだけのささいな事実を取り上げて軽々しく「相変わらず派閥次元の動き」と断じ、小泉から亀井に総裁当選後の幹事長ポスト任命が約束されたなどとの「ゲスのかんぐり」を堂々と報じる新聞も少なくなかった。

しかし、総裁選終了後の党役員人事と閣僚人事を見れば明らかなように、この間小泉は派閥次元の動きをまったくしていない。むしろ「相変わらず派閥次元」だったのは、自称プロの記者どものほうだったのだ。誤報を通り越して、これは「無礼」と呼んでいいだろう。

●「山崎幹事長」は連立組み替えへの布石
巷に「亀井幹事長」説が飛び交う中、筆者は、本誌上で「幹事長は加藤紘一か山崎拓」と予測し、これも的中させた。
理由はもちろん、政界再編である。すでに本誌でも取り上げたように、昨年(2000年)秋のいわゆる「加藤政局」に先立って、ブッシュ共和党大統領候補の経済ブレーンが来日。これを民主党の枝野幸男、仙石由人らとともに、自民党の加藤紘一、山崎拓が囲んで勉強会を開き、政策の一致を確認している。他方、総裁選中に小泉は、靖国神社公式参拝と解釈改憲による集団的自衛権の行使容認および憲法改正の必要性を訴え、公明党、保守党との政策の不一致を顕在化させた(民主党の鳩山由紀夫党首は2000年にすでに集団的自衛権の容認を表明しており、自由党の小沢一郎党首はこの2001年4月に小泉の靖国参拝表明を「当然のこと」と歓迎した)。

小泉内閣発足後のテレビ報道の中で、あるベテラン自民党国会議員が「将来、いまの野党と連携するための人事だ」と吐き棄てるように言っていた。筆者は吐き棄てる気はなく、歓迎するつもりだが、結末の予測は筆者もこの議員も同じだ。

つまり、小泉自民党が公明党を切り離して、民主党(の一部)や自由党との連立政権樹立に踏み切ることは、米国ご指名の「既定路線」であり、そのためには絶対に幹事長、すなわち選挙と国会対策の最高責任者は、民主党とパイプのある者、すなわち加藤か山崎でなければならないのだ(「亀井幹事長」などという記事を書いた記者は、即刻辞表を出して、政治部から出て行ってもらいたい)。

さて、この山崎拓・新幹事長。就任と同時に折りよく『憲法改正』という題の本を出す。彼は言う

「国会の憲法調査会での意見集約を行う際、改正の是非で政界再編が起こる可能性は否定できない」(産経新聞2001年4月29日付朝刊2面)。

●民主党が負けても、自民党は割れる
小泉新総裁が改革を掲げて勝ったのはいいが、このまま自公保の枠組みが維持されて参院選に勝利したら、どうしよう(たぶんそうなる)? あるいは、民主党が惨敗してしまったら、どうしよう(こちらも、たぶんそうなる)?……などと心配している、伝統的「反自民」や心情左翼の皆さん、ご心配にはおよびません。参院選で勝つのは、自民党でも公明党でもなく野中前幹事長でもなく、小泉だ。上の表の左側の連中が、そう遠くない将来に権力の中枢から追い出されることは間違いない。

「小池百合子外相」(による外務省の槙田アジア大洋州局長の更迭)はちょっと遠くなったが、鳩山由紀夫や小沢一郎が外相や官房長官や「与党の」幹事長になる日はそう遠くない。近々、連立の組み替えは必ずある。それは山崎が示唆するように、選挙の勝敗ばかりでなく、憲法改正問題を契機として実行することも可能なのだ(おそらく、小泉は「衆・参同時選挙」ではなく、

自・公・保で参院選 → 憲法調査会の意見集約 → 政界再編/連立組み替え → 自・民・由で衆院選」

のほうを選ぶのではないか。郵政民営化や構造改革について正反対の考えの候補者が「自民党公認」という同じ看板で選挙に出てくる「呉越同舟」状態では、有権者は選択に困る。参院選はもともと日程が決まっているから仕方ないが、解散時期を選べる衆院選まで、政界再編の枠組みを示さずに敢えて行う必要はあるまい。「呉越同舟」状態の温存は、改革は進まず、不毛な現状維持になってしまう)。

いまの日本の政局は、小泉主導でも野中主導でもなく、アメリカ共和党主導なのだから。

●金正男が会おうとした政治家の名
前回、小泉首相は「憲法調査会での意見集約」を使って政界再編(連立組み替え)をし、そのうえで衆議院の解散、総選挙」をするのではないか、と述べた。が、「憲法調査会」は5年間かけて意見集約をすることになっており、2001年5月現在、審議はまだ3年半も残っているので、最終報告書がまとまるのを待っていると、日韓台へのTMD配備と日米同盟の再構築で東アジア戦略を立て直そうとしている、現在のアメリカの共和党政権にとっては時間がかかりすぎる。

