ユタ州・国防省人脈

〜サイバースペースを創世した現代のメシアたち〜

Originally Written: May 28, 1997
Last Update: Feb. 14, 1999(「北朝鮮と在日朝鮮人の運命」を吸収合併)

●仮説としての「ユタ州・国防省人脈」
●マイクロソフトの「二番手商法」の実態〜ERP/SCMを例に
●「ユタ州・国防省人脈」の誕生
●マイクロソフトは傍流にすぎない
●任天堂vs.パチンコ産業
●北朝鮮と在日朝鮮人の運命

●仮説としての「ユタ州・国防省人脈」
現代の、パソコンとインターネットを核とするコンピュータ文明の基本技術はどこで生まれたのか?…………筆者は、これまでたびたび米国防省(正確には国防総省)すなわち米軍がインターネットを開発し、サイバースペースを創世してきたことを指摘してきた。インターネット関連の文献を読めば、この文明の「創世記」の歴史については例の「核戦争時の通信手段として……」といった下りが必ずと言っていいほど頻繁に出てくる。つまり、「もと」を作った組織の名前はわかった、のである。

そこで、筆者が次に抱いた疑問は、米軍と組んでこの文明の技術開発を行った人々は、どのような人々(個人)であるか、といったことであった。

この文明にかかわる個々の人々のエピソードについては、NHKスペシャルの『新・電子立国』のシリーズ(1994〜95年????放送)で、だいだい1980年代から90年代前半にかけて起こった画期的な事件が紹介されている。

「アンドリュー・グローブがインテル社を創設しパソコン用半導体(中央演算処理装置、CPU)を大々的に売り出した」
「ノラン・ブッシュネルが世界で最初のテレビゲーム(英語ではvideo game)会社を起こした」
「スティーブ・ジョブズがアップル社を起こし世界で最初のパソコンを売り出した」
「マイクロソフトのビル・ゲイツがIBMとの駆け引きに勝ってパソコン用OS(基本ソフト)MS-DOSの発売で『帝国』を築いた」

このほかに、同シリーズでは紹介されなかったが、

「Windowsのマイクロソフトとインテル(intel)が同盟し、ウィンテル("Wintel")と呼ばれるようになった」
「IBMはアップルおよび半導体のモトローラと組んで新型CPU『PowerPC』の普及をめざし、マイクロソフトとインテルの同盟『ウィンテル』に対抗した」

といった事実は「ウィンテル対パワーPC連合」の戦いとして、コンピュータ業界では広く知られている。

これらの動きは、それぞれの時代それぞれの場面で、個々の天才的な技術者や経営者が努力した結果が、偶然に組み合わさった結果なのだろうか? それとも何か、法則や軸になるものがあっての動きであろうか?

この30年間のコンピュータ文明の歴史を見ると、節目節目で「ユタ」という地名が出てくることに、気付かされる。上記の『新・電子立国』でも「ユタ州」あるいは「ユタ大学」といった固有名詞が頻繁に出てくるのである。

筆者は次第に、この「ユタ」とコンピュータ文明の間には、何か特別な関係があるのではないか、と思うようになり、調べてみた。すると、ユタ大学関係者およびユタ州にある事業所、そしてそれらと盟友の関係にあるごく少数の企業「だけ」が、コンピュータ文明の発展の方向性を一方的にリードしていることがわかったのである。以下に整理して、列挙するが、筆者はこれらの関係をまとめて「ユタ州・国防省人脈」と呼ぶことにしている。何かの名称を与えないと、ここから先の記述に不便だからである。

○ユタ大学関係者
ノラン・ブッシュネル:
ユタ大学OB、世界で最初のテレビゲーム会社、アタリゲームズ社を創設。

スティーブラッセル:
MITを経てユタ大学研究員、CGの「元祖」と言われる天才。

アラン・ケイ:
ユタ大学研究員を経てアップル社主任研究員、世界初のグラフィカルユーザーインタフェース(GUI )技術を開発。

ジム・クラーク:
米海軍からユタ大学大学院生、スタンフォード大学教授を経て、映画の特撮を一変させたシリコングラフィックス(SGI )社を創設。その後、世界初のブラウザのメーカー、ネットスケープ社も創設。

○上記とかかわりが深いと思われる人々:
ハワード・リンカーン:
ジム・クラークと同じ元海軍関係者。海軍の弁護士からアメリカ任天堂副社長に就任し、海賊版ゲームソフト対策で実績をあげる。任天堂はSGI 社のCG技術を導入したテレビゲームソフトのヒットで、日本の娯楽産業を一変させるほどに発展。リンカーンは両者のパイプ役か?

ラリー・エリソン:
マイクロソフト社の「独占商法」を激しく非難。「PowerPC 連合」やユタ州系の企業と組んでマイクロソフトと戦うことに執念を燃やす。とくに「マイクロソフトと、われわれ全人類の戦いだ」(つまり、マイクロソフトは「人類の敵」である)とおおやけの場で発言したことは有名。

オリン・ハッチ:
ユタ州選出上院議員。共和党員。1998〜99年現在上院司法委員長を務め、マイクロソフト社の反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)違反を追求することに執念を燃やす。
(ちなみに、1999年1 月、民主党のクリントン大統領民主党の「セクハラもみ消し疑惑」とそれにかかわる偽称や司法妨害についての弾劾裁判が下院の告発に基づいて上院で開始されるにあたり、上院議員のとりまとめに奔走したのも、このハッチ司法委員長である。
上院で弾劾が成立するには定数100 名のうち、3分の2、つまり67名以上の賛成がなければならないが、共和党議員は55名にすぎず、残り45名は民主党員であり、弾劾成立は見込めそうにない。おまけに世論調査での大統領の支持率も、6割〜7割と高い。そこで、当初は、民主党員の抵抗で弾劾審議にははいらず、譴責決議で決着させざるをえないのではないか、と予想されていた。ところが、ハッチは、エドワード・ケネディ上院議員ら民主党とのパイプを活かして全議員を説得し「世論にまどわされず、憲法上の義務を果たそう」「 100年後の歴史家にどう判断されるか考えよう」と説き伏せた。その結果、弾劾審議にはいるか否かの採決では、大方の予想を覆し、なんと「100対0」で審議入りが決まった。
その直後、ユタ州の州都ソルトレークシティで2002年に開かれることが決まっている冬季オリンピックの招致にあたって、地元ユタ州のオリンピック組織委員会幹部ら、開催地決定権を握るIOC 役員に賄賂を贈った疑惑が浮上し、組織委員会幹部が辞任に追い込まれた)

なお、ユタ州選出のもう1人の上院議員(上院は各州定数2名)であるベネット議員は、上院の2000年問題対策の特別委員会のリーダーである(彼もコネチカット州の民主党のドット議員と組んで、超党派で2000年問題に取り組んでる。冷戦後、米ソ対立に代わって、保守本流対ユダヤ系の対立が顕在化した米議会では、ここ数年間超党派のグループは成立していなかったが、2000年問題を機に政治地図に変化が生じたのかもしれない)。このことは、アメリカにおけるコンピュータ技術の中心地が、とくに国防省・CIA的センスを要求される危機管理技術としてインターネットの発祥の地が、実はシリコンバレーを擁するカリフォリニア州ではなく、ユタ州であることを意味している(カリフォルニア州、とくにシリコンバレーは、いささか反体制的な土地柄である。この「反体制」というのは、テキサス州にあるような反中央の独立精神ではなく、日本で言えば左翼的な精神風土のことで、ユタ州のモルモン教徒の戒律などとはいちばん縁遠いタイプの人々が多数住んでいることによる、『イージーライダー』的な自由な雰囲気のことである。そして、カリフォルニアは、伝統的に民主党の牙城である)。

○ユタ州にある主要なコンピュータ関連企業の事業所
ノベル社:
ユタ州の州都ソルトレークシティに本社を置く、世界初のネットワークOSのメーカー。

Java認証センター:
カリフォルニア州シリコンバレー郊外に本社を置くワークステーション(詳しくない方は、とりあえずパソコンより大きいコンピュータと思っておいて頂きたい)のメーカー、サンマイクロシステムズ社が開発した、世界初のOSに支配されないコンピュータプログラム用言語Javaの認証センター。同社はJavaのデータを公開し広くソフトウェア業界に普及させようとしているが、同センターでは、Javaで書いたソフトウェアと称するものがほんとうに同社が考えるJavaの規格(とくに「どのOSの上でも使える」というルール)に適合しているか否かを検査し、認証する。世界各地に支所があるが、このユタ州の施設が、その「総本山」である。

○上記とかかわりの深い企業
オラクル社:
シリコンバレーに本社を置くデータベースソフトと統合業務パッケージ(ERP)のメーカー。インターネットに続く新しいネットワークの概念としてイントラネット、エクストラネットを提唱し、普及させた。また、パソコンに続くコンピュータとして、内臓ハードディスクのないコンピュータ、ネットワークコンピュータ(NC)を提唱したが、こちらはなかなか普及しない。サンマイクロシステムズと強力な提携関係にある。

デジタルドメイン社:
SGI 社などと提携しながらハリウッド映画の特殊効果技術の発展に貢献。おもな作品に『タイタニック』『アポロ13』など。なお、この会社には『タイタニック』の監督ジェームズ・キャメロンが出資している。

モトローラ社:
パソコンに限らず、携帯電話、通信機器などに用いる多種多様な半導体のメーカー。「パワーPC連合」の一角を占めるマイクロソフトの仇敵の1つ。本社はテキサス州にあるが、この州はユタ州と並ぶ共和党の牙城である(テキサス州は、アメリカ合衆国に加盟する前は一時的ながら独立国であったため、州民は独立自尊自衛の気風が強く、福祉を嫌い、このため福祉重視の民主党は嫌われる。石油が豊富に出るので、国際石油資本の1つテキサコ社があり、ジョージ・ブッシュ元大統領/元CIA長官も政界入りする前ここで石油会社を起こした。なお、98年秋の中間選挙で再選されたジョージ・ブッシュJr.テキサス州知事は、元大統領の息子である)。同社は、世界初の衛星携帯電話会社イリジウムに資本参加し、その設立に貢献している。

あまりに多くの専門用語を一度に使ってしまった気がする。慣れていない人のために、おおざっぱながら説明を試みようと思う。

CGはコンピュータ・グラフィックスの略である。

GUIとはアップル社が世界で最初に実現した、かわいい絵のアイコンをパソコン画面上でぽこぽこクリックするだけで、操作できる、素人にも使いやすい仕組みのことである。昔のパソコンは、画面が基本的には真っ黒で、そこに文字が浮かび上がるだけの味気無いユーザーインタフェース(その機械が使う人へ向ける「顔」)だった。アップル社はこれを一変させ、Macintosh コンピュータでGUIを世界に普及させた。マイクロソフト社のWindows はその真似にすぎないが、同社創業社のビル・ゲイツのマーケティング戦略が巧みだったため、マイクロソフトはパソコン用基本ソフト(オペレーティングシステム、略してOS)で9割のシェアを握るに至り、アップル社の経営を破滅の淵に追い込んだ(1997年、フランスのテレビ局F2(フランス・ドゥー)は「マイクロソフトはアップルのアイデアを、控えめに言っても、借用した」と述べた。つまり、はっきり言えば「盗んだ」ということだ)。Macintosh ユーザーのなかの熱狂的ファンには、マイクロソフト社を「諸悪の根源」「不当な独占企業」と思い込んでいる人が少なくない(97年にマイクロソフトが、アップルの倒産でパソコンOSメーカーがマイクロソフトだけになると独禁法が適用されて会社分割などの厳しい措置が取られるのではないかと恐れ、アップル社への出資を決定した際、F2は「Macユーザーにとっては正義の味方と悪者が結婚したようなもの」と評した)。

ブラウザとは、インターネット閲覧ソフトのことである。ネットスケープ社がNetscape Navigatorを発売するまで(より正確には、その前身のMosaicという無料のソフトウェアが登場するまで)、インターネットで必要とする情報のあるホームページにたどり着くにはホームページの住所(アドレス)を示すアルファベットを何文字も打ち込み必要があり、そのうえ複雑な手順があってめんどうだった。が、Mosaicとその発展形であるNetscape Navigatorが登場すると、そのような打ち込みや手順はGUI化され、容易になり、インターネットがだれにでも使い易いものへと進化していくきっかけとなった。マイクロソフト社のブラウザ、Internet ExplorerはNetscape Navigatorをまねたものである。同社はこのInternet ExplorerをWindowsに無料で添付して普及させたため、OSのシェアを利用して別の商品をOSに抱き合せて売ろうとする、独禁法(反トラスト法)違反の不当廉売である、としてアメリカ司法省に訴えられ、1999年現在も係争中である。