それに、ブッシュ政権の1期目の任期が終わるまであと3年半、再選へ向けた選挙戦が始まるまで2年半である。前任者のクリントン民主党政権は、技術的に十分可能なNMD、TMDを無謀な軍拡競争(軍需産業の単なる金儲け)と国民に誤解させるべく、意識的に技術検証実験のレベルを下げたり、日程を遅らせたりしたし、また日本を軽視して中国に接近し、北朝鮮のテロやミサイル拡散を容認してKEDOの原発建設を進めるなど、共和党と国防総省がまじめに進めようとしていた防衛政策を、くだらぬ小細工で妨害しようという意図が鮮明であった。

とすれば、ブッシュJr.現大統領は、次の大統領選挙が始まるまでに、日韓台との同盟構築と、TMD、NMDの開発配備を、たとえ2004年の大統領選挙で民主党候補(ヒラリー・クリントン?)が勝っても「絶対に後戻りできないレベル」まで進める必要がある。

そこで、筆者は、アメリカ政府は近々(CIAと)日本の国税庁を使って、上の表の左側の政治家を脱税容疑で「始末」するだろうと予測した。

が、どうやら「もっといい方法がある」とCIAや米国防情報部(DIA)は判断したようだ。

2001年5月1日、北朝鮮の金正日総書記の長男、金正男(29歳)がドミニカ共和国の偽造旅券を使って、女性2人(年齢は33歳と30歳)、男児1人(4歳)を伴って、観光目的と称して成田空港から入国しようとして入管当局に摘発される事件が発生した。

その偽造旅券の記録から、金正男は過去に2回日本入国に成功していることも判明したため、警察当局は「悪質な常習犯として刑事告発すべき」と主張したし、北朝鮮当局に拉致された被害者の家族も「身柄を抑えて、拉致被害者解放の取引材料にせよ」との声をあげはじめた。

当初、入管や外務省はこの問題を隠していたが、マスコミにこの問題が流れてしまったので「停滞している日朝交渉に影響を与えないため」あるいは「北朝鮮を訪問する日本人が報復で拉致されないため」と称して、身元確認をあいまいにしたまま国外退去で早期決着、つまり、台湾の李登輝前総統の訪日ビザ申請のときの外務省(槙田アジア大洋州局長)の対応と同様「なかったこと」にしようとした。そして、李登輝訪日問題のときと違って、首相が原則に立った裁断をしなかったため、今度は一転して「なかったこと」になってしまった。

○観光目的のはずない
北朝鮮問題の専門家として知られる小此木政夫慶大教授は、事件発覚後テレビ朝日の『ニュースステーション』に出演し、来日目的が観光と言っているのは、以外にほんとうなのではないか、と解説した。いわゆるスパイ工作なら部下にやらせればいいわけで、北朝鮮の次期最高指導者(金正日の後継者)と目される「ロイヤルファミリー」の一員がやることではない。むしろ、近々「後継者」として正式に決まってしまうと、外交上の「公式訪問」以外では日本に来られなくなるから「いまのうちにディズニーランドなどに行っておこう」と考えても不思議はなかろうというのだ。なるほど、妻と息子と、妻の姉妹か友人を連れて「せめていまのうちに家族サービスを」というのは、なんとなくわかる。

が、金正男は結婚していないから2人の女性は妻ではない。もちろん子供もいないはずで、実は4歳の男児は彼の息子ではなく弟(金正日の隠し子)という説のあることを、産経新聞(5月5日付朝刊23面)が報じた。

もともと「家族連れを装う」のはスパイの世界では常套手段で、最近では写真週刊誌の「ベテランカメラマン+若い女性記者」が不倫カップルを装って芸能人のホテル密会をフォーカスするのも珍しくない。小此木の解説は「スパイ工作はない、という前提で考える」という日本の「上品な」政治学者が陥りがちな「机上の空論主義」の弊害を露骨に体現したものと言えよう。

部下のスパイではなく、最高指導者の身内(息子などの家族)でなければできない工作は、厳然とある。キューバ危機の際、アメリカのジョン・F・ケネディ大統領がソ連と裏取引してミサイル危機の収拾をはかった際、ソ連大使との交渉にはもっとも信頼できる人物、弟のロバート・ケネディ司法長官をあてている。

つまり、この金正日の長男の来日目的は、日本政界との「裏取引」であったことは容易に想像がつく。上記の産経新聞は「国会議員と面会約束」があったことを指摘、また「観光」先もディズニーランドではなく「関西」にできたばかりのユニバーサルスタジオジャパン(USJ)であると指摘している。

これは非常に興味深い指摘である。産経は、「故金日成主席、金正日総書記とも『旧知の人物』」は、小泉首相や田中真紀子新外相や国民に知られずに、金正日の「特使」と会って、なんらかの交渉をする意志があったという趣旨のことを書いている(産経新聞は「裏取引」は金銭がらみと述べているが、筆者は拉致疑惑がらみもあったと思う。すなわち、拉致事件被害者を、某政治家=Nのコネで何人か「釈放」してみせてNの功績を作り、日本政界でのNの復権をはかる方法を模索する、というものだったのではあるまいか)。