ネットワークOSとは、基本ソフト(OS)のなかでも、とくにネットワークに接続することを主たる目的として作られたもののことである。ノベル社のNetWareは世界で最初のネットワークOSで、インターネットや企業内のネットワークへの接続にすぐれていたが、マイクロソフト社がこれを真似してWindows NT という同種の製品をイスラエルの研究所で開発し、売り出したため、ノベル社のシェアは次第に奪われていくこととなった。

オラクルの提唱したネットワークコンピュータ(NC)とは、主として企業ネットワーク上の端末として使われるもので、パソコンから内蔵ハードディスク(記憶装置)を抜き取り、端末で社員個々人が勝手にソフトウェアをインストール(導入)できないようにしたものである。たとえば、ある人は「一太郎」、ある人はMicrosoft Wordなどと、社員各自が勝手に別々のワープロソフトを入れると、できあがった文書データの互換性がなくなり、書類を分担して作るような場合に不都合を生じる。また、社員が勝手にゲームソフトをインストールして仕事中に遊んだり、最悪のケースではウィルス入りの危険なソフトウェアパッケージを入れてしまう、といったことも起きかねない。NCを端末としてパソコンと置き換えた場合は、インストールは大元のNCサーバー(パソコンにNCを管理するソフトを入れたもの)でしかできず、こうした問題はいっさい起きないので、社内のコンピュータシステムを保有し、かつトラブルから守って管理していくのにかかるコスト(トータルコスト・オブ・オーナーシップ、略してTCO)が削減される、というのがオラクルの主張である。NCは現在はさして普及していないが、TCOの削減という点に関しては世界的に権威のあるコンサルティング会社多数が支持していることから、近い将来普及する可能性はある。

そして、マイクロソフトも、これには脅威を感じたことがあったようだ。NCがまだ海のものとも山のものともわからなかった1990年代半ばの時点で、あわてて、インテルと組んでNet PCなる製品のコンセプトを発表したからである。もちろん、これも「本家」のNCをまねたものであった。

●マイクロソフトの「二番手商法」の実態〜ERP/SCMを例に
以上で、マイクロソフトがいかなる性格の企業か、ある程度はっきりしてきたと思う。が、ここで、より重要な企業オラクルの提唱した、イントラネット、エクストラネットについて触れておかなければならない。

世界中の多数のコンピュータ(おもにパソコン)をつないで、だれとでも自由に電子メールを交換したりホームページを見たりできるように(つまり、この世のどのコンピュータとも、それがインターネット上にあるかぎり自由につながるように)したのが、インターネットである。

したがって、1990年代初頭までは、世界と自由につながるインターネットと、特定の企業や組織の中の、いわば「社内ネットワーク」とでも言うべきローカル・エリア・ネットワーク(LAN)はまったく別の技術によるものだった。

ところが、1990年代半ばになると、オラクル社は、インターネットと同じ技術、同じ道具で社内のコンピュータをつなぎ、そのうえで、社内と社外を仕切る防火壁のような仕組み(ファイアウォール)を作れば、安いコストで社内ネットワークができると提唱しはじめた。このインターネットを利用した社内ネットワークはイントラネットと呼ばれる。「外」の世界と自由につながるのがインターネット(「ネットワーク間ネットワーク」という意味)なら、「中」とだけつながるのはイントラネット(「内部ネットワーク」)というわけだ。

イントラネットによって、企業は社内向けホームページが作れるようになった。パソコンの普及した会社に勤めたことのない人にとって、企業がホームページを持つと言えば、それはお客さまへの宣伝やサービスなどの手段としか思えないだろう。しかし、進んだ企業は、社内向けホームページに社外秘の資料を載せて社員に読ませたりするし、ホームページの掲示板に書き込む要領で特定の部署の社員が意見を書き込んでいけば、時間差付きの会議(電子会議システム)も可能になる。

もちろん、外部の者に社外秘や会議の内容を見せるわけにはいかないから、イントラネットにつながる者には、その「入り口」で、社員であることを示すID番号や暗証番号を入力させ、認証する手続きが必要となる。この「入り口」がファイアウォールである。

そして、認証手続きによって社員個人を特定できるなら、社員ごとに別々に閲覧できるホームページを制限することもできる。アルバイトや派遣社員には重要な資料を見せないといったことも可能だし、個人専用のホームページを作り、それに出勤時間や退勤時間をクリックで入力できるようにしておけば、タイムレコーダー代わりに使うこともできる。

このため、日本でも大手の外資系企業などではタイムレコーダーがない。タイムレコーダーは情報を紙(タイムカード)に打ち込んでしまうので、毎月の締め日には人事課の職員がタイムカードにかかれた時間の記録を目で見て人事課の帳簿に書き込むか、またはコンピュータの人事管理用データベースに入力しなければならない。そこには人手が必要になるし、写し間違いも起きうる。しかし、各社員がみずからイントラネット上で出勤退勤時間を入力するようにすれば(これを「セルフサービス方式」と言う)、それは紙ではなく、ネットワークの上にデータとして存在するので、そのまま人事管理データベースに取り込むことが可能だ。これなら写し間違いも起きないし、人事課の仕事も効率化できる(一般にこの種のタイムレコーダー代わりの社員個人専用ホームページは、本人と直属上司、人事課員らごく限られた者だけがアクセスできるように、認証システムが作られることが多い)。

世界中だれとでもつながるのがインターネット、社内の特定のだれかとだけつながるのがイントラネットである。そして、社「外」の特定のだれかとだけつながるのが、エクストラネットである。

どの企業にも、重要な取り引き先、業務提携相手というものが存在する。そういう企業とは秘密保持契約を結ぶなどして、緊密な情報交換を行いながら、双方にとっての共通の敵と戦うわけである。

たとえばペプシコーラのライバルはコカコーラであるが、ペプシは日本ではサントリーに販売、宣伝、マーケティングなどを一部委託している。サントリーの自動販売機でペプシコーラを売ることもあるだろう。この場合、ペプシとサントリーは販売戦略を立案するうえで重要なデータはネットワークを介して共有したほうがいい。たとえば、東京の町中のサントリーの自動販売機で、気温が何度以上のときは冷たいコーラが売れ、何度以下になると暖かいウーロン茶が売れる、といった統計データは、人手を使ってお客にアンケートをとらなくとも、自動販売機の動作記録をネットワークを介して(セルフサービス方式で)サントリーの顧客データベースに取り込むことが可能である。それを日付時刻で分類し、気象台の気温変化のデータと突き合わせれば、気温が1 度上がるとどの飲み物の売り上げがいくら上がる、といった傾向は容易に算出できる。この情報は当然、販売機の持ち主(サントリー)だけでなく、コーラの製造元(ペプシ)にも知らしめるべきである。

そこで、異なる企業をまたぐネットワーク、エクストラネットが必要になる(エクストラネットは本社と支社、親会社と子会社の間でも、しばしば海や国境を越えて構築されることがあるが、本シリーズでは、完全に独立した企業同士のエクストラネット以外は取り上げない)。

90年代半ば以降、イントラネット、エクストラネットの普及に伴って、ERPおよびSCMという概念を実現するソフトウェアが、コンピュータ業界で注目されるようになってきた。ERP とはエンタープライズ・リソース・プランニング(企業内資源計画)の略だが、日本語ではなぜか「統合業務パッケージ」と言う。

日本では(統合されていない)単体の業務ソフトとしては、オービック社の会計ソフト「勘定奉行」や人事管理ソフト「給与奉行」、販売管理ソフト「商奉行」、在庫管理ソフト「蔵奉行」などが有名である。これらをすべて「統合」したのがERPと思えばよい。ERPソフトとしては、オラクル社のOracle Applications、ドイツのエス・エー・ピー社(SAP)のR/3(アールスリー)、オランダのバーン社のBaanなどが有名である。

統合の強み、というのは、明らかにある。ERPでは、顧客管理、販売管理、広報宣伝用のパソコンソフトなどが連動しているので、営業マンが自分の顧客企業の管理職の名前、肩書き、住所、電話番号、電子メールアドレスなどをいったん顧客管理ソフトにパソコンから入力してしまえば、その管理職に新年賀刺交換会の案内状その他の郵便物を送りたい他の部署の者が、イントラネットを介してそれを利用して、その住所、氏名、部署名などのはいった宛名ラベルを出力し、封筒に貼ることができる。つまり、会社にとって新たな情報の入力は、原則的には1人が1回やれば終わるのである。

もちろん、会社全体で共有すべき情報は宛名ラベル用の住所にとどまらない。たとえばあるメーカーで、特定の部署、特定の工場だけは安い部品の仕入先を知っているのに、他の部署はまったく知らない、といったことがありうる。これを防ぐには、各部署が開拓した部品の仕入先との個々の取り引きの情報をすべて同じデータベースに入力させて、イントラネットでどの部署からも見られるようにすればいい。GUIやブラウザを駆使して円グラフや棒グラフや三次元立体グラフで見られるようになれば、もっといい。部品メーカーごとの比較が容易にでき、無駄な出費をしないで済む。

そして、異なる企業、たとえば飲料メーカーとそのマーケティングを請け負う会社、自動車製造会社とブレーキのメーカーなどが、業務提携をし、密接な同盟関係を持つ場合は、エクストラネットを介して情報共有の仕組みを構築するのが望ましい。

この同盟関係をサプライチェーンと言う。敢えて日本語にすれば「供給連鎖」だろうか。学問的には、サプライチェーンは「ある品物(やサービス)が生産され、流通網を通って消費者に渡るまでの全プロセス」と定義される。そして、これを管理することをサプライチェーンマネージメントと言い、その英語の頭文字を取ったものがSCM である。1999年現在世界で販売されているERPソフトの大半は、その中にSCM機能を持っている。

ERP/SCM を導入した企業および「企業同盟」は、コストを節約し、経営を効率化できるので、世界規模の競争には、このソフトは欠かせない。だから、このソフトは 1パッケージ数百万円、あるいは1000万円以上もするのに、飛ぶように売れていく(日本ではおもに外資系企業が導入している)。

世界のソフトウェア専業メーカー(つまり、コンピュータの箱や半導体などの「固いもの」、ハードウェアを造っていない企業)のなかで、1998年現在売り上げ第一位はOSやあらゆるアプリケーションソフトを造っているマイクロソフト、二位はデータベースとERPのオラクル、三位はバックアップソフトやウィルス対策ソフトなど企業向け製品のコンピュータアソシエイツ、そして四位はSAPである。注目すべきことは、SAPはERP以外ほとんど何も造っていないということである。にもかかわらず、堂々世界第四位なのである。つまり、この商品は、ワープロソフトや単体の会計ソフトなどと違って、べらぼうに儲かるのである。

いまのところ、マイクロソフトはERP/SCM の分野には参入していない。しかし、ネットワークOSやブラウザの分野で過去に何をしてきたかを見れば、未来を予測することは、さして難しくない。マイクロソフトは、自分から何も新しいことは仕掛けない。が、他社が手懸けて、その分野が儲かるとわかると、必ず(OSでの圧倒的なシェアと資金力にものを言わせて)あとから参入し、先行企業のシェアを奪っていくのである。

1998年秋、マイクロソフト日本法人が東京・赤坂のホテルで開いたセミナーでは、招待されたSAP日本法人の幹部社員が講演した。マイクロソフトとSAPは競合関係ににないことから、さまざまに協力、提携関係を築き、パソコン関連の展示会などを共同で運営したりもしてきた間柄だからである。ところが、その講演でSAPの幹部は「いままではマイクロソフトさんと我が社は競合関係になかったのですが、どうも、それが……」と苦渋に満ちた言葉をもらしたのである。

どうやら、マイクロソフトのこの分野への参入は、秒読み段階にはいったようだ。イントラネットもエクストラネットも、NCもブラウザもネットワークOSもGUIも、何一つ自分で発明したことのないマイクロソフトは、いままた他人が開拓したERP/SCMの市場を乗っ取ろうと、動きだしたのである。