さらに産経は、同じ紙面のロンドン特派員の報告の中で、過去2回の来日が摘発されず、今回摘発に至ったのは「CIAが情報提供したから」とも述べている。

これは何を意味するのかというと、過去2回の来日時と今回の来日時の、外務省内の勢力地図の変化を意味するのだ。つまり、これまでは、経世会(橋本派)が北朝鮮外交を牛耳っていたので、見え見えの偽造旅券(生年月日欄に堂々と金正男の誕生日を書いてある)でも入管はフリーパスだったが、4月の政権交代で小泉内閣ができ、上の表の左側の連中の発言力が落ちたから、CIAが情報を送って日本の入管に摘発させたということであろう。

さすがは、テロ国家北朝鮮の「次期最高指導者」だけのことはある。大阪(のUSJ)に行く予定だったのを、とっさに東京ディズニーランドと言い換え、自分が関西で会うはずだった代議士N(選挙区は関西)に疑惑がおよぶのを避けようとしたあたりは、みごとである。すくなくとも朝日新聞やニュースステーションや小此木教授をだますことには成功したのだから。Nや外務省内にまだ残存している親北朝鮮派(兼親中国=河野洋平派、兼ロシア=鈴木宗男派)は、(ゲスの勘ぐりかもしれないが)マスコミの非難を浴びずに済んでよかった、と思っていよう。現在の入管法を使えば最長60日の身柄拘束が可能だったのだから、CIAが日本の警察当局と組んで、捜査の過程でチャイナゲートならぬコリアゲート人脈(といっても両人脈の顔ぶれはほとんど同じ)をあぶり出し「粛清」するつもりだったのは間違いないだけに、Nはこれで首の皮一枚残った、と思っていよう。

が、そうは問屋が卸さない。上記の産経の記事は、今後「故金日成主席の時代から続いている金銭の絡む『取引』」の内容が今後表面化すれば「日本の政界にも波及する可能性がある」と示唆している。これは重要な示唆だ。

親中派の筆頭であった槙田アジア大洋州局長が、李登輝訪日問題で超党派の国会議員グループから更迭要求を突きつけられて以来、現在の外務省はかつてのように親中・朝・露派で一本化してはいない。だからこそ今回の摘発に至ったわけで、本件が「これにて一件落着」になることはない、と筆者は思う。

もし、一件落着にしてしまったら、 「アメリカ共和党主導」で誕生した小泉政権は、CIAや米国防総省のサポートを受けられず(橋本派支配を許した森喜朗政権や、中国海軍の侵略に弱腰だったフィリピンのエストラダ政権のように)早期退陣に追い込まれる恐れがある。そうでなくとも、連休明けに再開される国会で、野党(自由党、民主党など李登輝訪日問題で槙田局長を糾弾したのと同じメンバー)から厳しく追及され「同罪」になってしまう。

今回、小泉政権がいったんは、拉致疑惑解明の取引に使える「外交カード」を入手しながらみすみす放棄したことは、誠にはがゆい限りで、筆者は「やっぱり首相は石原慎太郎でないとダメか」と思ったし、CIAはおそらく「小沢一郎のほうがいい」と思い直しただろう。

が、「摘発」だけでもできたことは小泉政権発足(旧経世会=橋本派支配の終焉)に伴う大きな進歩だし、摘発ができたのなら、「裏取引」の内容も暴露できる可能性は十分にあるわけで、今後「ロッキード/リクルート事件並み」の大型スキャンダルで政界再編とNの政界追放があると期待できる。小泉は北朝鮮との取引には失敗したが、Nとの取引(たとえばNの引退)には成功した可能性もあり、今後のNやその側近の動向は注目される。

●田中真紀子外相の後任
実は、あるファンの方から2001年5月13日のファンメールで「田中真紀子外相と外務省について書いてほしい」という御要望を頂いた。その趣旨は、田中は中国の手先であって、反中国の対米対決姿勢を示すために、米国土ミサイル防衛構想(NMD)の説明のためにブッシュ大統領説の親書を携えて来日したアーミテージ国務副長官との会談をキャンセルしたのではないか、というものであった。

○「中国の手先」にすらなれない
結論を先に申し上げれば、そういう指摘は「はずれ」である。
まず、中国の立場に立って考えた場合に、田中は中国の手先になりえない。理由は、その言動が極度に不安定で、外相更迭が時間の問題であるばかりでなく、今後日本の外交や内政に影響力を持つことも期待できない(彼女は派閥を率いていないし、「子分」になりそうな代議士も官僚もいない)。そんなやつを「雇う」ほど中国政府はバカではない。