●「ユタ州・国防省人脈」の誕生
インターネットはどこで生まれたのか? シリコンバレーか? 答えはユタ州である。すでに述べたとおり、1961年5月28日、ユタ州で電話会社の設備が1か所故障し、それが原因でユタ州を含むアメリカ西部の広範な地域で通信の途絶が起きたことが、きっかけで、インターネットの開発が始まったのである。つまり、従来の集中型の電話会社のシステム(当時から1980年初頭までアメリカの電話業界の9割はAT&Tが支配していた)の安全性が否定され、新しい通信システム(とそれを実践する新しい企業)が「国策として」待望されたのである。そしてユタ州のユタ大学などに多額の国防研究予算が投下されて、技術開発が行われ、インターネットとCGの技術が開発され、発展していくのである。

では、ユタ州とは、どういうところか? これはアメリカ西部の山岳地帯にある州で、住民の大半がモルモン教徒、そしてアメリカの多くの都会と異なり、民主党やユダヤ団体の影響力がほとんどなく、共和党が強い土地柄である。

このユタ州のモルモン教徒は、ドラッグはもちろん飲酒喫煙をしないし、不倫も婚前交渉もしないように、厳しく戒律を守っている人が多いので(外国のスパイ機関に買収されたり誘惑されたりする可能性も少ないので)、「法の執行者」にはきわめてふさわしい。そのため、FBIやCIAの職員には、モルモン教徒が非常に多い(下品な発言で知られるロシアの極右の政治家ジリノフスキーは、モルモン教徒のことを「あいつらみんなCIAのスパイだ」と発言したことがある。もちろん、これは偏見であるが、背景にはCIAにおけるモルモン教徒の活躍がある)。また、ユタ大学は世界中の米軍基地内に分校を持っており、上記の研究予算などの問題があって国防省つまり米軍とも関係が深い(日本の嘉手納基地、横田基地などの中にも分校がある。ただし、ほかの大学の分校もある)

なんとなく、上記のユタ州の事故で起きた大規模な通信の途絶は、ほんとうに事故だったのか、と疑う気持ちが起きないでもないが、証拠がないので、筆者は何も言えない。しかし、その後インターネットの利用で、米国内外の通信が多様化し、電話事業が独占的な事業でなくなったことや、AT&Tが司法省に反トラスト違反で訴えられて裁判に破れ、いくつもの小さな電話会社に分割されていったことを考えると、AT&Tは、アメリカのビジネスの基本的な価値観である「自由と平等」に反する会社として、司法当局およびユタ州国防省人脈の開発したインターネットによって「制裁」されたという印象が強い。

つまり、整理すると、

「ユタ州国防省人脈」対AT&T
インターネット対AT&T

という対立の構図が見えてくるのである。
そして、もちろん「ユタ州国防省人脈」対マイクロソフト、という対立関係も、明々白々である。

●マイクロソフトは傍流にすぎない
1998年テレビ朝日の『朝まで生テレビ』で、ある評論家が、マイクロソフトのことを「アメリカの国策会社」と発言した。

しかし、アメリカには国策会社などないはずである。アメリカはビジネスにおいても自由と平等の原則(努力すればだれにでも勝つチャンスがある、という「アメリカンドリーム主義」)が徹底し、それにあわせて法制が確立しているので、政府がどこかの私企業を国策会社として「えこひいき」するのは、到底許されない。敢えて、国策会社らしきものを作ることがあるとすれば、それは「自由と平等」のアメリカ的価値観を守ることに貢献しそうな企業ということになるはずである。

マイクロソフトの創設者、ビル・ゲイツ会長については、20歳になるかならずかの若造のときに、すでにマイクロソフト社を経営していて、IBM から同社初のパソコンIBM PC用OSを提供するよう依頼を受けると、それに応じてOSを作って売り渡した…………のではなく、所有権は保持したまま「貸した」(ライセンスした)のである。やがてIBM PCをまねたクローン製品が登場すると、IBMはシェアを奪われて損をしたが、マイクロソフトはクローンにも同じOSを「貸した」ため、逆にマイクロソフトだけはどんどん儲かっていった。IBMはマイクロソフトに「ひさしを貸したら母屋を取られた」のである。

このゲイツの駆け引きはある種痛快で、彼がその後世界の長者番付のトップになったことを考えると、アメリカでは努力すればだれにでもチャンスがあり、20歳の若造にも世界的大企業を出し抜いて億万長者になるチャンスがあることが、みごとに証明されたと言える。アメリカンドリームは神話ではなく、実話であることを証明した人物であるから、ビル・ゲイツやマイクロソフトの名をアメリカ人が、誇りをもって口にするのは当然である。たとえば、ハッチ司法委員長と同じ共和党に属するギングリッチ前下院議長なども、そのように述べたことがある。

しかし、現在のマイクロソフト、およびビル・ゲイツの存在がアメリカの国益や基本的な価値観に合致しているか、というと、意見は別れるだろう。たとえば、アプリケーションソフトウェア業界の各企業にとって、マイクロソフトは必ずしも好ましい存在ではない。ロータス社の表計算ソフトLotus 1-2-3 もオラクル社のデータベースソフトOracle 8もジャストシステム社のワープロソフト一太郎も、マイクロソフト社がパソコン用OSの9割のシェアを握っている以上、そのOS(現在はWindowsとWindows NT)がいつどのように更新(バージョンアップ)され、次のバージョンで何がどう変わるのかといった技術情報を得ないと、自社のパソコン用製品の開発ができない。もちろん、マイクロソフトは自社のOSの上で動くアプリケーションソフトウェアが多いほど自社のOSが売れるので、技術情報を公開することはする。しかし、マイクロソフト自身も表計算ソフト、データベース、ワープロ、ブラウザなどを作るアプリケーション部門を持っているので、バージョンアップに関する情報は同じ社内にあるこれらの部門の開発者が、他社より先に知り、そして他社より先に(Windowsと相性のよい)アプリケーション製品を売り出すことになる。これはいかにも不公平である。

また、上記の「ブラウザ戦争」でも明らかなように、自社製アプリケーションを無料または不当な安値(不当廉売)でOSと抱き合わせ販売して、OSを作っていないアプリケーション専業メーカー(マイクロソフトとアップルを除く世界中のほとんどのソフト会社)の製品を市場から排除し、不当廉売で損した分はOSの売り上げでカバーするといったことも可能であり、実際に行われている(と、筆者でなく、米司法当局やユタ州国防人脈が疑っている)。

こうなると、今後あらゆるソフト会社は新しく何かやろうとするたびに、いちいちマイクロソフトにあたまを下げなければならない、ということになってしまう。これは、どう見ても、自由と平等の原則に反する。