むしろ、中国の対日工作で必要なのは、小泉内閣が「反中国親台湾」なら、そのようにしかと見定めて、そのうえで日中の利害の一致点を探ることだ。たとえば、「反中国派」の代表選手である石原慎太郎都知事は、日本の航空宇宙産業の再活性化には、アメリカとの関係ばかり見ずに、欧州の航空宇宙(軍需)産業と連携して共同開発をして、優秀な中型旅客機とされるYS11の復活をはかってはどうか、と提唱している(産経新聞の「日本よ」)。たとえば、中国の国防産業が「日中で旅客機の共同開発を」と持ちかければ、日本の保守政財界内部、あるいは日米関係に重大なくさびを打ち込むことができるかもしれない。

が、それには、交渉窓口になるにんげんが「まとも」である必要がある。たとえば、野中広務前自民党幹事長や橋本龍太郎元首相のような、橋本派(平成研究会)の穏健な保守政治家なら適任だろう。田中は、親中国派/中国の手先としての「王座」を橋本派と張り合っているが、外務官僚をだれ1人として味方にできないような無能者が、自民党幹事長や首相を経験した大物政治家の「集団」に対抗できるはずはない。

田中真紀子は、非力で無能で、中国から見てなんの役にも立たないので、筆者は彼女を上の表の「左側」(親中派)に分類する必要を感じない。

○ドタキャンは反米以前の問題
アーミテージとの会談キャンセルも、彼女の無能ぶりをよく示している。
彼女は当初(5月14日)、国会(民主党の岡田克也成長会長)でこの件(アメリカのミサイル防衛構想)を追求された際、答えに窮し「事務方から中身を聞いていない」といったんは答えた。ところが、その後、実は事前に報告を受けたことを忘れていたと答弁を修正した。田中によれば、分厚い資料の冊子を渡されていたが、彼女がほしかったのは内容をかいつまんだメモだった、のだそうである。

このカラクリを説明するとこうなる。外務官僚がブリーフィング用に用意した資料冊子の表紙や目次には、おそらくNMDという言葉がなかったのだ。なぜだ?……理由は簡単。ブッシュ共和党政権は、公式にはNMDという言葉を使っていないからである。

NMDは朝日新聞をはじめとする世界中のリベラルな、つまり親中国的なメディアによって、批判されている。しかし、国防総省のミサイル防衛政策立案の中核であるネットアセスメント室の報告書(たとえば1999年に作成された『Asia 2025』)には、NMDという言葉はない。あるのは、ただ弾道ミサイル防衛(BMD)のみである(BMDのうち、アメリカ軍の駐留する、日本や欧州など「出先」の戦域で展開するものは戦域ミサイル防衛、略してTMDと呼び、この言葉は90年代初めから使われている)。

1999年当時、アメリカ大統領は民主党のビル・クリントンだったが、国防長官は共和党のコーエンだった。このため、国防総省はBMDとTMDしか研究していないのに、大統領のところに研究結果が上がると、突如としてNMDという奇妙な概念が付け加えられた。曰く、アメリカは、本土を防衛するには、TMDより技術レベルの高い特別なミサイル防衛システム、NMDによって守り、同盟国についてはほどほどの技術システム(TMD)で守る、というものである。日欧の同盟国が聞けば「アメリカだけが安全になるための構想」と反発されるのは必至だ。クリントンは卑劣にも、本件の研究を担当する「事務方」の国防総省(ネットアセスメント室)がひとことも言っていないNMDなどというアメリカ一国主義のエゴイスティックな概念をでっちあげ、わざと同盟国の反発を誘発して、ミサイル防衛構想全体の挫折をねらったのだ。

おまけに、すでに本コーナーで述べたとおり、クリントンはわざとBMD(NMD)実現のための技術の実証試験のレベルを下げ、日程を遅らせることによって、それがいかにも技術的に実現し難い(単なる軍需産業の金儲けの手段にしかならない)ものであるかのように、偽装することに成功した(このあまりに卑劣な妨害は、クリントンが軍の最高司令官として国防政策を指揮するのを「制限」しようと試みた、共和党への報復、という側面も否定できまい。クリントンは1990年代後半にはセックススキャンダルの追求で、政治的に「死に体」寸前まで行ったが、本誌既報のとおり、スキャンダル追求の急先鋒だったケネス・スター独立検察官と、ユタ州選出上院議員のオリン・ハッチ上院司法委員長はともに共和党員であった。筆者の「報復」説はともかく、これら共和党員の名前は覚えておいてほしい)。

こういう「中国の手先」クリントンの悪質な妨害工作の結果を真に受けて「NMDは机上の空論」とか「新たな軍拡を招くだけ」とか断じるのは、ジャーナリストや学者としては恥ずべきことだが、朝日新聞に限らず世界中の多数の「リベラル」なメディアや、「ハト派」の政治家がこれに同調しているのは嘆かわしい限りだ。