そこで、「ユタ州国防省人脈」の一角を占めるサン・マイクロシステムズ社は、どのOSの上でも走るプログラム(ソフトウェア)を書くことのできるJavaというプログラミング言語を提唱し、開発している。これが普及して、どのOSの上でも同じように動くソフトばかりになれば、マイクロソフトのOSでのシェアは無意味になるからである。

ただし、この言語は歴史が浅く未熟なため、まだプログラマたちにとって必ずしも使い易いものになっていない。そこで、マイクロソフトはJavaの開発の主導権を奪い取るために、Windows上でよりよく動く自社版Javaを作って、Javaの発展の方向性をゆがめようとした(とサン社は思っている)。怒ったサン社はマイクロソフトをJavaに関する商標権侵害と契約違反で訴えた。1999年現在、反トラスト法裁判とは別に、こちらも係争中である(マイクロソフト版Javaで書かれたソフトウェアをユタ州のJava認証センターで調べれば、不合格になるはずである。上記の認証センターは、こういう目的のために存在しているのである)

もちろん「ユタ州・国防省人脈」はあくまで仮説である。このような人間関係の「まとまり」を示す確たる物的証拠があるわけではない。上記の当事者個々人にインタビューすれば「われわれはそんなに仲がいいわけではない」と否定するかもしれない。しかし、筆者はこの仮説に基づいたほうが、世の中の様々な動き(とくに、日本のほとんどのジャーナリストが単なる「風潮」と呼んでまとめてしまっているような、インベーダーゲーム・ブームなどの現象)が容易に説明できるので、敢えてここに提示したのである。

●任天堂vs.パチンコ産業
話は変わるが、日本には在日朝鮮人と言われる人が数十万人住んでいる。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の国籍を持っているが、その大半は日本生まれ日本育ちの人々である。彼らは日本語、日本文化、日本的習慣および価値観を身に付け、かつ日本人と恋愛したり結婚したりもする。あたりまえだ。また、外見上日本人と朝鮮(韓国)人はさしたる違いはないので、ふだんは、日本人はその存在に気付かない。

実は、筆者が一時期住んでいたところのすぐそばには朝鮮人学校があった……らしい。「らしい」というのは、筆者は恥ずかしながら、その学校の女子生徒が着ていた朝鮮の民族服チマ・チョゴリをベースにした制服を「変わったセーラー服」と思っていたからである。

ところが、不幸にして、世の中には筆者よりもはるかにこの制服に敏感な人々がいる。その人々は日朝関係が悪化すると、ナイフでこの制服を斬り付ける、というテロ行為に出るのだ。北朝鮮は80年代以降、韓国の大統領の暗殺をねらったラングーン爆弾テロ事件、女スパイ金賢妃の大韓航空機爆破事件、そして98年のミサイル「テポドン」の日本上空への発射など、日本や自由世界に対する敵対行動を繰り返してきたが、そのたびに「ならず者」が表れ、なんの罪もない朝鮮人学校の女子高生らの制服を切る、という野蛮行為が行われたのである。まったく許し難い人権侵害行為である(が、人種差別であるかどうかは別問題である。すべてにおいて実行犯が「北朝鮮嫌いの日本人」である保証はないし、仮に日本国籍の者がやったとしても、彼らを雇った者が日本人である保証はないからである)

筆者の見るところ、在日朝鮮人の方々は並みの日本人よりはるかに愛国心が強い。彼らは日本に住んでいて日本で税金を納めているにもかかわらず(ただし、日本の税制は給与生活者に不利で自営業者に有利なので、パチンコ店などを自営する朝鮮人の所得税の捕捉率が、日本の平均的サラリーマンのそれよりはるかに低いことは間違いあるまい)、それとはべつに祖国にお金を送っているからである。一般的に愛国心を持つことはよいことで、できれば日本人にも見習ってもらいたいぐらいである。

不幸にして、日本の金融業界には外国人差別がある。ほとんどの銀行は日本国籍を持たない在日韓国朝鮮人には融資をしない。1998年4月に「日本版金融ビッグバン」が始まるまでの戦後の半世紀、各金融機関が大蔵省の厳しい管理のもとに置かれていてまったく競争らしい競争をせず(そのため1行も倒産せず)、都市銀行、地方銀行、長期信用銀行(債権発行銀行)などと分類に応じて「棲み分け」をしていたことを考えれば、このような銀行による差別は、事実上「国策」だったと言っても過言であるまい。このため、在日朝鮮人は、不動産や機械設備などに多額の先行投資を要する工場経営のようなことは、事実上不可能だった(これは筆者の推測だが、おそらく日本政府は、電子機器部品のような、軍事転用可能な戦略上重要な物資を、大企業や自衛隊が在日朝鮮人らの経営する工場に頼るようになることを恐れたのではあるまいか。北朝鮮は建国以来一貫して日本を国家の敵と位置付けていたし、在日「韓国」人のなかにも北朝鮮に愛着や親類を持つ者が少なくなかったので、有事の際に部品の供給を止められてはたまらない、それは敵国の外交カードになりうる、と思ったのであろう)

このため、在日韓国・朝鮮人の人々は、あまり先行投資を必要とせずに「日銭」の稼げるビジネス、すなわち焼肉屋やパチンコ屋などの客商売をするほかなかった(もちろんサラリーマンになる道はありうるが、自衛隊装備を生産するような大企業と、それに融資している大銀行、そして一部のマスコミにおいても、在日韓国・朝鮮人の採用については、たとえその就職希望者が東大や京大を出た優秀な技術者や経営幹部の卵であろうと、いや、むしろそうであればあるほど、やんわりと拒むケースが多い。理由は、上記の戦略物資の問題とほぼ同じと思われる。「機密保持」や「世論操作」の懸念もあるのかもしれない。このため在日勤勉な朝鮮人のなかには「日本は学歴社会だから、東大を出れば国籍なんか関係ない」と誤解して努力して、大学卒業時に悲劇を味わう人が少なくない。なお、外国人に寛容な国アメリカでも、マスコミ経営者には米国籍の取得を義務付けるなど、国家の戦略や政策の根幹にかかわる部分では国籍が重要であることは、知っておいたほうがいいだろう)