さて、日米同盟を機軸と考える日本の外務省の幹部は、当然のことながら『Asia 2025』ぐらいは読んでいるし、外相に報告を上げる際の資料にNMDなどという非公式な言葉は使うまい。外相が「事務方」から受け取った資料冊子の表紙や目次にはおそらくBMDの文字はあっただろうが、NMDの文字はなかったに相違ない。田中はそういう表紙や目次を見て「この資料には、いまマスコミで話題のNMDについては書いてない」と判断し、読むのをやめたのだ。そして「アーミテージがNMD関連の大統領親書を携えて来るというのに、『事務方』は何も教えてくれないので、会談に出たら恥をかく」とパニックに陥り、外務省を逃げ出して国会図書館にこもっていた、というのが真相である。だからこそ国会で、いったん「事前には報告を受けていなかった」と述べ、そのあとで「報告を受けていた(けど忘れていた)」と修正したのだ。NMDの「N」がなくても、BMDの中に「MD」つまり「ミサイル防衛」という言葉はあるのだから、なにも難しい軍事専門書など読まずとも、外交防衛関係の新聞記事を読んでいればわかりそうなものだが、彼女にはその程度の教養もないらしい。すくなくとも国会で当初「報告を受けていなかった」と答弁した時点で、田中がミサイル防衛について何も知らなかったことは間違いない。

こういうのを日本語でバカという。
一説には、田中は小泉を「恫喝」して外相ポストをもぎ取ったと言われている。田中は、総裁選で小泉を応援して大衆的支持を煽った功績をタテに小泉首相に入閣を迫ったところ、彼女の失言を心配する首相周辺は「官房長官や外相など国家安全保障にかかわるポストは外交上危険」と判断して、文部科学相や行革担当相のポストを提示して「論功行賞」にしようとした。ところが、「小泉総裁実現の最大の功労者」を自負する田中は、当然官房長官になれると「勝手に」期待しており、小泉の提示するをポストを「格下」と思い込み

「だれのお陰で総理総裁になったと思うの!!」

と怒鳴りつけて外相ポストを獲得した、という説がある(『週刊ポスト』2001年6月1日号 p.p 27-28)が、もしそれが事実なら、言語道断である。アメリカの現共和党政権の国防・外交上の最重点政策はBMDであり、アメリカは日本の唯一の同盟国である。たとえ日米安保やBMDに反対する立場の政治家であっても、BMDのことを何も知らない者が外相ポストを要求するなど、思い上がりも甚だしい。外相ポストは、政治家の見栄や虚栄心のためにあるのではなく、日本が敵味方を方問わず全世界を相手に国益をかけた駆け引きをするためにあるのだから。

困ったことに、この外相は、その後朝日新聞などのリベラルなメディアの情報だけを収集して(BMDでなく)NMDについて「学習」したらしい。彼女は5月下旬に北京で開かれたASEM(アジア欧州外相会議)の昼食会で、ドイツ、イタリア、オーストラリアの外相を相手に「結束してNMDに反対しよう」と呼びかけたという。とくに、オーストラリアのダウナー外相には「(NMDを推進する)ブッシュ大統領は父親が大統領だったころのアドバイザーや保守的な人々に周りを囲まれており、地元テキサスの石油業界関係者ら支持団体の影響」を受けて政策を遂行している「石油屋さん」だと批判したという(読売新聞2001年6月2日付)。

つまり、彼女は、ブッシュ政権をロックフェラー財閥など国際石油資本の手先とみなし、かつ、70年代に自分の父親を首班とする田中角栄内閣とオーストラリアのホイットラム内閣が相次いで潰れたのは、角栄とホイットラムが国際石油資本に逆らってウラン・原子力開発を進めたから、と見ているのだ(この点だけでは、田中外相と筆者の見解は完全に一致する)。

が、筆者は一介の作家なのでどのように「言論の自由」を発揮してもかまわないが、彼女は一国を代表する外務大臣である。日本国の外相が、他国の外相の前で、日本の唯一の同盟国の国家元首を「石油屋さん」と罵ってよいのだろうか? (それを言うなら、田中さんちは「土建屋さん」でしょ(^^;))

各種世論調査を見ると、田中外相の外務省「機密費疑惑」解明への支持は高い。が、外相に「日米関係を壊してください」と頼んだ国民はいない。どうしても日米関係を壊したいなら、外相を辞して社民党に入党すべきである。

最近(2001年5月下旬)田中外相は対米関係修復のために6月に訪米したい、と表明しているが、アメリカはこの「訪米」問題を使って、田中を辞任に追い込む可能性もある。2001年3月、政権延命のために訪米を希望する当時の森喜朗首相に対して、アメリカ政府は用意に首をタテに振らず、結局「退陣」を表明するまで、訪米を許さなかったのだから、同じ手口を使えば田中外相を葬ることは可能だ。

○後任の外相も女性
したがって、首相周辺が、田中真紀子外相の後任の人選にはいっていることはほぼ間違いあるまい。上記のファンメールでは、首相は支持率の低下を恐れて、大衆に人気のある田中真紀子を更迭できないのではないか、と指摘していた。

たしかに、人気のある、しかも外務省の機密費疑惑解明をめざす彼女を切ると、「小泉改革」の挫折を印象付け、支持率低下につながりかねない。が、5月23日、ハンセン病訴訟での異例の「英断」(法理上の問題はさておき、筆舌に尽くし難い差別と苦難を受けた患者たちの救済を優先して、被告・国側の責任を広範に認めた熊本地裁の一審判決を受け入れて、政府として控訴しないこと)で首相の求心力は高まった。したがって、「切る」なら、いまだ。

外務省の在外公館はスパイによる情報収集に際して、あたりまえのことだが「領収書を取らずに」報酬を払う。これがいわゆる外務省がらみの「(官邸)機密費」の起源である。当然のことながら、これをなくせば日本の対外情報網は壊滅する。

また、外務省は旧建設省などと違って利権官庁でないので外務官僚には天下り先があまりなく、退任後の外交官の生活は、在任中の(大使公邸などでの派手な)生活に比べて相当にみじめなものだから、機密費の「流用」をなくせば外交官のなり手はなくなってしまう。この意味からも、大衆迎合型の「人気取り」のために素人じみた過激な言動で「外務省改革」を進める田中外相は更迭しなければならない。さもないと、外務省は崩壊してしまう。

さて、その場合、後任にはだれをあてるべきか……本来なら衆議院議員の加藤紘一(元自民党幹事長)、評論家の岡崎久彦(元外務省情報局長)、国際コンサルタントの岡本行夫(元外務省北米課長)らが、キャリアから見てうってつけである。

が、彼らはみな「元外交官」なので、そういう者を外相にすると「昔の仲間といっしょになって、機密費に関する旧悪を暴露されないために隠蔽工作をしている」という印象になってしまう。元外交官でない男性の政治家でも、田中外相のイメージが強すぎたので、「派閥にとらわれず、女性閣僚5人起用」を看板に発足した小泉内閣にとっては、改革のイメージの「後退」につながる恐れがある。

となると「女性から女性へ」変える必要がある。
扇千景・国土交通相(保守党)は「パニックに陥った」という田中のばかげた国会答弁に怒り、「今後、こういうポスト(外相)は女性には向かない、という偏見が政界に定着したらどうしてくれる」と閣議の席で批判したというが、もっともな意見である。小泉首相もこの指摘は無視できまい。

本ページですでに述べたように、女性政治家で、この時期の外交を任せられそうな人物としては、小池百合子(保守党衆議院議員)がいる。彼女は、法律や原則をねじまげて李登輝前総統の訪日を阻止しようとした、外務省親中国派のリーダー格、槙田邦彦アジア大洋州局長の更迭を求める超党派国会議員団のメンバーであるばかりでなく、なんと来日した李登輝に会っているぐらいだから、日本の保守政界の「親台湾派のリーダー格」と見てよい。

彼女は昔は自民党に近く、カイロ大学卒でアラビア語が堪能なことから、1990年の湾岸危機で中曽根康弘元首相(当時はすでに首相を辞めたあとの、単なる国会議員だったが、外交官を同行した、一種の特使のような立場だった)がイラクを訪問して「人質解放交渉」をした際にも同行している。小池はのちに日本新党にはいって、新進党の結党に参加し、新進党の最初(で最後)の党首選挙では、「イチロー、男をかけます」のキャッチコピーを作って小沢一郎の当選に貢献した。

が、残念ながら当面、彼女の入閣はない。理由は彼女は保守党員なので、すでに扇党首が入閣している以上、また保守党より議員数の多い公明党から1人しか入閣していない以上、議員数の少ないほうに多くの閣僚ポストを配分するのは議院内閣制の原理に反するからである。そこで、以下の2人に絞り込まれた、と筆者は見る。

ここから先の、後任人事の予測について、筆者はこの2週間ほど書くのをためらっていた。が、田中外相についての新聞報道を読み返し、彼女が就任早々外務官僚に「外国の新聞をで読ませろ」と要求し、それがなかなか実現しないことを記者会見で暴露して怒りをあらわにしていたことを思い出して、ようやく書いても大丈夫という判断に至った。筆者は、ウォールストリートジャーナル(WSJ)など多数の外国の新聞をインターネットで読んでいるが、田中は「紙」に執着するところを見ると、どうやらインターネットは苦手らしい(田中以外の政治家や、政治家と親しいジャーナリストのなかには、本誌の読者はけっこういるらしい。以前、ドメイン別のアクセス解析で「shugiin.go.jp」から多数のアクセスを得ていたこともあるので)。

そこで、筆者が本誌上で後任外相候補2名の名前をあげても、田中がそれに気付くことはないだろうし、その2人のもとに田中が「怒鳴りこみ」(>_<;)に行く心配はなかろうと判断し、以下に予測を書かせて頂く。どうか、読者の皆さんも、本記事について「またもや佐々木が予言した」などと、あまりあちこちに広めないようお願い申し上げたい。