かくして日本のパチンコ屋さんの大半は在日韓国・朝鮮人が経営することとなった。第二次大戦後、韓国と北朝鮮が建国して以来、ずっとそうだった。ほかの分野で活躍の機会を奪われた彼らは、その持てる勤勉さのすべてをこのビジネスに注ぎ込み、これを一大産業に育てあげていくこととなる。

日本のパチンコ産業は、世界的に見ると(とくに北朝鮮のような経済規模の小さな国にとっては)実は途方もない巨大産業なのである。その売り上げはスウェーデンのGDPを上回り、スイスのGDPに迫る勢いである。

日本のGDP:____________________52,175.73億米ドル
韓国のGDP:_____________________4,372.33
北朝鮮のGDP:______________________59.97
スウェーデンのGDP:_____________2,307.13
スイスのGDP:___________________3,039.50
日本のパチンコ産業の売上:_______2,561.70

(資料:GDPは、原書房刊『国際連合 世界統計年鑑 1995(Vol.42)平成10年 日本語版』p.167の1995年の値、売上は社団法人 日本遊技関連事業協会のホームページの財団法人 余暇開発センターの『レジャー白書'98』の平成7年の値「26兆3420億円」と、それを世界統計年鑑p.856の為替 レートの1995年期末値「1ドル=102.830円」で割ったもの。ほんとは1970〜80年代の数字もあげたいが、その頃の場合は北朝鮮の統計がないので、インベーダーゲームによる危機から立ち直ったあとの、95年の数字で代用した)

仮に日本のパチンコ産業の1/4(640億米ドル、6兆5855億円)が在日朝鮮人の経営で、その売り上げの5%(32億米ドル、3428億円)が北朝鮮に献金されたとすると、その額は北朝鮮のGDPの半分以上、10%(64億米ドル、6586億円)ならGDP以上になってしまう。

北朝鮮は、ソ連で生まれた社会主義という名の、なんの意味もない非効率的な政治体制を建国以来半世紀にわたってひたすらまじめに(?)に実行してきたため、およそまともな経済システムというものがない。それでも、ソ連とその同盟国の相互援助機関コメコンが機能していた間は、ソ連から格安で原油を輸出してもらったり、軍事援助を受けたりしていたため、なんとか経済財政を維持することができた…………と、日本のエコノミストらは分析していた。

が、実際には、そうではなかった。北朝鮮財政を支えていたのは、実は日本のパチンコ産業からの献金であった(1980年代、アメリカの保守系雑誌『タイム』は、土井たか子委員長を含む当時の日本社会党幹部数名を"Pachinko Socialist"『パチンコ・ソーシャリスト』と名指しして非難した。日本のパチンコ産業の献金が北朝鮮経由で社会党に流れこんでいる、というのである。じっさい、土井たか子は当時のパチンコの業界団体から「パチンコ文化人」の称号を奉られていた)。北朝鮮の支配階級は、在日朝鮮人にさんざん稼がせて貢がせておいて、金日成の銅像造りや、その息子金正日の個人的趣味の映画作り、中小国数十か国が出てくるだけの淋しい国際イベント、はてはテロ事件やミサイル等大量破壊兵器の製造など、くだらないことばかりにその金を遣って「あそびほうけて」いたのである(ムリもない。日本に「打出の小槌」を持っていたのだから)。その一方で北朝鮮軍は、「南進統一」つまり韓国を武力併合することを国是とし、人数だけなら百万人という、世界でも五本の指にはいるほどの、途方もなく巨大な(過剰な)軍事力を維持している(地政学的に言うと、内陸国である北朝鮮は、もともと半島国である韓国より有利な位置を占めており、韓国が、日米など海洋国家の支援なしで、単独で、北朝鮮と全面戦争を行えば、北朝鮮が勝つ可能性がかなり高い。したがって、北朝鮮の百万という兵力は、けっして防衛的な性格のものではない)

ここから先の「1.」から「6.」までのうち、「4.」は単なる仮説である。信憑性については、読者の皆様が各自「自己責任」御判断頂きたい。

1. 1980年代、上記のユタ州・国防省人脈の企業の「筆頭」、世界で最初のテレビゲーム(コンピュータゲーム)ソフト会社アタリゲームズ社の社名が日本語の「当たり」から来ていることで明らかなように(前掲、NHKスペシャル『新・電子立国〜ビデオゲーム・巨富の攻防』)、この人脈は、ゲームソフトを日本市場を主たるターゲットとして起ち上げた。その結果、「インベンダーゲーム」の機器が日本中の喫茶店に置かれて大流行し、パチンコ屋に行く客が減った。

2. これを受けて、米国任天堂が動きだした。副社長ハワード・リンカーンの活躍とSGI社の技術力により、米国任天堂は『ドンキーコング』を米国でヒットさせた。これは日本でも、任天堂本社によって、喫茶店やゲームセンターなどで市場展開された。これにより、日本のパチンコ産業は壊滅的打撃を受けた。

3. こうしていったん壊滅の淵にまで追い詰められたパチンコ産業は、その後、日本の警察の指導のもとに復活した。ただし、このときパチンコ産業は、都道府県警察当局の「行政指導」により(従来の現金とバネと釘によるアナログなパチンコシステムに替えて)「プリペイドカードの導入」による電子化(デジタル化)と、プリペイドカードの発行を、パチンコ会社から独立したゲームカード会社に委託することを呑まされてしまう。そして、ゲームカード会社には警察OB多数が天下りすることとなった。さらに、この「新生パチンコ産業界」には大手スーパーなどの大企業が続々と参入しはじめたため、この産業は、もはや在日韓国・朝鮮人の金城湯池ではなくなった。

4. さらにプリペイドカードの偽造、変造や、裏ROM(ロム)というデジタル機器を使ってのパチンコ台での不正な「玉出し」行為が横行したため、零細な朝鮮人経営のパチンコ店は次々に倒産しはじめた。これにより、在日朝鮮人の北朝鮮への献金は激減したと推定される。

5. 1991年末、ソ連が崩壊しコメコンがなくなると、北朝鮮経済は一気に苦しくなり、餓死する国民まで出はじめた(1997〜98年頃には年間200万人から300万人餓死したという報道もある。ちなみに北朝鮮の総人口は約2000万である)