田中外相就任以来の日米関係の停滞を挽回するには「知米派文化人の女性」が望ましく、それはおそらく、アメリカの推進するTMDなどミサイル防衛に詳しい

猪口邦子・上智大学教授(国際政治学者)

が最適任であろう。彼女は、細川内閣ではTMDに関する諮問機関のメンバーで、彼女の賛成意見もあって、日本政府は94年度からTMDに関する調査費を予算に計上するようになったのだ。

が、彼女は永田町の人ではなく「民間人」で2児の母でもあるので、急に政界入りを打診されてもとまどうであろう。いくら国際政治学者でも、外相となれば欧米など自分の「得意な」国だけを相手にするわけにはいかず、世界の180か国すべてを相手に、学者時代には考えられなかったような(一見無意味な)儀礼的な仕事もしなければならない。

そこで、こういう人に交渉するには、断られた場合の「最後の切り札」が必要である。小泉首相は4月の組閣に際して、トヨタ自動車の奥田会長に入閣を打診する前に、親しい森派の塩川正十郎・衆議院議員にこの「最後の切り札」になってくれるように頼んでおき、そのあと奥田に断られられたので「塩川財務相」が実現したといういきさつがある。塩川は、政策全般をよく知る大ベテランではあるが、とくに財政に強いという印象はなく、組閣直後には「なぜ財務相?」と思った者が多かったのだが、それはこういう事情によるのである。

では、猪口に交渉する場合には、だれを「切り札」にすればよいのか……それは塩川と同様、小泉に近い人で「あっちで断られたからよろしく」と言われても、だれかさんのように「格下扱いするのか!」などとすぐに怒らず、寛大な理解を示せる人に限られる。もちろん、民間人ではなく、国会議員(永田町の政治家)でなければならない。

この条件を満たす女性政治家はほとんど1人しかいない。それは、高市早苗・衆議院文部科学委員長である。
彼女は、かつてはアメリカで下院議員のスタッフをしたこともあって語学は堪能だが、教育、経済などが専門でとくに外交が強いというわけではない。が、森派(清和会)で「小泉応援団長」のような形で総裁選中テレビに出演しており、また、森内閣発足時の「小泉組閣試案」では「5人の女性閣僚」のなかにはいっていた。

この「試案」は、当時森派会長だった小泉が「森政権は密室でできた、と評判が悪いから女性を5人ぐらい閣僚にしてイメージアッ プしてはどうか」と作ったものである。

この5人のうち4人は現在そのとおり閣僚の任にある。ただ1人高市だけははずれているが、その理由は「小泉は派閥解消を言いながら、森派ばかり優遇するのか」との批判を恐れたために相違あるまい。田中外相が「予想外に非常識で、対米関係が停滞」するという「突発 事故」へのやむをえない策としてなら、森派の高市を(派閥離脱を条件に)閣僚に起用する大義名分は十分に立つ(しかも、高市は明白な「台湾派」であり、ごく最近、自民党の親台湾派議員団の発起人になっている。中国が軍拡を続けて台湾侵略の意志を隠さない昨今の国際情勢下では、誠に頼もしい限りである)。

何を無責任な、とご当人は怒るかもしれない。田中外相が「荒らしまわった」外交の後始末をさせられるなんて、苦労するのが目に見えている、と上記の2人は(もしも首相から入閣を要請されたら)思うかもしれない。

が、現在の外務官僚は親中派、親米派を問わず全員「真紀子以外ならだれでもいい」(^_^;)と思い、一刻も早く、官僚を使用人扱いするあの非常識な「独裁者」をクビにしてほしいと願っている。上記の2人ならどちらが来ても、外務官僚はみな涙を流して喜び、全面的に協力するだろう。少々ミスをしても、すくなくとも外務省内では官僚は多めに見てくれるし、いくらでも助けてもらえる。

田中真紀子は、機密費問題など外務省の機構改革では熱意を見せたが、肝心の外交では失態続きで、すでに相手国から赴任の同意を得ている大使数十人が赴任できずに「足止め」されるという異常事態が起き、外交に空白が生じている(6月2日現在)。これほど無能な人物を更迭するのに、なんの遠慮が要るだろうか。6月5日に「機密費2割削減」を柱にした、外務省の機構改革案が発表されるので、それが終われば、田中の唯一有能かもしれなかった部分も終わるわけで、あとは「無能な部分」を発揮されないように更迭するのは、小泉の首相としての当然の責務であろう。

たしかに、一部の心ない週刊誌(某女性誌)などが、田中真紀子への自民党内からの批判を「男の嫉妬」と歪曲して報じるなど、あしきポピュリズムの雰囲気はあり、こういう無党派層の支持を得やすい「アイドル」を更迭するのは容易なことではない。

が、1994年の、羽田内閣の例を思い出そう。
現在の小泉内閣並みに無党派の強い支持で誕生した細川護煕内閣の支持率は発足時の1993年に70%以上だったが、細川がスキャンダルでつまずいて退陣し、その後同じ連立の枠組みの中で発足した羽田孜内閣は、首相の首がすげかわってもなお「改革断行内閣」と国民からみなされ、社民党が自民党にすり寄った結果として退陣に追い込まれるまで60%近い支持率を維持した。まして、田中外相の更迭は、首相の交替ではなく、(いかに人気者とはいえ)一閣僚の交代にすぎない。「女性から女性へ」の交替なら、真紀子人気に便乗してきたポピュリズム型マスコミの批判も十分に吸収でき、支持率は、せいぜい80%台から70%台に下がるだけだろう。小泉首相には、日本の世論のほか、アメリカ政府(共和党)や、日本の無党派層や民主党や自由党(の支持者の80〜90%)、共産党支持者(の60%)、さらには世界各国のメディアの支持まであるが、他方、田中には国内の人気を除くと、アメリカはもちろん中国の支持もない。田中に反米、反NMDの話を持ちかけられた独伊豪の外相もまったく相手にしなかった。小泉は田中を恐れる必要などないのだ。

田中真紀子は外相就任当時、李登輝台湾前総統の訪日ビザ発給に誠実に対応した川島裕外務次官を念頭に置いて「(機密費問題の責任者を)スパッと切って終わりにしたい」と述べていた。さらに6月2日のテレビ報道では、田中は柳井駐米大使の更迭までねらっており、だれに頼まれたわけでもないのに、対米関係の「破壊」を自分の使命と思い込んでいるフシがある。これは会社で言えば「背任罪」である。

小泉首相はいま田中外相を「スパッと切って」おかないと、これからジェノバ・サミットなどで相当困ったことになろう。
さっさとやれ!!

○「味方ながらバカ」
田中は2001年5月下旬、ASEMで北京を訪れた際に、中国の江沢民主席に中国語で話しかけ、オベンチャラを言ってほめられたらしい。もし、彼女が外交では「相手の言い分を聞けば気に入られる」と思っているのなら、大間違いだ。

たとえば、彼女の父親、田中角栄は首相のとき訪中して日中復交を実現したが、その交渉の過程で、訪中した角栄は、日本の国益を守るため、徹頭徹尾、中国の周恩来首相の謝罪要求をはねつけた。角栄は、露骨なごまかしで第二次大戦中の日本の中国への「侵略」を認めず、謝罪の代わりに「迷惑をかけた」という言葉でやりすごそうとした。この結果、国交回復交渉は暗礁に乗り上げ、周恩来は交渉を投げ出し、角栄は毛沢東・中国共産党主席のもとに行った。毛沢東は「迷惑とは、道で肩が触れたときに使う言葉だ」と角栄を非難したが、角栄はそれでもなお譲らず「日本では万感の思いを込めて詫びるときにも使います」と居直った。

すると、毛沢東は怒るどころかにやっと笑って「迷惑という言葉の使い方はあなたのほうがうまいようだ」と角栄をほめ、日中復交は、謝罪をネタにした際限のないゆすりたかり(国家賠償)を伴うことなく、実現した。理由は、もちろん、日本の国益を必死に守ろうとする角栄の愛国的な態度に、毛沢東が敬意を持ったからにほかならない。田中角栄はその後、ロッキード事件で刑事被告人となり、さらに脳梗塞もわずらって寂しい境遇に転落するが、その間一貫して死ぬまで、ケ小平らの中国首脳は、来日のたびに目白の田中邸を訪れて「水(友好関係)を飲むときは井戸(復交)を掘った人の苦労を忘れては成らない」と敬意を表し続けた。その理由は、田中が外国の言い分をなんでも聞く売国奴ではなく、愛国者として中国から「敵ながらあっぱれ」の尊敬を得ていたからである(もちろん、真紀子外相は「味方ながらバカ」なので中国から軽蔑されていることは間違いない)。

真紀子は、こういう父親の、真に偉大な業績をわかっているのだろうか。おそらく父親からは、政治の表面的な「オベンチャラ」の部分しか学ばなかったに相違ない。彼女は科学技術相時代、ふだんは景気のいい「漫談」を披露するために記者会見に出ていたのに、科学技術庁が国産実験衛星の打ち上げ失敗という失態を演じると、途端に会見をキャンセルしたという「前科」がある。まさに、手柄はぜんぶ自分のもので、失敗の責任はすべて「事務方」に押し付ける、という「卑怯な上司」の見本を演じたわけで、多くの官僚のハートをつかんでいた父角栄とは大違い……。

こんなことを書くと、いつかどこかで本誌が真紀子に読まれたときに「父親のことは私がいちばんよく知っている!!」と怒鳴りこまれそうなので、こわいから、このへんでやめとく。
(^^;)

(敬称略)

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