6. パチンコ屋からの献金を補うためかどうかは不明だが、北朝鮮は1990年代にはいると、核兵器とミサイルの開発を加速した(と日米の政府は思っている)。これは国際原子力機関(IAEA)の協定違反の不正行為だったため、アメリカは大量破壊兵器の世界への拡散につながるとして強く警戒した。しかし、北朝鮮は外貨獲得の唯一の手段として、ミサイルの開発、さらに輸出を強行した。輸出先は、イラク、シリア、リビア、パキスタンなどと見られ、中東、南アジア地域の安全保障に支障をきたす、と米国などで懸念されている。

筆者が仮説として提唱し、名付けた「ユタ州・国防省人脈」はまさにその名のとおり国防目的で行動し、アメリカの敵性国家を「攻撃」するために自らがユタ大学で開発した「軍事技術」を駆使した、というのが筆者の仮説である(「インベーダーゲーム」はまさに北のインベーダーをやっつけるゲームだったのだ)。もちろん、この仮説で説明できない事実が多数出てくれば、仮説は再検討しなければならないが、筆者は1996年にはじめてこの言葉を用いて以来こんにちまで、一度もこの仮説の妥当性を疑ったことはないし、むしろ、この説の信憑性を裏付ける事実ばかりが次々に起きる、と感じている。

言い換えれば、筆者は、パチンコ産業をめぐる日米対北朝鮮の攻防こそが「ユタ州・国防省人脈」の、動かしがたい存在証明と思っているのである。

●北朝鮮と在日朝鮮人の運命
さて、「6.」のあと、北朝鮮はどうなったか? …………危険な大量破壊兵器開発に突き進む北朝鮮に対して、1994年にアメリカの共和党や国防省は核施設への空爆(とそれに続く地上戦)まで考慮したが、最初の90日間だけで在韓米軍兵士5.2万、韓国軍兵士49万、民間人に至っては100万以上もの人的損害が予測されたため(朝日新聞記者の田岡俊次が、1999年1月29日のテレビ朝日の『朝まで生テレビ』で紹介)、強硬論は後退し、カーター元米大統領が米国政府の特使としてピョンヤンに趣き、当時の金日成(キム・イルソン)国家主席(朝鮮労働党党首)と交渉し、核開発の凍結(と見返りに日米韓などが資金と技術を出して、北朝鮮に軍事転用の難しい原子炉である軽水炉を発電用に建設する機構、「朝鮮半島エネルギー機構」、略してKEDOを創設すること、およびアメリカが北朝鮮に重油を供与することなど)が決まり、危機は一時回避された。

しかし、北朝鮮はべつに平和路線に転換したわけではない。カーター特使と合意したあと金日成が急死したため、急遽息子の金正日が最高指導者になったらしい(「らしい」というのは、息子が国家主席、党首などの最高指導者を意味するポストをなかなか継がなかったからである。1999年1月現在も「事実上の国家元首」を意味するポストとして「国防委員長」の座にあるだけで、国際法上国家を代表するポストとされている元首、首相のような肩書きはないし、一党独裁のソ連型社会主義国家で重要とされる党首の座にもない)が、この金正日政権はミサイル開発はやめず、核についても94年当時とはべつに核兵器開発施設を地下に建設しているのではないか、と米国防省らに指摘されるようになった。

1998年8月31日、北朝鮮は通称「テポドン」と呼ばれるミサイルを、事前になんの警告もなしに、日本列島上空をまたいで発射し、太平洋に着水させた。北朝鮮のラジオは、これを人工衛星の打ち上げであった、と報じたが、その後北朝鮮の新聞(事実上の政府の広報紙)が「標的は明白だ」と題するポスターを配信したことで、人工衛星説は消し飛んだ(元々人工衛星打ち上げロケットも、弾道ミサイルも、技術的にはまったく同じものであるうえ、北朝鮮の言い分を裏付ける人工衛星は、どこにも発見されていない)。このポスターは、ミサイルを描き、その機体にワシントン、東京、ソウルの地名を描いたもので「東京を撃つ」意志を明白にしたものだった。また巨大なミサイルが日本列島と交差し、その先端が米本土にささっているような「反米的な」絵柄ののポスターがあることも報じられた。

べつにこれは珍しいことではない。北朝鮮は、本気かどうかはともかく、常日頃から日本や米国や韓国を敵視して、大袈裟にわめき散らす傾向のあることは、よく知られており、その言葉を額面どおり受け取る必要はない。どぎついことを言っていても自国民を団結させるための単なるスローガンにすぎないことが多い。

しかし、テポドン発射実験のあとは、とくに在日朝鮮人にとっては、このスローガンは容易には座視できまい。東京近郊には在日朝鮮(韓国)人が何万人も住んでいるのだから、東京をミサイル攻撃すれば、当然在日朝鮮人にも多数の死者が出ることになる。なんということはない。このミサイル試射は、日本政府や在日米軍もさることながら、結果的には在日朝鮮人を威嚇してしまったのだ。

「人をばかにするのも、いい加減にしろ!!」

と多くの在日朝鮮人が思ったとしても、なんの不思議もない。いままでさんざん、パチンコ屋などで稼いだ金を貢いできてやったのに、そのお返しがこれか? それとも、パチンコ産業からの献金が大幅に減って、もう金蔓(かねづる)としての価値がなくなったから、在日朝鮮人には日本で死んでくれ、ということか? まるで虫けら扱いじゃないか! …………大勢の愛国的な在日朝鮮人の方々が祖国に愛想づかしをして、日本に帰化しようと考えたとしても、なんの不思議もない。

こういうとき、不思議と決まって「ならず者」が現われて、朝鮮人学校の女子生徒の制服のスカート斬りをするため、在日朝鮮人は怯えてしまう。これによって、すくなくとも朝鮮人学校に通う子供を持つ親たちは帰化を思いとどまらざるをえないであろう。

日本政府、とくにゲームカード会社に関与している警察官僚にとっては、在日朝鮮人が帰化して非友好国への「軍資金」の送金が減ってくれれば、こんなありがたいことはない。したがって、日本政府にはならず者にスカート斬りを促す理由はない。日本政府が本件で謝罪する必要があるとすれば、なんの罪もない女の子の安全を(外国のスパイ機関から?)守れなかったという治安上の不手際の部分のみである。

日本国と日本国民が在日朝鮮人に対してなすべきことは、一にも二にも(彼らが安全に帰化できるように)治安を強化することであって、いわゆる「謝罪と反省」はあまり優先順位の高いことではないだろう。

(敬称略)

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